神戸親和女子大学は文学部総合文化学科と発達教育学部(児童教育学科、心理学科、福祉臨床学科、ジュニアスポーツ教育学科)、通信教育部、大学院文学研究科を持つ。創立50周年を機に、主体的な学びを後押しするスペース「ラーニングコモンズ」が完成し、実習の場となる付属親和幼稚園も開園した。実践を経験しながら主体的に考え、しなやかに課題を解決する人材の育成を目指す親和の教育は進化を続けており、成果は高い就職率となって表れている。
4月にオープンしたラーニングコモンズ「TOMO」。学生同士が学びあうグループワークの場
主体的な学びを養うスペースとして4月にオープンしたラーニングコモンズ「TOMO」。グループディスカッションやプレゼンテーション、自習など、学生の目的に合わせて自由に使える学習環境が整えられている。「イングリッシュラウンジ」では、映像でネーティブスピーカーのレッスンを受けることもでき、学生同士が刺激しあいながら学ぶ空気を醸成している。
ウッドデッキのテラスがあるおしゃれなカフェの2階に、ラーニングコモンズ「TOMO」のスペースはある。開設の目的は三つ。一つ目が「課題発見、解決の手法を獲得し、学生同士が学びあうグループワークの場」だ。計120人が座れるスペースがあり、テーブルやイスは自由に動かせる。ホワイトボード代わりの壁には自由に書き込みができるようになっており、タブレットパソコンやプロジェクター、電子黒板は無料で貸し出しされる。ゼミのディスカッションやプレゼンテーションの場としても使われており、教務担当部長の三井知代教授は「教室よりも、自由に意見が出しやすいとの声も聞かれます。自分の考えをまとめ、表現する力を磨いてほしい」と話す。
「イングリッシュラウンジ」ではフィリピンにいるネーティブスピーカーの質問に即座に答える英語レッスンも
二つ目が「情報通信技術(ICT)を利用した模擬授業などによる教職志望学生の授業運営能力の向上の場」。現在、小学校などの教育現場ではICTの活用が進みつつある。こうした動きに対応できるよう、電子黒板を使った模擬授業も行えるようになっている。「教育の現場で指導に当たっている卒業生も交え、情報やスキルを共有する機会も設けたい」と文学部総合文化学科の酒井純准教授。
三つ目が「イングリッシュラウンジによる英語運用能力の強化の場」。モニター画面を通してフィリピンのネーティブスピーカーからの質問に即座に答えて英語力を磨く無料の英語のレッスン(希望学生対象、3カ月間)を行い、海外研修、留学を控えた学生や、研修、留学から戻ってきて英語を学び続けたいという学生のニーズに応える。
教員に自由に質問ができるオフィスアワーの時間では、学科を超えて学生が質問にやってくることもある。「ラーニングコモンズに行けば何かが学べるという雰囲気をつくり、学びの伝播をさらに広げていきたい」と酒井准教授は話している。
4月に開園した「親和幼稚園」。今年の卒業生4人が着任、先生として活躍中
今年4月、三田市に「神戸親和女子大学付属親和幼稚園」が開園した。「世界基準の幼児教育」を実践して地域に貢献するとともに、学生にとっても密度の濃い実習教育が受けられるようになる、と期待が集まっている。
開園に当たって、米国やカナダの付属幼稚園、小学校などを持つ大学で組織される「国際付属校園協会」に加盟。子どもの自主性を重んじる世界基準の幼児教育の情報を共有し、教育に反映させる。また、大学教員が幼稚園に出向き、最新の研究に基づいた園児指導も行う。既に音楽やダンスを専門とする教員の指導による保育が行われたほか、今後は造形などについても実践していく計画という。
実習で付属幼稚園を訪れる学生にとっても、最先端の教育に触れられる場となる。園長を務める澤田愛子教授は「付属幼稚園ならではの特長を生かした教育を行うことで、学生にも貴重な学びとなる」と話す。
親和の教育の最大の特徴は「オンキャンパス教育」と「オフキャンパス教育」の融合だ。学内の講義の学びと学外での実習、ボランティア活動などを繰り返すことで、コミュニケーション力や課題を解決する力をつけていく。
イタリア・ミラノの小学校で日本文化を紹介する親和の学生
カナダ・トロント大学の付属幼稚園・小学校やイタリア・ミラノのカトリック系幼小一貫教育校「マリア・コンソラトリーチェ校」など、現地の学校で子どもたちに日本文化を紹介する授業を行う研修に参加できるのは、親和ならではの学びだ。
また、県内30カ所の私立幼稚園、保育園と連携協定を結び、幼稚園教員や保育士志望の学生に実習の機会を提供するほか、神戸市や芦屋市、大阪府など19の教育委員会と連携協定を結び、学生が講義のない空き時間に小学校で「スクールボランティア」として研修できる機会も多く設けられている。
「先生になるなら、親和!」のキャッチフレーズを持つ神戸親和女子大。幼稚園教員採用で西日本1位(全国3位)、保育士採用でも西日本の女子大中1位、小学校教員採用で同3位(いずれも2015年3月卒業生、大学通信調べ)の実績がある。学外でのソフト、ハード両面の充実した学びの環境整備は、教員採用以外でも高い就職率につながっている。
教員採用試験のためのサポートプログラムとして、試験科目全般をカバーする「教員採用試験対策セミナー」のほか、苦手科目を克服するための「キャリアアップ科目」も用意されている。こうしたカリキュラムに加え「親和の教員、学生には『教えよう』『教わろう』とする姿勢があり『学びの共同体』としての教育的な風土が根づいている。これまで教鞭(べん)をとったどの大学にもなかった親和らしさ」と発達教育学部児童教育学科学科長の戸江茂博教授は説明。互いに切磋琢磨(せっさたくま)する学びの姿勢が教員志望以外の学生にも波及し、15年度の就職率は大学全体で98.2%に達した。
山本裕之学長
―今年創立50周年を迎えました。
1966年の開学以来、1万7,000人もの有為な人材を送り出し、現在は2学部5学科1,900人の規模の大学に発展しています。教育モットーは「ひとに学び ひとに生かす」。学内の正規カリキュラムによる学びと、実習や研修、ボランティア活動など学外での学びを融合し、繰り返すことで「人とコミュニケーションする力」「課題を解決する力」「夢をかなえる力」、すなわち「親和力」を培ってきました。グローバル社会で活躍する人材が求められる現代社会でも、この「親和力」が大切な素養になってくると考えています。
―50周年記念事業について。
新しい学びの環境を整えた「ラーニングコモンズ」が4月にオープンしました。ディスカッションやプレゼンテーション、グループワーク、模擬授業などさまざまな学習形態に対応しており、問題を解決する思考力と自分の考えを論理的に主張できる力をサポートする場です。
4月には付属親和幼稚園を三田市に開園しました。本学の知的資源を生かして、質の高い幼児教育を実践し、地域社会に貢献できればと考えています。また、教職課程科目である幼稚園の実習を同園でもできるようになったことで、より密度の濃い教育が可能になります。
―受験生にメッセージを。
現在は変化の速い時代であり、学んだ知識やスキルはすぐに、過去のものになるかもしれません。しかし、自分で考え、問題解決を目指す力は、社会を生き抜く大きな力となります。本学での学びを土台に、しなやかさと粘り強さをもって、自らの道を切り開いていってほしいと思います。創立50周年を新たな半世紀の始まりととらえ、今後も社会に貢献できる人材を輩出していきたいと考えています。
中学生のころから保育士になりたいと思い、親和の卒業生である叔母からも「良い雰囲気の大学」と聞き、進学を決めました。
保育園実習で子どもたちを集中させることができなかった反省を生かし、授業や学外活動を通じて子どもの理解に努めてきました。親和は先生との距離がとても近く、何でも聞くことができ、学びやすい環境があります。ボランティア活動の機会も多く、神戸マラソンのボランティアでは人に尽くし感謝される喜びを味わいました。今は一日でも早く、保育の仕事に就きたいという気持ちでいっぱいです。
住所 | 鈴蘭台キャンパス:神戸市北区鈴蘭台北町7-13-1 三宮サテライトキャンパス:神戸市中央区三宮町1-9-1 三宮センタープラザ9階 |
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アクセス | 鈴蘭台:神戸電鉄鈴蘭台駅徒歩約10分。三宮、三田、小野からスクールバス利用可 三宮:JR三ノ宮、阪急・阪神神戸三宮、神戸市営地下鉄三宮駅徒歩5分 |
学部(本年度定員) | 文学部(60人)、発達教育学部(355人) |
教員 | 教授46人、准教授19人、講師13人、助教2人 |
在学生 | 1,839人 |
ホームページ | https://www.kobe-shinwa.ac.jp/ |