「研究力」で世界と競う
神戸大学

「研究力」で世界と競う

1902年に創立した神戸高等商業学校を起点に110年余の歴史を重ねてきた神戸大。現在は文系(文、国際文化、発達科学、法、経済、経営)、理系(理、医、工、農、海事科学)の計11学部を持つ国内有数の国立総合大学として発展を続けている。2015年には新ビジョン「先端研究・文理融合研究で輝く卓越研究大学へ」を掲げ、世界と競うグローバルな大学を目指し、改革を進めている。

「理系出身の企業家」養成

日本初の文理融合型大学院

「科学技術イノベーション研究科」開設

今年4月に開設された「科学技術イノベーション研究科」。日本初の文理融合型独立大学院 「先端研究・文理融合研究で輝く卓越研究大学へ」のビジョンを具現化するため、今年4月に開設されたのが「科学技術イノベーション研究科」だ。自然科学分野で得られた研究成果を事業化につなげ、社会への還元を目指すことを目的とした日本初の文理融合型の独立大学院。先端科学の4分野で未来のイノベーションリーダーを養成する。
同研究科では先端科学の4分野(バイオプロダクション、先端膜工学、先端IT、先端医療学)に加え、アントレプレナーシップ(企業家精神)を教育研究分野とする。

イノベーションの創出を目指す「先端膜工学研究拠点」 教育課程では、各専門分野の研究能力を磨き上げ、画期的な研究を生み出すために他の専門分野にも視野を広げる素養を身に付ける。また、研究成果を事業化に導いていくために欠かせない知的財産化、生産技術開発、市場開拓までのプロセスを理解、実践できる企業家意識を持った人材を養成するためのカリキュラム構成としている。各学生がビジネスプランを実際に作成する「科学技術アントレプレナーシップ・プロジェクト研究」や、実務家教員がパイロットプラントを活用しつつ現場教育を行う「産業技術実習」など、実践的な科目も多く含まれている。
重点分野の研究テーマ「バイオプロダクション分野」では、木や草などの植物から微生物機能を利用してバイオ燃料やバイオ由来化成品の生産を行い、脱石油資源の循環型社会の実現を目指す。「先端膜工学分野」では、膜を用いて水浄化やガス分離を行うことで、省エネ・創エネプロセスによる資源循環型社会の実現につなげる。
「先端IT分野」では、スパコンを利用する高性能計算(HPC)と広域ネットワーク化情報技術(IoT)の連携により、情報通信デバイスとIT応用技術分野で世界最先端の研究開発を推進する。「先端医療学分野」では、人工多能性幹細胞(iPS細胞)やコンピュータシミュレーション、新規ワクチン製造基盤技術などの革新的な医療開発手法を活用し、新規治療法や診断法の創出を推進する。
「アントレプレナーシップ分野」では、文理融合のメリットを生かし、先端科学技術分野の研究成果を基にしてグローバルな視点で競争力のある事業を創造する理系人材(理系出身の戦略的企業家)の養成を目指す。

複眼的な思考力を養う

「クォーター制」を導入

教育改革スタート

神戸大は2016年4月から教育改革をスタートさせた。「自ら地球的課題を発見し、その解決にリーダーシップを発揮できる人材」を育成することが目標。神戸大の学生が卒業時に身に付けるべき共通の能力を「神戸スタンダード」として定め、新たなカリキュラム、制度を整えた。
「神戸スタンダード」は「複眼的に思考する能力」「多様性と地球的課題を理解する能力」「協働して実践する能力」の三つだ。この三つの能力を身に付けるため、1、2年次で、他分野の学問の基本的な考え方やものの見方を学び、自分の専門と他の学問体系との違いを理解する「基礎教養科目」と、多文化理解を深め、複数の学問分野にまたがる地球的課題について学び、複眼的なものの見方や課題発見力を養成する「総合教養科目」を履修。3、4年次には異なる専門分野の学生が協働して学際的な課題を学ぶことで、チームワークなどの社会的能力や課題解決能力を養成する「高度教養科目」を履修。4年間を通じた教養教育となる。
また、世界で学ぶ機会をつくりやすくするため、前、後期の授業期間を半分に分け各8週で授業を行う「クォーター制」を導入する。これにより、一つのクォーターと長期休暇を組み合わせることで、休学せずに海外のさまざまな学外活動に参加しやすくなるという。本年度から新たに採り入れた「神戸グローバルチャレンジプログラム」は1、2年次に国際的なフィールドで行うインターンシップなどの学外学修活動を促進するもので、事前・事後の学修を含めて「グローバルチャレンジ実習」として単位が授与される。
また、教育改革に合わせて、全ての学部で入学直後に初年次セミナーを開講する。大学生として必要な「主体的な学びの姿勢」を育むことを目的とし、神戸大の使命やビジョン、大学生として守るべき社会的マナーなど、全学共通教材を用いて、それぞれの学問分野における4年間の学びのプランを自ら考えさせる。

「グローバル人材」を育成

2、3年次 全員が海外研修参加

「国際人間科学部」(仮称)開設へ

2017年4月、国際文化学部と発達科学部を統合、「国際人間科学部」(仮称)を設置する。海外研修などの新プログラムを導入 神戸大は2017年4月に「国際文化学部」と「発達科学部」を再編統合し、新たに「国際人間科学部」(仮称)を設置する。「課題発見・解決型グローバル人材」の育成を体現する学部で、2、3年次には全学生が海外での研修とフィールドワークに参加するなど、実践型教育プログラムを導入している。
同学部は世界の環境、災害、民族、宗教、経済格差、人権、教育、社会福祉などに関わる諸課題について、深い人間理解と他者への共感をもって解決し「グローバル共生社会」の実現に貢献する「協働型グローバル人材」を養成することを狙いとしている。
特色は三つ。一つ目は「世界の諸課題について多角的に分析・検討する能力を磨く学部共通教育の実施」。協働型グローバル人材の知的基盤を築くため、諸課題を深く理解できる想像力と共感力、課題解決を先導するリーダーシップ、複数言語や情報通信技術(ICT)を使いこなすコミュニケーション能力、情報収集力、分析力を養う。
二つ目が「グローバル・スタディーズ・プログラム」。事前学修によって個々の課題を明確に設定した上で、それぞれのニーズに応じて多様に設定される海外での研修とフィールドワークに学生全員が参加し、事後学修で問題への対処を振り返り、キャリア形成に役立てる。

三つ目が「異文化理解、人間発達、環境共生の観点からの専門的な教育の実施」。多文化状況などをめぐる諸問題の解決への道筋が提案できる「発信力」、人間の発達のさまざまな理解とそれを支えるコミュニティーの形成を実現できる「実践力」、共生社会を支える環境の創出と保全に寄与する「分析力」と「行動力」を身に付ける。さらに、その知見を次世代に継承する指導者を育成する「教育力」も養う。

学長に聞く

世界最高水準の教育を

武田廣学長 ―神戸大が目指すところは。

神戸大は文系と理系のバランスの取れた総合大学として発展してきました。その強みを生かし、新たなビジョン「先端研究・文理融合研究で輝く卓越研究大学へ」を掲げたところです。国立大学の機能強化三類型において、最もハードルの高い「世界最高水準の教育研究」を行う大学に名乗りを上げ、その内容について京都大、九州大とともにトップグループの認定を受けました。その先に「大学ランキングで世界100位以内、国内で5位以内」という野心的な目標を打ち出し、学内の士気を高めています。

―具体的な道筋は。

今年4月に、新しい研究科である「科学技術イノベーション研究科」を開設しました。この研究科は社会科学分野と自然科学分野が一体となり、自然科学分野で得られた研究成果を事業創造にまでつなげることを考えた日本初の文理融合型大学院です。卒業生は、産業界のさまざまな分野から求められているイノベーションを推進するリーダーとして活躍してくれるものと期待しています。

―「神戸スタンダード」とは。

「自ら地球的課題を発見し、その解決にリーダーシップを発揮できるグローバル人材の育成」を教育改革の目標とし、卒業時までに身に付ける能力として「複眼的に思考する」「多様性と地球的課題を理解する」「協働して実践する」を掲げ、4年間を通じて高度な教養教育を行います。本年度からは前・後期の授業期間を半分に分け、各8週内で授業を行うクォーター制を導入し、留学やインターンシップに参加しやすくなるようにしました。来年度に発達科学部と国際文化学部を統合して発足させる新学部では、海外での研修、留学を必須とします。今後も神戸・兵庫に軸足を置きながら世界に誇れる大学を目指します。

在学生からのメッセージ

実践的な経営を学べる

経営学部経営学科4年 高沢祥平さん(21)

実践的なマーケティングを学びたいと思い、神奈川県の高校から進学しました。
所属するゼミは学生10人の少人数ゼミで、きめ細かい指導をいただき、実際に企業の抱える課題を見いだして学生の視点から提案する機会も得られました。11学部を持つ総合大学なので、医師を目指す人、船乗りを目標にしている人など、さまざまな思いを持っている学生と友だちになることができ、視野を広げてくれます。
就職してからは日本だけでなく、世界でビジネスの経験を積み、経営者になることを目指しています。

大学概要

住所 六甲台:神戸市灘区六甲台町1-1
楠:神戸市中央区楠町7-5-1
名谷:神戸市須磨区友が丘7-10-2
深江:神戸市東灘区深江南町5-1-1
アクセス 六甲台:阪急電鉄六甲駅、JR六甲道駅、阪神電車御影駅から市バス36系統「鶴甲団地」行き
学部(本年度定員) 文学部(115人)、国際文化学部(140人)、発達科学部(280人)、法学部(180人)、経済学部(270人)、経営学部(260人)、理学部(140人)、医学部(272人=医学科112人、保健学科160人)、工学部(540人)、農学部(150人)、海事科学部(200人)
教員 教授563人、准教授410人、講師99人、助教218人、助手15人
在学生 1万6,356人(大学院含む)
ホームページ http://www.kobe‐u.ac.jp/

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