今年創立124周年を迎える神戸松蔭女子学院大学は、六甲山麓の緑豊かな高台にキャンパスがあり、神戸港を一望できる。キャンパス内のチャペルはキリスト教主義に基づく大学のシンボルで、学舎は中世ヨーロッパの修道院のような落ち着いた雰囲気が特徴。文学部3学科、人間科学部は2017年4月に「都市生活学科」と「食物栄養学科」が新たに開設(設置届け出中)されて5学科となる。
「都市生活専修」では神戸の農作物を生かしてアクセサリーなどの商品開発も
生活学科に設置されていた「都市生活専攻」と「食物栄養専攻」を、2017年度からそれぞれ人間科学部内の新学科に進化させ、内容を充実させる(いずれも設置届け出中。変更の場合あり)。
新生「都市生活学科」は2専修に分かれ、両専修共通して都市化された現代生活で活躍できる人材の育成を主眼としている。衣食住から経済や経営、人々の心理まで幅広く学んで生活の質を向上させ、サービスや商品を提案して社会や地域に貢献できる人材を育てる。
産学連携を図って課題の発見や解決策を探るアクティブラーニング形式の授業が特徴。フィールドワークで研究テーマの解決策を考える「都市生活プロジェクト演習」(必修科目)や、企業やNPO、行政など幅広い組織で研修を行う「都市生活インターンシップ」(選択科目)などがある。学科専用の調理実習室や試食室が新設され、優れた設備環境で食に関する技術が磨けるのも魅力だ。家庭科の教員免許も取得可能。
二専修のうち一つは、前年度までの都市生活専攻の内容を継承、発展させた「都市生活専修」。衣食住を学ぶほか、「化粧心理学」「色彩学」など、社会や日常生活の中で、人間の行動に関する科学的な専門知識を学ぶ。ライフプランの側面からお金について学び、ファイナンシャルプランナーの資格取得も目指せる。
「食ビジネス専修」は商品開発に生かすことができる専門フードスペシャリストを目指せる
一方の「食ビジネス専修」は、近年需要が高まる食品とビジネスに特化した新しいカリキュラム。食から神戸を見つめ直して店舗経営やマーケティングを学び、新商品を提案する力を育てる。神戸マイスターによる製パン実習、起業を視野に入れたカフェマネジメント演習などの科目も用意している。
「幅広く生活について学べるので、地に足の着いた勉強ができると思う。想像力を膨らませて自分の考えを生み出し、発信していくことにやりがいを感じられる学生を育てたい」と鳥居さくら学科長(予定)は話す。
神戸松蔭の管理栄養士国家試験の合格率はとても高い
治療食、災害食など 多様な実習充実
もう一つの新学科が管理栄養士を養成する「食物栄養学科」だ。
新学科の母体となる生活学科食物栄養専攻の2016年管理栄養士国家試験の合格率は、全国平均の85.1%(新卒)より6.9ポイント高い92%。兵庫県内の管理栄養士養成施設の私立大学中、2位につけており、合格率100%を目指してさらにサポートに取り組む。食品衛生管理者などの資格も取得可能で、医療や福祉施設、給食施設や食品会社など、学びを生かした進路が選択できる。
新学科のカリキュラムの狙いは、管理栄養士に必要な「六つの力」の習得だ。高校の生物、化学の復習からスタートして食品成分などの知識を学ぶ「基礎力」
▽管理栄養士の職務の基本スキルを身に付ける「食事力」
▽多様な状況に応じた食事提供のノウハウを学ぶ「食プロデュース力」
▽商品の提案など企業と連携する「コラボ力」
▽教職員を患者に見立てコミュニケーションの技術を学ぶ「栄養指導力」
▽年200回以上の対策講座や補講、専用自習室開設などでサポートする「国試(国家試験)力」―を伸ばすことを目指す。
「炊き出し訓練」。災害時の衛生管理や栄養補給を学ぶ実習
治療食や行事食などの調理技術や提供方法を学び、3年次では150人分の調理作業を7回経験するなど、給食経営管理実習は特に充実している。また同実習の「炊き出し訓練」は熱源や飲料水が限られた災害発生1カ月を想定。ポリ袋で具材を密封して湯煎(ゆせん)して作る米飯やオムレツなど、災害時の衛生管理や栄養補給を学ぶ特色ある授業だ。
「心掛けているのは学生主体で学ぶ体制づくり。進路先では、患者や病院関係者などいろいろな人と協調する力を常に求められるため、まず学生同士が仲良く学び、助け合う姿勢を大事にしている。食物栄養学科は単に国家試験に受かるための場ではなく、管理栄養士養成を通して人間形成をする場」と佐藤友亮学科長(予定)は話す。
外国語教育を生かした留学制度や国際交流に定評がある神戸松蔭。英語圏を中心とした17の協定校に数多くの学生を送り出すほか、2015年度は協定校から47人もの留学生を受け入れている。
留学制度も全学部を対象にした1カ月の短期語学研修や1年間の留学など計4種ある。特に文学部英語学科生を対象にした4~6カ月間のセメスター留学(2年次後期から)は希望者が多く、留学後のTOEICスコアは109点も伸びているという(過去4年間の平均)。
「留学前にしっかり準備対策するのはもちろん、留学先ではテストの結果でより上級クラスに上がれるシステムもあり、高い意識を保つことができる。帰国後に英語実践能力を強化する科目を設け、後輩の留学希望者に体験談を話す発表などを通して、3年次以降や就職活動に向けての目標を定めることもできる」と白川計子教授。奨学金制度も充実しており、4カ月以上の留学では全員に給付され、成績上位者には支給額が追加される。
空港見学会。航空業界には数多くの卒業生が活躍している
神戸松蔭の2015年度の就職率は98.5%。安定的に高い就職実績を支えている土台が、1年次から「なりたい自分」「かなえたい夢」を意識する「キャリア教育」で、就職支援ではキャリアサポートセンターが心強い存在となっている。
3年次から模擬面接やエントリーシート添削、就職カウンセリングなどの個別指導を行って、学生の夢や課題と向き合い、温かく厳しく支援する。
人気の業界にしぼった対策も好評を得ており、卒業生が多く活躍する航空業界の就職対策では、ANA総合研究所と連携した元客室乗務員による講義や、卒業生とのエアライン交流会なども開いている。
待田昌二学長
―学生に求めること、大学の展望を教えてください。
学生には「目標へ向かって努力し、できるようになる喜び」を実感してほしいですね。人が喜びを感じるのは自らの能力が発揮できたとき。進路や資格につながれば言うことはありませんが、チャレンジする姿勢や過程にこそ意味があります。そういった実感を持つ経験は、卒業後に職業や家庭を持つ中で、必ず生きてきます。大学では2017年度から人間科学部に都市生活学科と食物栄養学科が誕生します(設置届け出中)。人間科学部は5学科となり、人と暮らしについて、ほぼ全ての分野をカバーする充実した教育体制が整ったと考えます。
―女子大ならではの長所は。
共学校では役割期待に沿って無意識に男女で役割分担する傾向にあります。一方で女子大では個人の能力によって役割を分担するので、能力や素質を生かしてリーダーシップを取る人間が自然と育つ環境にあります。また、女性が何かと気を遣うことの多い都市生活において、構内やチャペルで安心感を得られるのも、大規模でない女子大のよさだと思います。
―神戸で学ぶことの意味は。
山の手のキャンパスへ向かう道中には教会や洋菓子店などがあり、西洋的でおしゃれな雰囲気を感じられます。女性にとって魅力的なまち・神戸は、古くから女子教育が盛んな地。大学の歴史は1892(明治25)年に英国人宣教師らが設立した「松蔭女学校」に始まりますが、彼らはキリスト教や西洋の文化を押し付けず、松に象徴される日本文化を尊重しながら教育しました。124年の歴史は、西洋文化が神戸に溶け込む過程と重なります。本学で学び、神戸の雰囲気や文化を吸収することで、神戸というまちの伝統を受け継ぎ、新たな魅力をつくり出す主役となることができます。
高校生までは人見知りな性格だったので、比較的小規模の女子大を選択しました。しかし、3年のゼミでリーダーとして企業の担当者と接するうちに責任感が芽生え、大きな発表会の場で話したり、堂々とプレゼンテーションしたりできるようになりました。
化粧品会社への就職がスムーズに内定したのも、大学生活で身に付けた積極性のおかげだと思っています。ここで学んだ心理学やマーケティングの知識を生かし、化粧品が人に与える影響を考え、多くの女性に「お気に入り」として使ってもらえるような化粧品を開発したいです。
住所 | 神戸市灘区篠原伯母野山町1-2-1 |
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アクセス | 阪急六甲駅徒歩15分。阪急六甲、JR六甲道、阪神御影各駅から神戸市バス36系統六甲台南口下車、徒歩5分。 |
学部(本年度定員) | 人間科学部(370人=都市生活=都市生活専修=60人、都市生活=食ビジネス専修=40人、食物栄養60人、心理70人、ファッション・ハウジングデザイン60人、子ども発達80人)、文学部(220人=英語=英語プロフェッショナル専修=35人、英語=グローバルコミュニケーション専修=75人、日本語日本文化=現代日本語専修=35人、日本語日本文化=日本文化専修25人、総合文芸50人) |
教員 | 教授44人、准教授23人、講師18人、助教1人 |
在学生 | 1,990人 |
ホームページ | http://www.shoin.ac.jp/ |