宇宙航空研究開発機構(JAXA)(甲南大学卒業)
植本有海さんに聞く

輝く未来 自分でつかむ

▽うえもと・ありみ
1993年、島根県大田市生まれ。島根県立大田高校理数科を経て甲南大学理工学部物理学科を卒業後、2016年4月に国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)入社。現在は、追跡ネットワーク技術センターでスペースデブリに関する業務に従事する。

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)で働く植本有海さんは、小学校の頃から宇宙に興味を持ち続け、研究者として宇宙の謎を解明したいと思い続けてきた。進学した甲南大学では弓道部、宇宙研究の文武両道を実践し、弓道では日本一、就職では第1志望だったJAXAの内定を決めた。「やりきった」という4年間の学生生活を振り返ってもらった。

努力重ねる過程こそ大切 目標はデブリ研究第一人者

―今の仕事は。

植本有海さん 宇宙空間には、運用を終えた人工衛星やロケットの破片など、これまでの宇宙開発によって発生したスペースデブリ(宇宙のごみ)が飛び交っています。その数は直径10センチ以上のものだけで1万9000個に上ります。デブリの平均速度は、低軌道で秒速7~8キロあり、数センチのデブリでもぶつかれば人工衛星を破壊してしまうほどの威力を持っています。
私の仕事は、スペースデブリの動きを監視し、衝突のおそれが生じた場合、ぶつからないように人工衛星の軌道を修正するよう指示を送ることです。イメージとしては、宇宙空間の交通管制ですかね。毎日のように新しい情報が入ってくるので気が抜けません。JAXA3年目ですが、次に打ち上げる衛星の観測軌道への投入制御計画作成を任されています。失敗が許されない、やりがいのある仕事です。

―宇宙への興味はいつごろから。

小学校高学年の頃、天体望遠鏡で星空をのぞいていて、地球が宇宙の中にあるなら宇宙自体は一体どこにあるのか、宇宙の端っこはどこなんだろうかと疑問を抱くようになりました。中学生になって、宇宙空間の95%が未解明であることを知り、それなら自分が研究して解明したいと思うようになりました。理数科のある高校に進学し、研修でJAXAを訪れる機会があり、日本の宇宙研究の最先端であるJAXAで働きたいと憧れるようになりました。そして、宇宙の中でも何がやりたいのか調べるうち、もともと環境問題に関心があったことから、スペースデブリの問題を解決したいと思うようになりました。

―なぜ甲南大学へ。

宇宙について学べること、そして高校時代に弓道部で果たせなかった日本一になる夢をかなえられそうな大学を探していました。甲南大学は12台の電波望遠鏡アレイなど宇宙関連の研究設備が整っており、宇宙研究に力を入れていることに加え、少人数授業で教授との距離が近いこと、そして弓道部が全国レベルの強豪であることを知り、進学を決めました。

―大学生活はいかがでしたか。

勉強・宇宙研究と弓道部のどちらも妥協することなく、全力で取り組みました。毎日のように出される課題やリポートと格闘しながら、週5~7日ある部活の練習に打ち込みました。ゼミではスペースデブリを研究したいという私の思いを、先生が専門外ながら聞き入れてくださいました。弓道部では3年生の時に全国大会の団体戦で優勝し、日本一になる目標を達成することができました。

―就職活動は。

第1志望はJAXAでしたが、私にとっては雲の上のような存在でした。他の宇宙関連の企業も受けましたが、JAXAへの思いを断ち切ることはできず、後悔はしたくないと思いJAXAを受けました。〝記念受験〟くらいのつもりで気負わずに臨めたことで思いのたけを素直に伝えられたこと、スペースデブリに関心を持っていること、弓道日本一を果たしたことを認めていただけたのか、幸いにも内定を得ることができました。

―大学時代で学んだことは。

2014年、弓道全国大会で的を狙う植本さん。優勝を果たした=三重県伊勢市 2014年、弓道全国大会で的を狙う植本さん。優勝を果たした=三重県伊勢市 弓道部で全国優勝した後、女子主将を任されました。2連覇を目指すというプレッシャーを背負い、就活や卒業研究もある中、女子主将としての範を示し、部員を束ね、2連覇の目標を達成するためひたすら弓道と向き合った1年でした。結果として、2連覇という目標を達成することはできませんでしたが、むしろ日本一になった時よりも達成感がありました。大切なのは、目標を達成するために自分があきらめず最大限の努力をした過程、だと学ぶことができました。

―将来の目標は。

現在は希望していたスペースデブリに関わる仕事をしていますが、ロケットや衛星など他の部署も経験し、視野を広げながらデブリの研究を続けていきたいと思っています。そしてゆくゆくは「デブリのことなら植本に聞け」と言われるくらいの研究者になりたいですね。

―高校生にメッセージを。

今、夢や目標がある人もない人も、何かに真剣に打ち込んでほしいと思います。それが部活でも勉強でもバイトでも何でもかまいません。その過程で身に付けた知識や経験は、形を変えてさまざまなところで生きるはずです。中学3年生の時に担任の先生に言われ、心にとどめている言葉があります。「努力したが、夢がかなわなかった人は『悔しい』と感じます。努力せずに夢がかなわなかった人は『後悔』を感じます。同じ悔という字を使いますが、似ているようでまったくの別物です」。皆さんも、後悔することがないように残りの高校生活、大学生活を過ごしてください。

特集大学

  • 神戸大学
  • 関西学院大学
  • 兵庫県立大学
  • 甲南大学
  • 神戸学院大学
  • 兵庫医療大学
  • 神戸常盤大学
  • 大手前大学
  • 関西国際大学
  • 兵庫大学
  • 神戸国際大学
  • 神戸海星女子学院大学
  • 園田学園女子大学
  • 神戸親和女子大学
  • 大阪芸術大学短期大学部  伊丹キャンパス

特別インタビュー