〝超小人数〟教育で質追究
神戸海星女子学院大学

〝超小人数〟教育で質追究

キリスト教のカトリック女子修道会を母体に設立された神戸海星女子学院大学は、「人を支え、輝く」というモットーを掲げる。1学部2学科の小規模大学だが、その利点を生かして〝超小人数(ちょうこにんずう)〟教育と自称する独特の教育体制を築いてきた。すべての教職員が学生の顔を覚える家族的な雰囲気、一人一人の個性や能力に応じた丁寧な指導が特長だ。質の高い語学教育と就職率の高さは教員らの熱意が支えている。

英語観光学科 豊富な実践学習に定評

旅行企画や留学、就業体験

外国人教員によるネーティブ英語教育が好評。習熟度に応じて最適なクラスで英語力を伸ばすことができる 定評のある英語教育と、インバウンド(訪日外国人)の増加で拡大している観光分野をマッチングさせ、2014年度にスタートしたのが県内で唯一の「英語観光学科」だ。
1学年45人の定員に対し、専任教員が11人という手厚い体制が特長。大規模講義でも50人前後、主な授業は10人前後で、学生の関心や進度に合わせたきめ細かな指導を行う。
1、2年生で集中する英語力養成プログラムは、「読む・聞く・話す・書く」の4技能をバランスよく学ぶ。外国人教員による「ネーティブ教育」が充実し、すべての授業が10人前後。カリキュラムは達成度に合わせた8段階に分け、2年次修了までに中級に到達する。さらに上級クラス、ビジネス英語クラスなどの専門科目も豊富にそろう。

今年の学外海外旅行プランコンテストで、向リカさんの企画「レトロヌーボーの旅アメリカ」がグランプリを受賞(5月19日) 観光分野では実践を重視する。一流ホテルの内側を学ぶ「ホスピタリティ研修」、アジアやオセアニアへ出向いて現地旅行会社でビジネス事情を学ぶ「海外ツーリズム研修」などの研修がある。
3年生では、学外の海外旅行プランコンテストに参加する、ユニークな実践授業もある。同大学の学生が考案した海外ツアーは、今年グランプリ受賞を果たした。航空会社などでの勤務経験がある有村理准教授は「観光や航空の分野は裾野が広い。就職先は、地域から世界まで広がっている」とアピールする。
海外プログラムでは、語学留学が充実。短期は夏休みを利用した1カ月間、中期は3~4カ月間、長期は英語と専門科目を学ぶ6~8カ月間。どの留学でも単位が認定されるので、4年間での卒業が可能だ。
さらに、「海星ハワイプログラム」と呼ぶ海外インターンシップ・研修はユニークな内容で人気。インターンシップは、牧場での1年間就業や、観光、ウエディングなど各業者での4週間就業、文化交流イベントの運営スタッフを務める1週間就業がある。視野を広げ、行動力を培うプログラムだ。

▼心理こども学科 心理学で〝先生力〟アップ

「察知する力」育む30科目 保育・教職センターが進路支え

幼稚園教育実習の様子。信頼される先生になるためのカリキュラムが充実 保育士や幼稚園・小学校教諭の養成と、心理学を併せて学ぶ「心理こども学科」も、特色あるカリキュラムで知られる。
「察知する力」を育てる心理学を30科目もそろえている保育・教育系の学部・学科は、関西でも珍しい。こちらも、1学年50人定員に10人の専任教員がいる〝超小人数〟が特長だ。
心理学は「自己理解」「子ども理解」「保護者理解」の3項目をバランスよく修得することを基本とする。

箱庭を使って「自己理解」を深めるなど、心理学の知識やスキルを使って進路選択の幅を広げていく 「自己理解」では、箱庭などの心理検査を通じて自己分析し、自分自身の課題と対処方法などを学ぶ。「子ども理解」では心身の発達を学び、子どもの状況理解を深めることで、より効果的な指導力を育成する。「保護者理解」ではカウンセリング手法を学び、保護者と良好な関係を結べることを目指す。中植満美子教授は「心理学の学びは、人間力を培い、保育士や教員になるための力=〝先生力〟を高める」と話す。
保育士、幼稚園教諭、小学校教諭を目指す学生の進路サポートを担うのは、「保育・教職センター」。保育士や教諭として豊富な知識・経験がある教員らが一丸となり、希望進路の実現を手助けする。筆記試験対策、実技試験対策、面接対策、個別相談など、内定まできめ細かい支援を行う。
一方、実践的に学ぶ場も豊富。近隣の乳幼児と母親が学内で、学生とふれあったり、教員が子育て相談に応じたりする「母と子のふれあいひろば」、各教育委員会や灘区と連携したボランティア活動など、プログラムは多彩。小学校の現場経験がある大岸啓子教授は「在学生だけでなく卒業生の相談にも親身になって応じるのが海星の教職員」と力を込める。

進路教育 就職専門スタッフがサポート

4年次はマンツーマン

「キャリアセンター」スタッフが、1年次から学生全員の希望進路を把握し、計画的なステップで教導する。ここでも〝超小人数〟ならではの手厚い指導で、学生の夢を後押ししている。
1年次では必修科目の「キャリアデザイン入門」でコミュニケーション力を身に付け、「適性検査」で自己分析を促す。2年次では、卒業生が社会人生活を語る授業がある。
本格的な就職準備が始まる3年次では、全28回のセミナー、オリエンテーション、ビジネスマナー実習、就業体験、書類対策、面接対策、模擬面接会などが続く。4年次では採用内定までマンツーマンで指導する。
保育士・教員の希望者には「保育・教職センター」が、2年次から対策講座を開設。個別指導など手厚い体制でアドバイスする。
丁寧な指導で、就職率は常に90%以上を維持。特に保育士、幼稚園・小学校教諭志望者の就職率は100%を達成している。小野礼子学長は「少人数で、教職員が熱心なので4年間徹底した指導ができる」と話す。

独自の奨学制度も

英検2級相当で授業料免除

英検2級相当以上の有資格者に対し、初年度授業料を免除する奨学金制度を2012年度から続けている。英語教育の質向上に役立つ制度として拡大してきた。
1年次、1年間の免除対象となるのは、実用英語技能検定2級合格(2150点以上)、TOEFLiBT50点以上など。春学期分だけなら、実用英語技能検定2級合格者、TOEFLiBT42点以上など。オープンキャンパスで対策講座を実施し、入学前の資格取得支援も行っている。
このほか、同大学独自で2年次以降が対象の「ステラ・マリス奨学生制度」がある。成績のほか、学内の課外活動などの評価で、1学期の授業料の全額か一部の免除を受けられる。

学長に聞く

献身的教育で個性開花

小野礼子学長
―大学の特長は。

本学は1学部2学科で1学年95人という小規模校。教職員と学生の距離が近く、指導はとても丁寧です。今年春学期の授業は全部で208クラスあり、うち132クラスが20人未満(64クラスは10人未満)です。どの授業でも積極性が求められ、質疑応答は活発です。少人数を超えた〝超小(ちょうこ)人数(にんずう)〟教育と自称しており、熱意にあふれた教員が学生一人一人をしっかり把握し大切にしています。学力に応じた丁寧な指導ができるので、最初は授業についていけないという学生でも途中であきらめさせず、教員が徹底したケアをします。成績が中位、上位の学生たちも、さらに伸ばすことができます。

―どのような学生を育てることが目標ですか。

本学は、キリスト教的価値観に基づく教育の伝統を築き上げてきました。明治期、日本でハンセン病患者の奉仕活動をしたシスターたちの志を受け継ぎ、「人を支え、輝く」ことをモットーに掲げています。教員の姿勢もそんな奉仕の心が背景にあると思います。「海星学」という建学の精神を学ぶ授業もあります。学生は一人一人が大切にされているという経験を通して学んだ「奉仕の心」を社会のために生かします。卒業後も大学へ遊びに来たり、教員に相談に来たりする人が多いのも特長でしょう。人間的な強いつながりができています。

―学長も海星出身。

私は小学校から海星。大学時代はよく勉強させてもらったと思います。当時から先生たちは熱心で、その点は今も変わりません。学生一人一人に真摯(しんし)に向き合い、献身的な教育で個性を開花させる。それが本学の伝統です。

在学生からのメッセージ

授業外でも熱心に指導

現代人間学部 英語観光学科3年 古米成実さん(20)

母も海星出身です。先生がとても熱心だと聞いていましたが、実際にその通りです。授業でも、授業外でもこれほど先生と親しく接する大学はあまりないのでは。昨年、イギリスの大学の学部留学を経験し、健康学や栄養学を学びましたが、留学前のIELTS(英語資格試験)対策では、授業外で熱心に指導してくださいました。高校の頃は客室乗務員に憧れていましたが、先生方との交流を通じて、今は小学校教諭になりたいと思っています。奨学金制度も充実しており、いろいろな面で、学生を支える体制が整っています。

大学概要

住所 神戸市灘区青谷町2の7の1
アクセス 阪急王子公園駅、JR灘駅徒歩13分
学部(本年度定員) 現代人間学部(95人)
教員 教授11人、准教授5人、講師5人
在学生 354人(5月1日現在)
ホームページ https://www.kaisei.ac.jp/

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