個々の才能を高め合う
甲南大学

個々の才能を高め合う

人物重視の質の高い教育・研究活動を実践する甲南大学。学校法人甲南学園は来年、創立100周年の節目を迎える。岡本(神戸市東灘区)、ポートアイランド(同中央区)、西宮の3キャンパスに8学部14学科を擁する総合大学だが、学生数約9千人という「ミディアムサイズ」の強みを生かし、学生個々の才能を引き出し、人物重視の質の高い教育を提供している。世界に通じる研究力を教育や地域連携に生かし、次の100年に向けて発展し続けている。

リサーチフェスタ 研究発表 高校生交え 学生の部、専門性高く多彩

高校生、大学生、院生らが自由なテーマで発表した「リサーチフェスタ」。研究成果で交流しあう場面も 同大学の大学生や大学院生と、県内を中心とする高校生がポスター発表で研究や活動を披露するイベント「リサーチフェスタ」を昨年から開催している。文系、理系を問わず自由なテーマで発表し、垣根を越えた学びや出会いの場とする。普段は接点が少ない大学生と大学院生、高校生の交流の場とすることも狙いだ。
昨年は高校生、大学生、大学院生、教員合わせて438人が参加し、110件の発表が行われた。テーマはゼミの研究や課外活動の紹介、学校や地域の歴史などさまざま。聴き手が発表について「気づきノート」を作成し、プレゼンテーションやテーマ設定、疑問点などを記載する。そのことで聴き手は客観的に発表から学び取り、自分自身の研究発表を成長へとつなげることができる。

高校生の部、大学生の部それぞれ学長が表彰。専門性の高い発表が目立った 大学生の部ではフロンティアサイエンス学部生命化学科の学生が発表した「ニコチンを取り除いてくれる画期的な素材の設計~原料探し~」、高校生の部では明石北高校の生徒による「目には見えない食品保存の効果~わさびが持つカビ抑制力~」が、甲南大学学長賞を受賞した。
ほかにも、アルツハイマー病の原因物質検出や、がん細胞をゲルで覆って死滅させる手法など、大学生の部では専門性の高い発表が目立った。
甲元一也フロンティアサイエンス学部教授は「着眼点やポスターの見やすさなども評価のポイント。異分野の人に説明するには熱意と伝え方が重要で、どの学部、学科にも共通する。垣根を越えた研究と交流を進めたい」と話している。

ネイチャー誌ランク「日本で3位」 質の高い科学論文を発表 研究へ敬意 伝統的に

発生学研究室の日下部教授と研究しているホヤ(カタユウレイボヤ) 2018年3月、世界的科学誌ネイチャーの特別企画冊子「Nature Index 2018 Japan」で「高品質な科学論文を効率的に発表している大学」が発表され、甲南大学は学習院大学、東京大学に続き、日本3位にランキングされた。理工系学部・研究所の研究レベルの高さを証明している。
理工学部生物学科では、生きものの謎を解明する基礎生物学を基盤とし、社会に役立てる応用まで幅広く研究。バイオサイエンスを軸に、研究者や技術者などを目指すための科目群をそろえている。
発生学研究室の日下部岳広教授は、脳や感覚器官がどのような仕組みで作られ機能するかを、ホヤとメダカで研究。脳や目の進化にも迫ろうとしている。

生物学科では1年生から実験を積み重ね研究を深める。「研究への敬意」が根付いた環境で、学生が主体的に研究に取り組める アクアリウム実験観察室には水槽が並び、ホヤやメダカ以外にも多様な生物がいてミニ水族館のようだ。「スーパーコンピューターもAIもかなわない、人間の脳はまだまだ謎の世界。個人のアイデンティティーでもある脳の仕組みを解明することは、非常に興味深い」
そう話す日下部教授は、ネイチャーや米国発生生物学会誌に論文が何度も掲載されている研究者だ。ゲノム編集技術や体内の細胞を光で観察するライブイメージング法など最新の技術を駆使。大学院生、研究者らとのオープンなディスカッションを通して新しいアイデアを生み出している。
「生物学科では1年生から自主実験を行い、3年生になると毎日が実験。4年生の卒業研究で学会発表する学生もいる。甲南大学では、教授や先輩との共同研究を通じて『つながり』が生まれやすい。『研究への敬意』が伝統的に根付いた大学なので、学生には失敗を恐れず、好奇心を持って研究に取り組んでほしい」と日下部教授は話している。

キャンパスの結節点「アイ・コモンズ」 交流、健康、就活サポート

「アイ・コモンズ」1階の多目的スペース「アゴラ」。演奏会や講演会など自由で多彩な活用がなされている 大学の新たなシンボルとなる複合施設「KONAN INFINITY COMMONS(iCommons)=アイ・コモンズ」が昨年9月、岡本キャンパスに誕生した。学園創立100周年の記念事業として整備。地上4階地下1階建ての建物は、学生が学部・学科の枠を超えて交流し、教員や地域社会、卒業生ともつながる人物教育の拠点となっている。
1階のエントランスにある多目的スペース「Agora(アゴラ)」は、2階までの開放的な吹き抜け空間が広がる。中央には、約150人が座れるスタンド状の大階段があり、大型スクリーンを活用し、講演会やイベントなど多彩な使い方が可能だ。
柔軟性を持たせ、多目的に使える工夫を凝らしたのも特徴。1階の学生食堂は国内の大学で最大級の約1300席を備える。テーブル席や個室のほか、掘りごたつ式の座敷席を備えた町屋風の一角もあり、留学生との国際交流などに利用できる。

4階のブックカフェ。3階にはキャリアセンターや課外活動のスペースなどがある 2階には学生の健康づくりをサポートするフィットネスルームがあり、血圧、体脂肪などをチェックできる計測機器を設置。人気のボルダリングも体験できる。
3階には、就職活動を支援するキャリアセンターと課外活動の部室を設置。部室前にはオープンスペースがあり、クラブ同士の交流もしやすくなっている。
その他にも、本格的な調理器具をそろえたキッチンやスタジオ、ブックカフェ(4階)、約160席の可動式座席と収納型ステージを備えた多目的ホール「iStage(アイステージ)」(地下1階)がある。夢に向かって無限の可能性を広げる、甲南らしい「人物」を生み出す場となっている。

学長に聞く

「人物教育の率先」実践

長坂悦敬学長
―来年学園創立100周年。

新世紀に向かう甲南大学を表現するワンワードを「KONAN INFINITY」と定めました。無限大の可能性が広がるキャンパスライフをイメージして学生の投票によって決定されました。建学の精神「人物教育の率先」を実践するとともに「甲南新世紀ビジョン」を定め、実現にまい進しています。人文・自然・社会科学の3分野と各大学院、法科大学院を備えたミディアムサイズの総合大学の強みを生かしたきめ細かな教育が特徴。スキルを身に付けるだけでなく、解決方法を見いだし実行する力を育み、自らの幸せの尺度を持つ人物を輩出したいと思っています。

―具体的な教育法は。

「専門教育」と並んで人間力を育む「共通教育」を重視し、「基礎共通科目」「キャリア創生共通科目」を取り入れました。さらにグローバルゾーン「Porte(ポルト)」を設置して留学生との交流の機会を広げるなど、短期、長期の留学へと後押しします。昨年は377人が留学しました。ボランティアやスポーツなど、成績では表せない学生の力を評価する認定制度「KONANサーティフィケイト」も設けています。また、兵庫県、神戸市、広島県、岡山県などと包括協定を結び、地域プロジェクトに参加するなど、多彩な学びの場を創造しています。

―キャンパス内の環境整備も進めています。

昨年、岡本キャンパスに学生や教職員が交流できる「iCommons(アイ・コモンズ)」を開設しました。学部や学科の枠を超えて創造力を生み出す「キャンパスの結節点」になるでしょう。伝統の上に革新を重ね、「人物教育の甲南」と評価される大学へ進化したいと考えています。

在学生からのメッセージ

更生保護理解広めたい

法学部法学科4年 田栗江里奈さん(21)

オープンキャンパスでの模擬裁判見学をきっかけに、法学部を選びました。ゼミでは非行少年の社会復帰を支援する更生保護を研究し、施設訪問やボランティアを通し現場に足を運ぶ大切さを学びました。この経験は、就職活動や社会人になってからも役立つと思います。昨年、大学の「リサーチフェスタ」でゼミでの研究内容について発表しました。刑事施設を出所した後の社会復帰に、地域の理解と協力が不可欠だと知ってもらいたかったからです。卒業後は、大学で学んだことを生かし、更生保護に関わり続けていきたいです。

大学概要

住所 岡本キャンパス=神戸市東灘区岡本8の9の1
西宮キャンパス=西宮市高松町8の33
ポートアイランドキャンパス=神戸市中央区港島南町7の1の20
アクセス 岡本=阪急岡本駅徒歩10分
西宮=阪急西宮北口駅徒歩3分
ポートアイランド=ポートライナー京コンピュータ前駅徒歩4分
学部(本年度定員) 文学部(405人)、理工学部(155人)、経済学部(345人)、法学部(345人)、経営学部(345人)、知能情報学部(120人)、マネジメント創造学部(180人)、フロンティアサイエンス学部(45人)
教員 教授203人、准教授58人、講師25人、助教2人
在学生 9108人(男子5321人、女子3787人)
ホームページ http://www.konan-u.ac.jp/

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