2018年に創立20周年を迎える関西国際大学は、「以愛為園(愛を以て園と為す)」を建学の精神とし、開学以来、他者の立場を理解し、共に歩む、人間愛にあふれた人材の育成を目指してきた。予測が困難な現代において、世界共通で求められているものが、「安全・安心な社会」であり、それこそが現代の「以愛為園」であるとの考えに立ち、19年4月に5学部5学科13専攻へと改編を予定。グローバル、セーフティ、マネジメントの三つの視点に基づいて、「安全・安心な社会をマネジメントできる人材の育成」を目指す。
2019年度から予定している学部学科の再編では現在の3学部(教育、人間科学、保健医療)5学科を5学部(国際コミュニケーション、教育、経営、人間科学、保健医療)5学科13専攻にする。学部と学科内容の一致を図ることで、学びのイメージを明確にし、各専攻で将来の進路につながるカリキュラムを整える。
今回の再編には三つの狙いがある。一つ目が、1学部1学科制にし、関西国際大学ならではの教育の強みや特色をわかりやすく打ち出すこと。二つ目が、将来の進路に直結する13の専攻をきめ細かく設置すること。専攻ごとにどの科目を修得すれば出口(就職)につながる力が身に付くのかを見えやすくする。例えば、国際コミュニケーション学部英語コミュニケーション学科ビジネスコミュニケーション専攻では外資系企業や商社・貿易会社、経営学部経営学科防災・危機マネジメント専攻では消防士や警察官などの公務員、人間科学部人間心理学科犯罪心理学専攻では警察官や家庭裁判所調査官などの公務員、セキュリティー関連企業といった具合だ。
そして三つ目が、希望する専攻をじっくり選べることだ。入学後1年間は4年間の学修を支えるスキルや教養を学ぶ基盤教育をベースに、学部必須の専門基礎科目を学ぶ。その上で4年間の学びの設計図となる「ラーニング・ルートマップ」を作成し、将来の進路を考えた上でどのような学びをしていけばよいかを定め、1年生終了時に希望する専攻を選択できるようになっている。
また「安全・安心な社会」のために貢献できる人材の要件として、「グローバル」「セーフティ」「マネジメント」の三つの視点を据えた。「グローバル」については、留学を含むさまざまな海外プログラムを用意し、渡航費は大学が負担する(一部対象外)。「セーフティ」については、全学部で安全・安心に関する教育を強化し、全学部で「防災士」の資格が取得できるようにする。「マネジメント」については「個人と組織の機能を最大限に生かす」力と位置付け、社会のあらゆる分野において、「どのような状況に置かれても、現場で対応できる力」を全学部共通で伸ばしていく。
これらの学修によって自分がどの程度成長したかを定期的に振り返る機会も設けている。
「KUIS学修ベンチマーク」で、「自律性」「社会的貢献性」「多様性理解」「問題発見・解決力」「コミュニケーションスキル」「専門的知識・技能の活用力」がどれほど身に付いているか、達成状況をチェック。「自己評価しながら改善を図り、能動的に学び続ける力を体得してほしい」と濱名篤学長は話す。
心肺蘇生の訓練を行う学生ら。安全・安心の教育を全学部で強化
「基礎教養として防災マネジメント能力をすべての学生に」をコンセプトに、全学部生を対象にセーフティ教育を推進している。希望する学生は、講義を受講して単位を取得すると、防災士受験資格を得ることができる。防災士は地域における市民防災リーダーとして期待され、さまざまな形で活躍中だ。
安全・安心分野は、自然災害だけでなく、防犯・食品安全・環境保全・人為災害防止など多岐にわたる。安全・安心社会づくりに貢献するためのマネジメント能力は、将来どのような道に進む場合においても、求められ役立つ能力である。
カンボジアの小学校を訪れ、子どもたちに算数を教えている関西国際大学の学生
世界や地域社会での体験を重視する学びを通じて、自身の成長を実感できる学びの場が用意されている。一つは、国際的な視野で考える力を身につける「海外体験学修プログラム」(グローバルスタディ)。もう一つは、地域社会を学びの場にして課題解決力を養う「社会貢献活動プログラムと課題解決型インターンシップ」(コミュニティスタディ)だ。
海外体験学修プログラムでは、アジア・太平洋地域を中心とする12の国・地域にある51の協定校のネットワークを生かし、さまざまな海外体験学修プログラムを通じて、世界の人々の多様な価値観、文化を学ぶ。
また、新設される国際コミュニケーション学部では、本学の協定校を中心に、半年(希望すれば1年間)の留学プログラムに参加する。渡航先大学の学費は原則無償だ。
一方、地域社会での体験学修プログラムでは、地域活性化のために、さまざまな観点での課題整理と解決提案などの社会貢献活動と、社会や企業の現状と課題を体験し、自らのキャリア形成などに生かす課題解決型インターンシップがある。両方とも、地域社会をキャンパスにして、「地域」「社会」とつながることで自分の役割を発見、実感していくプログラムである。
今年で創立20周年を迎える関西国際大学のルーツは1950年、「以愛為園(愛を以て園と為す)」との精神のもと「愛の園幼稚園」が尼崎市内に設立されたことにさかのぼる。
87年には三木市に関西女学院短期大学(経営学科)を開設。同地に98年、関西国際大学が開学した。同大学では、「以愛為園」の精神を生かすために、「自律できる人間であろう」「社会に貢献できる人間であろう」「心豊かな世界市民であろう」という三つの教育理念を具現化。2009年には尼崎キャンパスを開設した。地球上の異なる国の人々の立場を理解し、痛みを分かち合い、共に歩み、問題を解決できる世界市民として活躍できる人間の養成を目指してきた。
濱名篤学長
―開学20周年を迎えます。
1998年4月に開学して以来「以愛為園(愛を以て園と為す)」を建学の精神とし、地球上の人々それぞれの立場を理解し、共に歩む、人間愛にあふれた人材の育成を目指してきました。またAO入試の実施、学修支援センターの設置、教育目標の到達状況を確認する指標「KUIS学修ベンチマーク」の導入など、常に新しい大学教育のあり方を追求し、教育改革のフロントランナーとして歩んできたと自負しています。
―来年度に予定している学部学科改編の狙いは。
今の社会や世界の置かれている状況を踏まえ、本学がどの分野でどのような人材を育成することができるのか、20周年の節目を機に整理しました。2019年度から国際コミュニケーション学部と経営学部を新設し、3学部5学科から5学部5学科へと移行します。学部と学科内容の一致を図り、2年生から希望する進路に合わせ、就職を意識した専攻を選べるようにします。そして「以愛為園」の精神を現代にふさわしい「安全・安心な社会」へと置き換え、全ての学部で「安全・安心をマネジメントできる人間育成」を目指します。
―学生に身に付けてほしいことは。
体験を通じ、時に失敗からも学びながら、自ら考え選択し、責任を持って行動する、前向きで能動的に生きる力を伸ばしてほしいと考えています。そして、4年間の大学生活を通じて自分が何を達成できたのかを、第三者に語れるコミュニケーション能力も身に付けてほしいと思っています。積極的な自分になるきっかけを探している人は、ぜひ本学のオープンキャンパスを訪ねてみてください。
2年生まで野球一筋でやってきましたが、苦手な語学を習得したいとの思いが募り、学内の交換留学制度に志願して、台湾の大学へ1年間留学しました。留学先では、現地の学生が勉学に臨む姿勢に刺激を受け、生活に困らないほどのレベルまで中国語を話せるようになりました。以前は、自分の好きなこと以外にはあまり興味が持てなかったのですが、自分の視野が一気に広がり、人間的にも成長できたと思っています。就職活動では苦手なことに挑戦したことが評価され、希望の会社に就職を決めることができました。
住所 | 三木キャンパス(大学本部)=三木市志染町青山1の18 尼崎キャンパス=尼崎市潮江1の3の23 |
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アクセス | 三木=神戸電鉄緑が丘駅バス5分 尼崎=JR尼崎駅徒歩5分 |
学部(来年度定員) | 国際コミュニケーション学部(50人)、教育学部(150人)、経営学部(100人)、人間科学部(125人)、保健医療学部(80人) |
教員 | 教授46人、准教授30人、講師19人、助教3人、助手3人 |
在学生 | 2051人(男966人、女1085人) |
ホームページ | http://www.kuins.ac.jp/ |