関西国際大学は、三木キャンパスに人間科学部と保健医療学部、尼崎キャンパスに教育学部と人間科学部を置く。「KUIS学修ベンチマーク」という全学共通の学びの到達指標を導入するなど、誰でも4年間で学修目標が達成できる仕組みを整えているのが特徴だ。さらに東南アジアの大学と防災などの安全・安心をテーマとした共同研究を活発化させるなど、国際交流にも熱心だ。小規模校ながら、先進的な教育とグローバルな活動で、全国から注目を集めている。
海外体験学修「グローバルスタディ」は全学生が参加する研修制度。異文化理解、国際貢献を図る
「世界に学び、社会で活(い)かす」教育を目指す関西国際大学。「アクティブ・ラーニング」と呼ばれる体験型学修に力を入れるなど、大規模校ではなかなかできない丁寧な指導に定評がある。
教育の柱の一つが海外体験学修プログラム「グローバルスタディ」。看護学科を除く全学生が参加できる海外研修制度で、しかも1度目は全員が渡航費無料になっている。
具体的には、海外での調査研究活動「フィールドリサーチ」
▽海外で社会貢献活動に取り組む「サービスラーニング」
▽海外就業体験「海外インターンシップ」
▽6カ月以上の「交換留学」―など。それぞれに学科の特徴を生かした多彩なメニューがそろう。
さらに、6カ国の14大学が参加する、安全・安心をテーマにした教育研究組織「アジアン・コーポレーティブ・プログラム(ACP)」で中心的な役割を果たしている。学生も参加する研究発表の会議が、毎年各地で開催されている。
今年4月、ミャンマー警察庁と防犯などの学術支援協定を結んだ
これらの大学とは「グローバルスタディ」でも密接に協力。今年3月にはACP加盟大学の学生14人の短期研修を受け入れた。
世界12カ国・地域の47校と協定を結ぶなど、世界にネットワークを広げる。今年4月にはミャンマー警察庁と協定を結び、防犯などの学術的な支援をすることになった。濱名篤学長は「安全・安心は世界共通の課題として注目されている。グローバルな研究教育活動の柱にふさわしいテーマで、阪神・淡路大震災を経験した兵庫県にある大学として、これからも中心的な役割を果たしたい」と話している。
地域貢献を学びとする「コミュニティスタディ」
(写真は「こどもを犯罪から守る」町歩き)
このほか、地域社会に学生が直接関わる「コミュニティスタディ」も重要だ。一般企業などへの就業体験「インターンシップ」も学習の場として捉え、教員が丁寧に指導している。
さらに、授業の一環で地域貢献活動に取り組む。具体的には、障害のある子どもたちのスポーツ活動支援、子どもを犯罪から守る町づくりへの協力、地域活性化イベントの企画と実践など。「幅広い社会経験を授業に盛り込むことは、自律した人間への成長につながっている」と説明している。
関西国際大学は、社会で求められる能力を身に付けさせるため、学生が卒業までに到達すべき目標「KUIS学修ベンチマーク」を設定している。
各教科や各学科では、何が学べるかを明示。学生はそれを基に科目を選択する。評価についても、教員が統一された基準で採点。評価結果は各学期末に設けた「リフレクション(振り返り)・デイ」で学生に返される。学生は達成度合いを大学サイトの「eポートフォリオ」という自分のページに記録する。達成度を基に考えることで、履修計画を立てる際に明確な目的を持ちやすくなるという。
ベンチマークは就職活動にも効果をもたらす。ベンチマークを常に意識することで、学生は自分の長所と短所を理解でき、能力や希望に即した就職活動に取り組めるようになる。
学生の就職活動をサポートする「キャリア支援センター」の指導も親切丁寧だ。毎年、学生への個別面談を年間延べ3,500回ほども行う。1年次からのキャリア教育や、常駐するキャリアコンサルタントによる個別対応など、学内外で連携してサポートする重層的な支援体制を構築。このため、就職率は高水準を維持できている。
資格・スキル取得のサポートも充実。専任教員が中心となって、専門知識の授業などを行っている。また、教職を目指す学生のため「教員採用試験対策講座」も設置。学力試験対策だけでなく、面接、模擬授業、ロールプレイ、場面指導などの対策も行っている。
尼崎キャンパスにある「教育福祉学科」。「こども学専攻」と「福祉学専攻」の二つで構成
2006年度に設置された教育学部教育福祉学科は「こども学専攻」と「福祉学専攻」で構成されている。扱うテーマは「エデュケア」。子どもからお年寄りまで、人間の一生に関わる教育と福祉を幅広く学ぶことができる。「人を大切にする豊かな心を持つ人を育てる」ことが目標だが、資格取得でも優れた実績を残している。
こども学専攻は保育士、幼稚園教諭1種、小学校教諭1種、特別支援学校教諭1種などの資格取得ができる。小学校・特別支援学校の受験者のうち、2015年度の正規教員採用者数は13年度の2.6倍にまで急増。近隣の系列幼稚園や保育所でも教育実習やボランティア、インターンシップなどの現場実践ができるのも強みだ。
福祉学専攻は、社会福祉士の資格所得に向けて1年次から計画的なカリキュラムを編成している。授業だけでなく、自由に受講できる「社会福祉士受験対策講座」も開講し、意欲のある学生を万全の体制でサポートしている。
福祉現場でのインターンシップも充実。準備段階で福祉施設や団体の存在意義、役割などをしっかり学び、実習先や就職先と学生とのミスマッチがなくなる体制作りにも余念がない。
濱名篤学長
―今春、発表した「三つの方針(ポリシー)」とは何ですか。
文科省の通達により、各大学は来春までに、卒業認定・学位授与の方針(DP)、教育課程編成の方針(CP)、入学選抜の方針(AP)を策定しなければなりません。他の大学は作業に追われているところですが、関西国際大学は以前から「ベンチマーク」や教育方針を明確に掲げていたことから、一足早く発表することができました。その内容は、DPでは「自律性」「社会的貢献性」「多様性理解」「問題発見・解決力」「コミュニケーション能力」「専門的知識・技能の活用力」を修得目標としており、いずれも従来の教育方針から導き出したものです。CP、APも既に明確でした。あらためて当大学の教育内容の先進性が分かりましたね。
―教育内容に特色があります。
実習や現場体験の機会が豊富です。国際大学にふさわしいグローバルな視点を身に付けるための「グローバルスタディ」と呼ぶ国際体験プログラムは、全学生が履修できます。地域社会での実践教育と合わせ、体験を重要視しています。また、1年から4年まで一貫した少人数教育を行っています。アドバイザーと呼ぶ指導教員による丁寧なアドバイスで、成長に合わせた学習計画をたてることができます。
―学生に身に付けてほしいことは何でしょう。
これからの社会では「私」を生きる力が大事だと思っています。つまり、自分の人生を自分で選択できる力を付けてほしい。当大学では、学生が能動的に学修に参加するようなシステムを作っています。4年間で自分の能力が向上したと感じる学生の割合が、当大学は非常に多い。先輩の経験を聴いてもらえば、その理由が分かるはずです。
ベンチマークは就職活動にも効果をもたらす。ベンチマークを常に意識することで、学生は自分の長所と短所を理解でき、能力や希望に即した就職活動に取り組めるようになる。
授業では発表の機会が多く、人の話を聞くことも多いのが特徴。おかげでコミュニケーション能力が向上しました。高校までは人前で話すことが苦手でしたが、今は自分の考えを伝えることが苦になりません。「グローバルスタディ」ではベトナムへ行きました。貴重な経験で、視野を広げてくれました。
今は臨床心理士の資格取得を目指しており、大学院へ進学するつもりです。学校、企業、病院など、臨床心理士の職場は増えています。人の役に立つ仕事をしたい。はっきりとした人生の目標を持てたのも、この大学で学んだおかげだと思います。
住所 | 三木キャンパス(大学本部):三木市志染町青山1-18
尼崎キャンパス:尼崎市潮江1-3-23 |
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アクセス | 三木キャンパス(大学本部):神戸電鉄緑が丘駅バス5分
尼崎キャンパス:JR尼崎駅徒歩5分 |
学部(本年度定員) | 教育学部(200人)、人間科学部(225人)、保健医療学部(80人) |
教員 | 教授:47人、准教授:26人、講師:21人、助教:5人、助手:2人 |
在学生 | 2,063人(男999人、女1,064人。大学院、別科、科目等履修生を含む) |
ホームページ | http://www.kuins.ac.jp/ |