今年開学50周年を迎える神戸女子大は文学部、家政学部、健康福祉学部、看護学部を持つ。「自立心」「対話力」「創造性」をキーワードに、社会に貢献する深い思慮を持った女性の育成を目指し、キャンパスには学びの雰囲気が満ちあふれている。国家試験では高い合格率を誇り、特に教員採用では試験対策強化の成果が実績に表れている。
付属高倉台幼稚園での実習で、実践的な経験を積める
関西の私立大の中でも歴史がある教員養成校の一つである神戸女子大。2016年度の教員採用実績のうち、小学校の教員就職実績は前年度の63人を大きく上回る71人となった。4年前から新たに取り組んできた教職採用試験対策が成果となって表れた形で、教育学科の就職者の8割近くが教員就職に結び付く好結果となった。
神女では教育学科の学生を含め、全学生の約半数が教員免許取得に向けて勉学に励んでいる。07年には他大学に先駆けて「教職支援センター」を開設。教員採用試験対策に直接関わるスタッフだけでなく、教育実習やスクールサポーター、教員免許状申請、教職課程の履修相談、教員採用試験対策などをサポートする事務部門も併設した点が大きな特徴で、教職関係のサポートを〝ワンストップ〟で受けられるようになっている。学生が自由に出入りできるスペースも用意されており、過去の教員採用試験の問題や教科書、指導書の閲覧や、インターネットを利用した検索も自由にできる。
教職志望の学生を応援する「教職支援センター」。試験対策の情報が集められている
神女は「神女で学びたい」という強い気持ちで受験してくる学生が多く、県外出身者の割合が高いことも特徴の一つ。学生一人一人の「先生になる」という意識が高く、授業以外の昼休みや放課後などでも、自主的に学生同士で勉強会を開くことが伝統として受け継がれ、日常化しているという。
今後は卒業生とのネットワーク構築にも力を入れ、現役の教員から現場の状況や指導方法などについて話を聞く機会を設けるとともに、卒業生の再就職などのサポートにも力を入れていく計画だ。
山根教授(奥)が研究開発した「低カロリー麺」は近日中に商品化される予定
家政学部の山根千弘教授は、カロリーゼロの繊維質「セルロース」を水酸化ナトリウムと水だけで溶解する技術を開発し、現在は低カロリー食品に応用する研究開発を進めている。近々、麺として製品化される予定で、今後は多くの食品で商品化されることが期待されている。
セルロースは植物の細胞膜の主成分で「地球上で最も多く存在する炭水化物」とされ、その有効利用に向けた研究が進められてきた。これまで紙や繊維、セロハンなどの原料として工業用製品としては幅広く使われており、カロリーがゼロであることから食品への応用も注目されてきた。
ただ、食品応用の大きな壁となってきたのが、セルロースを溶かすために使う溶媒が限られてきたことだ。
従来の溶媒は、人体に有害な二硫化炭素を含んでいたが、山根教授は最近の研究で、水酸化ナトリウムと水だけでセルロースを溶かす手法の開発に成功した。デンプンや食物タンパクに比べて吸水、吸油性に優れ、強度、煮沸耐性もあるため、さまざまな食品への応用開発が進められている。
山根教授は企業との共同研究で、この特性を生かして麺商品の開発を続けてきた。食感を改善するためにグルコマンナンをブレンドしているところが特長で、近日中に麺として商品化され、発売が予定されている。
神戸女子の学生75人が「女子神輿」に参加。地域の安全と繁栄を願って巡行した
神戸女子大と神戸女子短大は神戸・三宮に創設された「神戸新装女学院」が母体。須磨、ポートアイランドキャンパスとともに、創設の地にも三宮キャンパスがあり、学生が地域と深く関わり続けている。
今年4月、生田神社の祭典の中で最も重みを持つ「生田祭」で、神戸女子大と神戸女子短大の学生75人が女子神輿(みこし)に参加した。生田祭は江戸時代から続く伝統行事で、11地区ある氏子地域が毎年持ち回りで神輿を担ぎ、御神幸を行う。今年は三宮キャンパスがある宮元地区が奉仕当番の年で、女子神輿が担がれるのは宮元地区だけだという。
学生たちは1週間前から担ぎ方や作法、かけ声を練習し、本番を迎えた。神事に参加する前に、全員で「熊本地震の被災者に元気を届ける気持ちで頑張ろう」と声を掛け合った。生田神社の紋である「八重桜」をあしらった法被に身を包み「わっしょい、わっしょい」のかけ声で、地域の安全と繁栄を願いながら巡行。途中「しゃーんとせー」のかけ声で神輿を高い位置に持ち上げ「ソー」「レー」「サー」「ハッ」のかけ声とともに、重さ300キロもある神輿を頭上へと放り上げると、沿道から大きな拍手が沸き起こった。
11年に1度の女子神輿への奉仕は、学生たちにとって地域の伝統文化に触れ、仲間との連帯を実感し、地域の関係者に支えてもらっていることを感じる貴重な経験となった。
オープンキャンパスでは、各学科の授業体験も行われる
神戸女子大学のオープンキャンパスが6月12日、須磨キャンパスとポートアイランドキャンパスで開かれる。
各学科の授業体験のほか、食堂でランチを味わったり、相談コーナーで質問ができたりと、充実した内容になっている。さらに特別企画として、須磨キャンパスでは史学科の学生が主催する歴史をテーマに企画した「謎解きゲーム」を実施。また、ポートアイランドキャンパスでは、神女のクラブ活動を、ゲームを交えながら体験する学生企画も準備されている。
当日はJR須磨駅から須磨キャンパスまでを往復する無料シャトルバスが運行される。
中島實学長
―大学が開学して50周年を迎えました。
1966(昭和41)年に家政学部単独でスタートし、現在は4学部10学科3研究科7専攻を持つまでに発展を遂げました。「自立心」「対話力」「創造性」を培う教育を目指し、社会に貢献する深い思慮を持った女性を育成する、という設置理念を開学以来貫いてきました。授業や課外活動を通じて、できるだけ自身で考え行動するよう学生に促すことを、一人一人の教員が常に意識して教育に当たっています。
―どのような学風が培われていると感じていますか。
学生が就職した企業の担当者からは「神女の卒業生は真面目で信頼でき、着実に仕事をこなす」との評価を多くいただいています。どの授業も出席率が非常に高く、大学は勉強する場という意識が学生に根付いており、前へぐいぐい出ていくような派手さはありませんが、地道で堅実な学生が多いことが特長です。
―教員採用試験をはじめ、国家試験の合格率の高さでも定評があります。
管理栄養士の合格者数は全国の大学で6位、社会福祉士は関西地区の大学で3位、精神保健福祉士の合格率は関西の女子大学で3位となりました。また、教職支援センターが1年次から学びのモチベーションを高めるためのサポート強化に取り組んできた結果、小学校教員就職実績は前年度の63人から71人へと大きく増加しました。
―受験生へメッセージを。
まずは勉強や部活など、高校生活にしっかり取り組んでほしい。その中で自分が将来どんな方向に進みたいのか、どんな職業に就きたいか考えてください。大学に入ってから変わってもかまいません。本学ではその思いが実現するように指導します。
大好きな英語をしっかり学べるところを探し、神戸女子大を選びました。ハワイ大学での4カ月間の留学を2年次に経験して、自分の中で「学ぶ姿勢」が変わり、帰国後は授業で積極的に発言できるようになりました。
神女の学生は皆、勉強に対する姿勢が真面目で「学費を払って学ばせてもらっているんだ」ということを実感でき、皆のおかげでどんな授業も真剣に臨むことができました。TOEICのスコアも470点から815点まで伸ばすことができ、将来は英語力を生かし、日本と海外をつなぐ仕事に就きたいと考えています。
住所 | 須磨キャンパス:神戸市須磨区東須磨青山2-1 ポートアイランドキャンパス:神戸市中央区港島中町4-7-2 |
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アクセス | 須磨キャンパス:神戸市バス75、72、71系統こども病院前下車徒歩約3分 ポートアイランドキャンパス:ポートライナーみなとじま駅下車徒歩約5分 |
学部(本年度定員) | 文学部日本語日本文学科60人、英語英米文学科60人、神戸国際教養学科40人、史学科60人、教育学科165人、家政学部家政学科80人、管理栄養士養成課程150人※、健康福祉学部社会福祉学科80人、健康スポーツ栄養学科80人※、看護学部看護学科80人(※は収容定員増加の認可申請中。変更の場合あり) |
教員 | 教授90人、准教授39人、講師14人、助教10人、助手25人 |
在学生 | 3,276人 |
ホームページ | http://www.kobe-wu.ac.jp/ |