兵庫県立大学は経済、経営、工、理、環境人間、看護の６学部と１４大学院研究科、４付置研究所、付属中学校・高等学校を持つ総合大学だ。来年は学部再編で社会の変化に対応する人材育成にいっそう力を入れる。実社会で活躍できる人材を輩出してきた実績と先進的な教育研究環境の強みを生かし、先導的公立大学として特色ある学風のさらなる発展に努めている。

新たに整備される「国際学生寮」の完成予想図（※） 現在の経済学部と経営学部を再編し、２０１９年度から「国際商経学部」と「社会情報科学部」を新しく設置する。
急速なグローバル化の進行と情報科学技術の飛躍的発展という、世界の趨勢（すうせい）に関わる２つの大きな変化に対応した改革だ。
「国際商経学部」には「経済学」「経営学」「グローバルビジネス」の３コースを設置し、社会科学の基礎を軸に多様な知識を修得してグローバルな環境でその知識を実践に活用できる人材を養成することを目指す。「経済学コース」「経営学コース」では従来の経済・経営に加え、経済学と経営学の融合領域である「金融ファイナンス」や「社会イノベーション」を含む四つの専門プログラムを用意。１年次から４年次まで少人数のゼミに所属し、自治体や企業と連携した演習プログラム等の実学教育を実施する。
「グローバルビジネスコース」は１年次からの授業をすべて英語で行い、経済学の学位を取得する、特別コース。座学だけでなく留学や海外研修、インターンシップを経験し、世界をキャンパスにして国際感覚を身に付ける。また、新たに国際学生寮を整備し、１年次は日本人学生と留学生が共同生活を送ることにより、日常生活から多様な文化に触れる機会を創出する。
「社会情報科学部」は、さまざまな場面で生じるビッグデータをＡＩ（人工知能）を駆使して解析し、活用することが急速に進展していることから、経営判断など分析結果の活用が可能となる社会科学の基礎教育を行うとともに、情報科学の専門知識やスキルを修得し、ビッグデータを活用して社会での問題解決を行う能力を身に付ける。
１年次から少人数制の演習科目「ＰＢＬ（ｐｒｏｂｌｅｍ　ｂａｓｅｄ　ｌｅａｒｎｉｎｇ）演習」を導入。企業や公的機関などさまざまな組織から提供される実際のデータを分析しながら、組織が抱える現実の課題の解決に取り組む。４年間を通じて発展的に進む演習により、データ分析のスキルだけでなく、データの社会的背景を見抜き、分析結果を活用して組織改革や業務改善といった価値創造のできる実践的な能力を培う。
大学側は「新しい時代に対応するための学部再編だ。大学院や自治体、企業とも連携し、自分で考え解決する能力を磨き、実社会で役立つ力を付けてもらいたい」と期待を込める。

タイの少数民族の地を訪問し交流する県立大の学生（ＧＬＥＰの海外体験研修） 同大学では専攻学部以外にも幅広い分野で学びたいという学生に向けて、課題解決型学習やフィールドワーク、体験プログラムを取り入れ主体的に学べる「副専攻」制度を設けている。
副専攻には、三つのプログラムがあり、「地域創生人材教育プログラム」は兵庫の地域課題を体系的に学習し、解決に向けて地域と協働する中で実践的に活躍する力を育成する。
防災・減災・復興に関する幅広い知識の習得だけでなく、被災地などの現場にボランティアとして身を置き、現場力、実践力などを育む「防災リーダー教育プログラム」もある。
グローバルな人材育成を目指す「グローバルリーダー教育プログラム（ＧＬＥＰ）」は海外体験研修などを通じ、英語によるコミュニケーションやプレゼンテーションスキルを身に付け、国際社会で活躍する人材を育成する。春休み、夏休みにアメリカやインドネシア、タイなどへの海外体験研修を経験。２年次の春休みにはアメリカ、オーストラリア、中国でのインターンシップのチャンスもある。
副専攻以外にも、語学を磨く機会として、アメリカ、オーストラリア、中国、韓国等の大学で半年から１年間長期留学する「交換留学プログラム」を用意。また、短期研修として、アメリカやイギリスなどの５大学での語学研修や、韓国、中国、台湾の３大学へ１～３週間程度の短期研修プログラムもある。
留学や海外でのインターンシップから帰国した学生が体験談を共有する「ラン活」も実施。ランチを食べながら気軽に情報交換でき、国際交流への意欲を高め、留学する学生が増えている。

□工学部
幅広い工学基礎教育と放射光施設などを活用した先端工学技術の教育研究により、実践的で高度なエンジニアを育成。

□理学部
世界最先端の研究施設と連携した高度な教育研究により科学技術の発展に貢献できる人材を育成。生命の神秘と物質の究極を解き明かす。

□環境人間学部
人間学を基軸とした社会環境や自然環境の教育研究により、豊かな暮らしと活力ある地域の創造に貢献できる人材を育成。管理栄養士も育成。

□看護学部
公立初の看護系単科大学の伝統を生かした教育研究による看護師、保健師、助産師の資格をもつ社会の信頼に応える人材の育成。養護教諭も育成。

□大学院研究科・研究所
各学部に連接する大学院に加えて、多彩で学際的な研究科や研究所を設置。分野を変えて進学できる。スーパーコンピューターを駆使した研究、阪神・淡路大震災の知見を生かす減災復興政策の研究、コウノトリやジオパークなどの活用を目指す大学院などがある。また、宇宙の謎に迫る日本最大の天体望遠鏡「なゆた」を保有する天文台や、貴重な動植物や恐竜化石などを対象とする研究所もある。

応用化学工学科で基礎から応用の実験を行う学生＝姫路工学キャンパス 工学部・工学研究科（姫路工学キャンパス）は、高度化・多様化する最先端の工学研究・教育および、ものづくり拠点としての機能向上を図るため、２０２３年度までに６棟の建物の建て替え整備を進めている。
昨年１月にＡ棟（管理・講義棟）が完成。今年８月には、Ｂ棟（教育研究棟Ⅰ）が完成し、１９年から利用を始める予定だ。

特色ある先導的大学へ

海外研修で目標近づく

経済学部国際経済学科３年　鴨川怜奈さん（２０）