保育者養成127年の歴史
頌栄短期大学

保育者養成127年の歴史

今年創立127年を迎える頌栄短大。現存する日本の保育者養成校の中で最も長い歴史を誇り、幼児教育のトップランナー的役割を担い続けてきた。キリスト教精神に基づいた豊かな人間性を育てる教育と、現場での実習を重んじたカリキュラムに対する保育業界からの評価は高い。1学年150人の保育科単科大学という強みを生かした細やかな指導で、保育者を志望する学生の就職率は毎年100%を誇っている。

豊富な実習で実践力強化

幼稚園教諭2種や保育士 全員が資格取得を目指す

幼稚園実習で子どもたちと遊ぶ学生。2年間で幼稚園、保育所、福祉施設での実習を計6回体験する 頌栄短大のカリキュラムは「こどもこころそだてる」をテーマに、子どもたちを健やかに育むことのできる保育者を目指し、人として成長していくことを目的に構成されている。
根底にあるのは「キリスト教精神」。フレーベルの教育思想を学んだ米国人教育宣教師の創立者アニー・L・ハウ氏の教育に基づいており、礼拝の時間やキリスト教関連科目を設けている。社会人としての教養を身に付ける「基礎教養科目」と保育の知識や技能を学ぶ「専門教育科目」が、豊かな心を持った保育者を目指す学びの基礎。さらに応用となるのが、保育の実践力を高めるための「実習科目」だ。

保育の知識や技能を学ぶ「専門教育科目」が充実している 2年間で計6回経験できる実習には特に定評がある。中でも学生にとって最も力になるのが「実習」に備えた「学内観察実習」。1年後期になると、毎週のように幼稚園と保育園に出掛ける。ありのままの子どもの姿や保育者の援助について学び、保育に取り組む目を養う。また、繰り返し観察記録をつけて添削を受け、書く力も付けていく。そのため実習先から記録の書き方や考察の内容にも高い評価を得ているという。

保育の基本は子どもたちを見ること。常に観察を続けながら力を身につける 「保育はまず子どもたちをよく見て理解することが基本。学生にとって学内観察実習は厳しいようだが、ここで身に付いた力が実習で生かされ、子どもたちの中に入っていきやすく、実習園の環境にもなじみやすくなる」と藤井薫副学長。
事前指導、事後指導が丁寧で細やかなのも特長。特に事後指導では、園評価と自己評価を基に、反省点や自己の課題を見いだす。また、グループ討議を通して、今後に役立つヒントを見つけることができ、現場につながる力が付くという。
保育科のカリキュラムは、2年間で保育士資格と幼稚園教諭2種免許状を取得できるようになっている。
また、全員が市民救命士(小児コース)を受講し、子どもの命を守る職に就く意識を高めることに役立てている。取得単位数が多く学生にとっては忙しい日々だが、夏季休暇中も幼稚園や保育園へ保育ボランティアに多くの学生が参加している。
保育科修了後に進む専攻科では、取得した保育士資格と幼稚園教諭免許を生かして現場で実践し、保育の専門性を高める科目がある。この専攻科は2015年度から「特例適用専攻科」として認定され、短大2年を含めて学士課程4年間に相当する質を保証すると認められ、4年制大学と同じ学士(教育学)が取得できる。

保育就職率は毎年100%

小規模校の強み 手厚いサポート

豊かな人間性を育てる教育と実践力を養うカリキュラムに基づき、兵庫県内を中心とする保育園や幼稚園、社会福祉施設に多くの卒業生が送り出され、保育業界から高い評価と大きな期待が寄せられている。
ここ数年は、新規参入などで保育関連事業者からの求人が増加しており、2015年度の求人数は4,949人。保育職を志望する学生の就職率は、毎年100%を達成し続けている。
この実績を支えるのが、学生一人一人に対するきめ細やかな対応と頌栄短大ならではの進路ガイダンスだ。1年次は現場で働く卒業生の体験談を通して保育職の魅力に触れ「働く」ということについて考えていく。書く力や話す力を磨き、保育現場での常識やマナーについても学ぶ機会を設けている。
2年次には、より実践的な試験対策に加え、じっくりと個別相談を行うなど、学生が主体的に納得のいく進路を見いだせるようサポートしていく。また面接やピアノなどの実技対策として、担当教員の個別指導も充実している。
「教職員と学生との距離が近いのが小規模校の魅力。授業や学生生活はもちろん、就職支援の個別サポートには特に力を入れている」と沖中重明進路支援室長。教員が十数人ずつの学生を受け持つ「グループ担任制」をとり、教職員間の連携も大切にすることで、大学を挙げて一人一人の学生を見守り、支援している。

理想的な環境で学習

豊かな自然、敷地内に幼稚園…

2年生全員で作り上げる「生誕劇」上演。授業科目の一つ 六甲山系の南端に位置し、阪急御影駅から徒歩10分という便利な立地にありながら、豊かな自然に包まれたキャンパス。高台にあるため大阪湾も一望できる。敷地内には200種を超える植物が生育している。
また、同一敷地内に頌栄幼稚園があるため、学生たちは常に子どもたちの声を聞き、子どもたちの姿を見ながら学生生活を送ることができる。授業の中には、幼稚園に出向いて子どもたちの前で絵本の読み聞かせを行ったり、自作のエプロンシアターを演じたりすることもあり、学んだことを即実践できるのも魅力だ。

人気クラブ「ライブラリーアドベンチャー部」。依頼があれば出向き、読み聞かせなどで活躍している 大学生活の代表的な行事の一つが「頌栄祭」。大学祭といえば学生のお祭りというイメージが強いが、頌栄祭では子ども向けのゲームコーナーやスタンプラリーなどが企画され、地域の小学生や未就学児を招待し、保育の実践につなげている。「子どもたちに楽しんでもらい、学生が子どもたちとふれあう企画は保育者養成校の大学祭ならでは」と藤井副学長。
クラブ活動も盛んで、スポーツ系と文科系合わせて13のクラブや同好会がある。アウトドアクラブ、ライブラリーアドベンチャー部は特に人気が高い。2000年に創部したライブラリーアドベンチャー部は保育所や幼稚園、児童館などから依頼があれば出向き、絵本の読み聞かせやパネルシアター、ペープサートを用いてお話会を行うクラブ。どう工夫したら子どもたちに楽しんでもらえるかを学生自ら考えることが、保育者になるための成長の一歩となっている。

学長に聞く

伝統校の強みを生かす

棟方信彦学長 ―新学長としての教育方針は。

 保育者養成を専門とする少人数の単科大学で、学生と教職員が同じ方向を向いて歩むことができるところが本学のよさ。キリスト教精神に基づき、創立者のハウ教育宣教師が信奉した「フレーベルの教育理念」を保育に生かすのが建学の精神ですから、その精神を皆で共有しあうことに注意を傾けたいと考えています。派遣要請を受けて米国からやって来たハウ教育宣教師は、育成機関である大学と実践の場である幼稚園を対として教育を進めてきた先進的な指導者でした。創立から127年の月日が流れ、世の中は変化していますが「社会が求めるのはどんな保育者か」を確認しながら、時代のニーズに本学らしい形で応じていきたいと思います。

―この時代に求められる保育者養成校の意義は。

 少子高齢化で人口減少社会に入った日本では、一人の幼い命がより大切に扱われるとともに、保護者の幼児教育に対する関心や要望も高まり、多様化しています。また、出産や子育てと切り離すことのできない女性の就業形態が多様化し、社会で役割を担う機会も増えています。そういった時代だからこそ、保育の場が抱える課題をさまざまな視点で掘り下げて、現代の保育動向に応じる姿勢が必要で、保育者養成一筋の本校の力が発揮できると自負しています。

―どういった学生に学んでほしいですか。

 幼い子どもたちに向き合うのは、責任感や使命感が強く求められます。と同時に、子どもたちに理解され受け入れてもらえるよう、コミュニケーションや人格を磨いていく必要もあります。保育の現場は、子どもを鏡としながら、自分自身の生き方が問われる場です。日常を振り返って反省し、課題を見つけ成長していくという素地のある学生に来てもらいたいです。

在学生からのメッセージ

子どもに近い環境魅力

保育科2年 嶋谷花さん(19)

 キャンパス内の自然の豊かさと、短大のすぐそばに幼稚園があって子どもたちを身近に感じられる環境に魅力を感じました。入学後は、実習で同じ現場に季節を変えて2回行けるなど、頌栄ならではの実習の充実度を実感。大学祭の実行委員長も務め、忙しい毎日ですが有意義な大学生活を送っています。
 保育者は「好き」だけではできない仕事だと言われますが、逆に「好き」という気持ちがないと勤まらないとの教えが心に響いています。子どもたちの行動だけを見て判断するのでなく、心の内を思慮して関わることのできる保育者になりたいと思います。

大学概要

住所 神戸市東灘区御影山手1-18-1
アクセス 阪急御影駅徒歩10分
学部(本年度定員) 保育科(150人)専攻科(20人)
教員 教授5人、准教授5人、講師5人
在学生 281人(男10人、女271人)
ホームページ http://www.glory-shoei.ac.jp/

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