チーム医療教育を重視
兵庫医療大学

チーム医療教育を重視

兵庫医科大学の兄弟校として2007年に開学した兵庫医療大学。薬学部、看護学部、リハビリテーション学部(理学療法学科、作業療法学科)の3学部4学科と薬学、看護学、医療科学の3研究科を擁し、兵庫医科大学との連携によるチーム医療教育が最大の特色だ。このほど策定した「ビジョン20」では、到来する地域包括ケアをふまえ地域の中核医療人の養成を図り、「西日本を代表する医療総合大学」を目指す。

兵庫医科大学と連携

混成グループで議論 治療方針を決定

兵庫医療大と兵庫医科大の4学部混成の少人数グループがケア方針などを議論。「チーム医療」のスキルを養う 医療現場では、医師だけでなく薬剤師、看護師、理学療法士、作業療法士などの医療専門職者が互いの専門性を生かしながら協力し合って最適な治療・ケア方針を決める「チーム医療」が求められている。
兵庫医療大学では、兵庫医科大学、兵庫医科大学病院、兵庫医科大学ささやま医療センターと一体となった「医療総合大学」ならではの強みを生かし、他学部生とともにチーム医療の基礎を育む学びの環境を整えている。
例えば、1年次の夏休み前には、3学部4学科の学生全員で医療の歴史や制度、倫理観などを学ぶ「医療概論」のほか、兵庫医科大学病院を訪ね、学部混成チームで見学実習を行う「早期臨床体験実習」のカリキュラムが用意されている。
また、4年次には兵庫医科大学医学部の学生と合同で、4学部混成の少人数グループで、与えられた症例をもとに、症状から疾患を特定し、その後の治療、ケア、療養の方針を決め、その内容を他者に伝える実習を通じて、チーム医療に必要な幅広い視野とコミュニケーション力を養う。
こうした手厚い医療人育成教育により、2017年度の看護師、助産師、理学療法士の国家試験すべてにおいて合格率100%を達成した。

現役医療職者ら底上げに貢献

在宅看護ケアや漢方薬など講義

看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士としてすでに活躍している医療職者を対象とした教育プログラムにも注力し、地域医療の底上げに貢献している。
文部科学省認定「職業実践力育成プログラム」として「地域在宅看護実践力育成プログラム」と「PT・OT臨床力ステップアッププログラム」に取り組んでいる。前者は在宅看護ケアを実践できる看護師を、後者は多職種連携の中でリーダーシップを発揮できる理学療法士、作業療法士を育成するためのカリキュラムが組まれている。
また、薬学部では、漢方薬への理解をより深めることを目的として、薬剤師を中心とする医療職者を対象にした「中医薬実践講座」を開いている。北京中医薬大学を卒業し神戸中医学院長を務める孫華麗氏が5月から10月まで計8回の講義を行っており、中医薬の基礎的概念から生薬を用いた薬物治療への簡単な応用を学ぶことができる。

西日本を代表する医療総合大学へ

10年先を示す「ビジョン20」

昨年4月で開学10周年の節目を迎えたことを機に、さらに10年先のあるべき姿を示した「兵庫医療大学ビジョン20」を策定した。馬場学長は「開学以来の10年間でチーム医療教育の基盤はできた。2025年以降構築される地域包括ケア体制において多面性に富んだ状況の中で考え、解決の道を探れるよう、専門性だけでなくさまざまな領域を統合した視野を持った地域で中核となる医療人を育てていきたい」と方向性を語る。
ビジョン20では到達目標を「西日本を代表する医療総合大学としての教学基盤の確立―リーディング ヘルスサイエンス イノベーション―」とし、基軸として「兵庫医科大学との協働」「医療専門職者としての、高い専門性と、人間力の醸成」「次代を拓(ひら)くヘルスサイエンスの深化と創出」「地域社会との双方向の教学実施による社学連携」「安全・安心な大学環境の維持・健全な管理運営」を掲げた。
また具体的な行動計画として「兵庫医科大学との協働による先進的チーム医療教育を実践する」「医療専門職者として必要な知識と技術の修得とコミュニケーション力を」「統合領域研究と地域創生研究を重点課題に位置付けて推進する」といった項目を挙げ、実践に取り組んでいる。

地域社会に研究成果還元 薬草の活用など提案

まちづくり 兵庫県、近隣3大学と連携

薬草「トウキ」を収穫する学生ら(もっと兵庫の薬草を知ろう、広めよう、味わおうプロジェクト)=山南町 兵庫医療大学は、地域社会における教育研究活動の協働拠点として2015年4月、学内に「社学連携推進機構」を開設した。医療、福祉、介護、健康づくり、未病などの観点から、地域の住民、地方自治体、公共団体、医療福祉施設、各種企業などと連携し、兵庫医療大学の教育・研究成果を広く社会に還元するとともに、大学の重要な使命の一つである「社会貢献」を精力的に実践している。

30人の薬学部生が「さんなん和田漢方の郷まつり」の運営を支援 兵庫医療大学薬学部の学生が携わる「薬活オウルズ」は、16年度から兵庫県「大学等との連携による地域創生拠点形成支援事業」に採択され、江戸時代からの薬草の産地として知られている丹波市山南町を拠点に、薬草を日常的に取り入れ、健康な生活を送るための提案を行っている。山南町では特に婦人病薬の主薬として配合されている薬草、トウキ(当帰)の栽培が盛んであることを生かし、「もっと兵庫の薬草を知ろう、広めよう、味わおう」をテーマに、トウキについての学びの場やイベントを企画し商品開発も進めている。また、トウキの苗ポット売りや、「とうき葉うどん」「とうき葉塩」「とうき葉ふわり塩」「とうき葉ぱん」(アンパン)を商品化し、薬草産地の活性化につなげようと試みている。

ポートアイランド内の4大学と兵庫県が、地域安全まちづくり活動の推進協定を締結 神戸市と連携して「地域住民の、地域住民による、地域住民のための健康づくり」を目指した健康づくりプロジェクトも始まっている。大学が実施する「介護予防サポーター養成プロジェクト」を修了した地域住民を「健康づくりサポーター」として認定し、神戸市のあんしんすこやかセンターが行う健康教室の運営を支援している。
また、神戸ポートアイランド内にある3大学とともに兵庫県と地域安全まちづくり活動に推進に関する協定を17年12月に締結。犯罪情報や先進的防犯活動事例の情報を共有し地域安全まちづくり活動に生かすほか、大学生が防犯活動にも取り組んでいる。

学長に聞く

地域医療担う人材養成

馬場明道学長
―大学の特色は。
2007年に開学し、昨年10周年を迎えました。薬学部、看護学部、リハビリテーション学部(理学療法学科、作業療法学科)の3学部4学科と薬学、看護学、医療科学の3研究科を擁し、兄弟校の兵庫医科大学、兵庫医科大学病院、ささやま医療センターとの密接な教育連携をとりながら地域医療の中核を担う人材を養成しています。

―兵庫医療大学の強みは。

医療総合大学としてチーム医療教育(多職種連携)に力を入れています。兵庫医科大学医学部と本学3学部の学生による混成チームで一つの症例について治療、ケアの方針について議論を行うなど、実際の医療現場と同じ環境を想定し、異なる専門職者同士のコミュニケーションと協働のためのスキルを学びます。大学の知見を社会に還元するだけでなく、学生が地域のさまざまな活動に関わり学びを深める社学連携にも取り組んでいます。また、学生一人一人に向き合う支援体制を充実させており、1週間ごとの行動を把握して、状況に応じて学習をサポートしています。

―次の10年に向けた「兵庫医療大学VISION(ビジョン)20」を策定しました。

領域を超えて教育、研究を深めていく「ヘルスサイエンスイノベーション」をテーマに掲げました。国は25年をめどに、地域の中で住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される、地域包括ケアシステムを構築します。これを見据えそれぞれが高度な専門性を高めた上で、領域を超えた視点で考え、解決の道を探ることのできる人材を教育していきます。そして20年に「西日本を代表する医療総合大学としての教学基盤の確立」を目指します。

在学生からのメッセージ

医学部合同の授業貴重

薬学部医療薬学科6年 吉田敏人さん(23)

人を助ける仕事をしたいと考えて薬剤師になろうと決め、オープンキャンパスで海を臨む開放的なキャンパスの雰囲気にひかれ、兵庫医療大学を選びました。看護学部、リハビリテーション学部、兵庫医科大学医学部の学生と合同で、実際の症例についてそれぞれの専門職の立場から意見を交換し、治療の方向性を考える授業は、兵庫医療大学ならではの貴重な学びの経験でした。将来は病院で薬剤師として働き、他の専門職者と協力し合いながらチーム医療の一翼を担いたいと考えています。

大学概要

住所 神戸市中央区港島1の3の6
アクセス ポートライナー「みなとじま(キャンパス前)」徒歩10分
学部(本年度定員) 薬学部医療薬学科150人、看護学部看護学科100人、リハビリテーション学部(理学療法学科40人、作業療法学科40人)
教員 教授41人、准教授18人、講師31人、助教26人、助手8人
在学生 1784人(大学院生含む)
ホームページ https://www.huhs.ac.jp

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