世界市民の育成に注力
関西学院大学

世界市民の育成に注力

「Mastery for Service(奉仕のための練達)」をスクールモットーに掲げる関西学院大学は、1889(明治22)年の創立から世界市民の育成に力をいれてきた。最近は、学部や主専攻と異なる分野に挑戦する「ダブルチャレンジ制度」というオリジナルプログラムに注力。グローバル社会に必須の資質を育む教育内容が注目を集めている。

ダブルチャレンジ制度 異分野で複眼的視野養う

ハンズオン・ラーニング 実践学習 強い刺激に

学部や主専攻と異なる学びを体験する関西学院大学の「ダブルチャレンジ制度」。「主体性」「タフネス」「多様性への理解」という、世界で活躍する人材に求められる資質の育成を目標に考案された。
具体的には、社会での実践型学習「ハンズオン・ラーニング」、留学などで世界を知る「インターナショナル」、学部・専攻を超えて学ぶ「副専攻」の3プログラムで構成される。複眼的な視点と幅広い見識を身に付ける狙いだ。
中でも多彩なのはハンズオン・ラーニング。「キャンパスを出て実社会を学ぶ」を掲げ、全学部の主に1、2年生が対象となる。主にはフィールドワークや就業体験を伴うプロジェクト科目など。企業や地域の人と直接向き合い、その中で思考を言語化し表現する力、課題を解決する力、主体的に学ぶ姿勢などを養うという。

香川県・豊島での社会探究実習。住民に直接話を聞いた 人間福祉学部社会起業学科3年の辻本果歩さん(21)はこれまで、ハンズオン・ラーニングの科目を3回も履修した。
最初は、入学から間もない1年生の夏。産業廃棄物放棄による環境汚染が問題になった香川県・豊島での社会探究実習に参加した。5泊6日の現地調査で、住民から現状や課題を聴き取り、地域活性化策を考案し発表した。辻本さんは「自分で課題を見つけ解決策を考える体験は、高校までの学習とは全く違い強い刺激を受けました」と振り返る。

石川県・能登でのインターンシップ実習。民家に1か月泊まり込み、町おこしNPO法人の立ち上げのサポートなどを行った=石川県志賀町
熱い思いが胸に残り、2年の夏に再チャレンジ。1カ月にわたる石川・能登でのハンズオン・インターンシップ実習に参加した。観光資源の開発を目指す地元グループをサポートするもので、「高齢化した地域で組織を動かす難しさなどを体験し、社会課題の重さを実感した」という。

「わだやま竹田お城まつり」の武者行列に〝お姫様〟として参加。地元住民と楽しく交流した=朝来市 さらにその秋、朝来市和田山の国史跡・竹田城跡周辺の活性化を支援する社会探究実践演習も履修。観光客らへの調査・分析を経て、具体的な活性化策を現地で提案した。地域との交流は続き、今春の「わだやま竹田お城まつり」では、武者行列にも特別参加した。辻本さんは「ハンズオン・ラーニングの実践的な学習は、自分の将来を考える基礎になった」と力を込める。
これらの演習を担当する奥貫麻紀准教授は「学生が継続的に地域を訪れ、地域の方々と向き合い、自分ごととして地域課題の解決に真剣に取り組むことの意義も大きい」と話す。
本年度のハンズオン・ラーニングは全20科目。ほかに、調査分析を通して企業の魅力をまとめる特別演習▽東京で各省庁の現役官僚と交流する霞が関セミナー▽被爆地・広島での平和学特別演習▽原発事故のあった福島を訪問する特別演習―など、幅広い内容をそろえている。

インターナショナル 豊富な留学プログラム 昨年度は1570人を派遣

留学先の学生らと交流する若林萌さん(右から2人目)。1年間の留学はとてもハードだったが濃密な異文化体験が果たせたと語る=オーストラリア、マードック大学 世界で3番目、アジアで初めて国連ボランティア計画(UNV)と協定を締結した関西学院大学。2004年から開発途上国への学生ボランティア派遣を続ける。発展途上国の国連諸機関に派遣された学生数は、90人にもなる。
同校は建学以来、一貫して世界で活躍する人材の育成を目指していることもあって、国際交流の実績は豊富だ。学生や教員の相互交流を進めるための海外協定校・機関数は、世界44カ国、200超に及ぶ。広がる海外ネットワークを通じ、留学や研修など人材交流の制度は年々充実している。
専門分野を海外の協定校で学べる交換留学は、特に人気が高い。期間は1学期間か2学期間(1年)。留学先大学の授業料は免除され(関学の授業料は必要)、留学先の単位も認定されるため休学する必要がない。奨学金制度も充実している。
国際学部4年の若林萌さん(22)は、同制度を利用して昨年1年間、オーストラリアのマードック大学へ留学した。アボリジニ文化の研究に力を入れたほか、留学生らが集まる学生寮で生活し濃密な異文化交流を体験した。語学力は飛躍的に向上。TOEICは500点台から900点台まで上がった。若林さんは「想像していたより厳しく、そして楽しい経験でした。耐え抜くには好奇心とチャレンジ精神が必要。(語学留学ではないので)何を学びたいのかしっかり考えて専門分野を決めることも大切」とアドバイスする。若林さんは、留学で鍛えた語学力と経験を生かせる仕事を目指しているという。
このほかにも、英語やフランス語を学ぶ中期留学(1学期間、4~5カ月)、協定校で専門分野を学び関学と両方の学位を取得できるダブルディグリー留学(1~2年半)、休暇期間を利用して海外へ行く外国語研修(3~6週間)など、さまざまな内容の留学、研修プログラムがあり、2017年度は約1570人が参加した。
こうして世界へ飛び出す学生が多い一方、海外からやってくる留学生も年間で約1200人を超える。留学生と一緒に学べるプログラムも豊富だ。
「現代日本プログラム」では日本の文化、ビジネス、社会などについて、留学生と英語で学ぶことが可能。「クロス・カルチュラル・カレッジ」では、カナダの大学生と寝食を共にしながら企業・団体から提示されるビジネス課題に取り組む。EU関連講義の単位修得者には「EUインスティテュート(EUIJ)関西」から修了認定書が授与される。
このほか、多くの在学生ボランティアが留学生へのサポートを通して国際交流している。集団で学べる国際交流スペースも充実。キャンパス全体が地球規模の交流の場になっている。

副専攻 学部・専攻を超えて学ぶ

副専攻は、他学部・専攻などが提供するプログラムを体系的に学ぶ制度。多面的な視野、知識に基づいた幅広い発想力を持つことを狙っている。
「複数分野専攻制(MS)」は、入学した学部に加え、別の学部でも体系的に学習できる制度だ。この制度を利用し、最短4年間で二つの学位を取得できる「マルチプル・ディグリー制度(MD)」は、日本で初の画期的な仕組みだ。履修科目は多くなるが、効率的な学習方法を自分なりに探究し、時間管理が身に付く効果もある。
副専攻には他にも「国連・外交プログラム」や「学部独自プログラム」がある。
チャレンジ精神旺盛な学生に、できる限り学ぶ機会を提供しようという同校の姿勢が集約された制度といえるだろう。

学長に聞く

国際的に活躍する力を

村田治学長
―ダブルチャレンジ制度とは。

学生に専門外の勉強や社会体験をさせることで、創造性や社会の課題発見・解決の能力などを身に付けてもらおうというものです。異なった分野の知識や関心が結びついたときに、創造性やイノベーション能力が生まれるのです。
欧米には「新しいアイデアの創造には異なることを同時並行で進める必要がある」という考えがあります。実際、世界のビジネス社会では、社外から新たな発想を取り入れることで画期的な製品などを創造する「オープン・イノベーション」という経営戦略が広がっています。

―具体的な内容は。

社会での実践型学習である「ハンズオン・ラーニング」、留学など国際交流の「インターナショナル」、他学部の講義を履修する「副専攻」という3プログラムで構成しています。学生には、学部の専攻以外にいずれかを履修してもらいます。
例えば、ハンズオン・ラーニングには原発問題を考える科目があり、福島県でのフィールドワークも行います。実在する社会問題を通じ、法律、経済、科学技術など複数の知識を持つ必要性を学びます。

―兵庫県内で唯一、文科省の「スーパーグローバル大学創成支援(SGU)」に採択されています。

SGUに採択されたことで、国際化教育と大学改革は飛躍的に前進しています。国連など世界で活躍する人材を育成するプログラムを展開しています。本学で意欲を持って学べば、世界で活躍できる資質が身に付くと期待してほしいですね。

在学生からのメッセージ

海外インターンに挑戦

経済学部3年 菊山竜輔さん(20)

高校時代をアメリカで過ごし、将来は海外で働きたいとの思いを強め、国際交流プログラムが充実している関西学院大学を選びました。現在、留学生をサポートするボランティア活動にも参加しており、異文化の人とのふれあいの中で、刺激をもらい、成長へとつなげています。ハンズオン・インターンシップ実習では尼崎の薄板バネのオーダーメードメーカーで約6週間お世話になり、自ら考え主体的に行動する難しさを痛感。新たな気づきも得られたので、この経験を糧に、夏にはベトナムでの海外インターンシップに挑戦します。

大学概要

住所 西宮上ケ原キャンパス=西宮市上ケ原一番町1の155
西宮聖和キャンパス=西宮市岡田山7の54
神戸三田キャンパス=三田市学園2の1
アクセス 西宮上ケ原=阪急甲東園駅徒歩12分、阪急仁川駅徒歩12分
西宮聖和=阪急門戸厄神駅徒歩13分
神戸三田=JR新三田駅から直行バス15分
学部(本年度定員) 神学部(30人)、文学部(770人)、社会学部(650人)、法学部(680人)、経済学部(680人)、商学部(650人)、人間福祉学部(300人)、国際学部(300人)、教育学部(350人)、総合政策学部(590人)、理工学部(700人)
教員 教授493人、准教授113人、講師96人、助教48人
在学生 2万4421人
ホームページ http://www.kwansei.ac.jp/

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