個性を尊重し、自主自立の精神を育てる教育の伝統を育んできた甲南大。人文、社会、自然科学系にまたがる8学部14学科を持つ総合大学でありながら、1学年約2,000人という中規模サイズゆえに可能となる、学生の個性を尊重した「人物教育」に重きが置かれている。中でも、全ての学生が受けることができる「融合型グローバル教育」は「世界に通用する人物」を育てる、甲南大の建学の精神を実践する取り組みだ。
リニューアルオープンした学内国際交流基地「ポルト」。日本語禁止ゾーンが熱い
昨年9月、岡本キャンパスに完成したグローバルゾーン「Porte(ポルト)」は、外国語や日本語の使い方によって三つのゾーンに分かれている。その中で特に活気を見せているのは、外国語だけでコミュニケーションを行う「KONAN Language LOFT(コーナン・ランゲージ・ロフト)」だ。
外国人留学生のチューターが常駐しており、いつでも英語で話せる環境が整っている。留学経験などのある甲南大生もアシスタントとしてサポートしている。また、ロフトのイベント参加がオーラルコミュニケーション(1年次に全員が履修)の授業評価の一部に活用されているため、学生による自発的な参加を後押ししている。今後はドイツ語、フランス語、中国語、韓国語での取り組みも予定されている。
伊庭緑教授 国際交流プログラムを担当する学長補佐・国際言語文化センターの伊庭緑教授は「ポルトはフランス語で扉を意味します。どの学部、学科の学生も卒業後はグローバル社会での活躍が求められる時代。ポルトは全ての学生に開放された学内留学の空間です。ロフトだけでも毎月1,000人の学生が利用しています」と話す。
文学部人間科学科4年
石原誉大さん
文学部人間科学科4年の石原誉大(たかひろ)さんはグローバルゾーン「ポルト」ができる前から、留学生と交流できる場所を利用してきた一人だ。「入学後に語学プログラムが充実していることを知り、留学したいという気持ちが芽生え、留学生と積極的に交流するようになりました」という。
留学生に積極的に話しかけ、伝えたいことを英語でどう表現すればいいのかを繰り返し聞き、メモを取った。
TOEFLの授業では実践的な読み書きを徹底的に学び、留学生との会話では生きた英語を習得した。留学の機会は利用できなかったが「気が付けばネーティブと日常会話ができるようになっていた」という。
「BONSAI」の魅力を英語で伝えるワークショップを企画した
留学生とコミュニケーションをとるようになって、以前から興味のあった日本の伝統的文化「盆栽」のことを彼らに伝えたくなった。その精神性も含めて、どう表現すれば留学生に伝わるかを考えるようになった。ポルトでは石原さんもアシスタントを務め「BONSAI」について英語のワークショップを企画したり、プレゼンテーションを行ったりしている。インターンに参加した老舗の盆栽会社への就職が決まっている。
「日本への外国人観光客も増加する中、盆栽への関心はますます高まるはず。将来は世界に盆栽の魅力を発信していきたい」と話す。
努力した学生を学長が表彰。「グローバルサーティフィケート」は学びのモチベーション
「ホップ、ステップ、ジャンプ」と段階を踏んで留学までの道をサポートしているのも甲南大の特長だ。
「ホップ」では、留学生と交流できるグローバルゾーン「ポルト」のほか、来日前の留学生と連絡を取り合って不安や悩みを解消する「トモダチ・プログラム」や、留学生とペアで言葉や文化を教えあう「ランゲージパートナー」など「学内留学」プログラムも多彩だ。
「ステップ」では、国際理解の入門編ともいえる短期海外研修「エリアスタディーズ」や、春・夏期休暇期間を利用した協定校での「海外語学講座」などのプログラムが用意されている。
「ジャンプ」では学生の目的に合わせた半年~1年間の留学プログラムが準備されている。米国、欧州、豪州、アジアの協定校32校のほか、本年度からはオックスフォード大などを含む日本スタディー・アブロード・ファウンデーション(JSAF)の認定大学約100校が留学先に加わり、語学と専門教育科目を学ぶ選択肢が大幅に広がった。
学内のサポート体制も、外国語教育を支援する「国際言語文化センター」と、留学をサポートする「国際交流センター」の2センターが協力することで、国際教育を充実させている。
ホップ、ステップ、ジャンプの各プログラムでの学習機会をポイント化し、ポイントの高かった学生を1~3級で評価する「グローバルサーティフィケート」も始まった。前年度に1級を取得した3人には学長表彰が行われ、学びのモチベーションになっている。
「各学部で身に付ける『専門力』、豊富な外国語プログラムやホップ・ステップ・ジャンプの体験によって修得する『国際力』、グローバルゾーンで培われる自ら考え実践する『行動力』。この三つの力を身に付けるのが『融合型グローバル教育』です。社会に出て世界のどこに行こうとも、文化の異なる人を理解し、協働できるプロフェッショナルになってほしいですね」と伊庭教授は意気込みを語る。
長坂悦敬学長
―甲南大らしさを表現すると。
創立者である平生釟三郎(ひらおはちさぶろう)は「人格の修養と健康の増進を重んじ、個性を尊重して各人の天賦(てんぷ)の特性を啓発する」を教育理念に掲げました。分かりやすく言い換えると「個性を発揮して自らのキャリアを切り開く力」「人をつなげ、人とつながる力」「これらを健全な志をもって朗らかに実践する力」を養うことです。「人間の魂が人間をつくる」という平生が残した言葉を肝に銘じ「人物教育の甲南」であり続けたいと思います。
―どのように「人物教育」が行われるのでしょうか。
キーワードは「融合」です。例えば、本学は国際系の学部を置いていません。これは学部を問わず、全ての学生にグローバル教育が必要と考えるからです。全学生に開かれ、いつでも留学生とコミュニケーションできる学内留学スペース「グローバルゾーン」はその象徴です。また、地域との連携も融合の一つです。大学と地域を結ぶ窓口として地域連携センターを設け、NPOや商店街、自治体などとのつながりを深めています。大学が地域に貢献するとともに、地域と一緒に学生を育てていくことを目指しています。世界と日本、山と海が融合する神戸。神戸とともに歩んできた大学であり、人文、社会、自然科学の分野にまたがるミディアムサイズの総合大学だからこそこうしたことができるのです。
―3年後には学園創立100周年を迎えます。
2年前、甲南大の魅力を表現する言葉を全学に募り、選ばれたのが「KONAN INFINITY」、つまりは無限大の可能性です。100周年の節目には「人物教育のクオリティーリーダー」たる大学になることを目指しています。甲南大学で学んだ全ての学生が、無限の可能性を持つ人材として、羽ばたいてほしいと願っています。
山が間近に迫り、緑に囲まれたキャンパスの環境にあこがれ、甲南大を選びました。
キャンパスの雰囲気そのままに学生も明るく、すぐに友人ができました。学部、学科を超えた学びの場が多く用意され、好奇心を刺激してくれます。広報誌のサークルに入ったことがきっかけで、神戸新聞の記事を書く機会にも恵まれました。学内で好きな場所は図書館。約107万冊の蔵書があり、調べ、まとめる力が養われました。
甲南大は好きなことが見つけられる大学です。今は本の編集者になる目標に向け、就職活動を続けています。
住所 | 岡本キャンパス:神戸市東灘区岡本8-9-1
西宮キャンパス:西宮市高松町8-33 ポートアイランドキャンパス:神戸市中央区港島南町7-1-20 |
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アクセス | 岡本:阪急神戸線岡本駅徒歩10分
西宮:阪急西宮北口駅徒歩3分 ポートアイランド:ポートライナー京コンピュータ前駅徒歩3分 |
学部(本年度定員) | 文学部(400人)、理工学部(155人)、経済学部(345人)、法学部(345人)、経営学部(345人)、知能情報学部(120人)、マネジメント創造学部(180人)、フロンティアサイエンス学部(45人) |
教員 | 教授189人、准教授59人、講師27人、助教5人 |
在学生 | 9,029人(男子5,412人、女子3,617人) |
ホームページ | http://www.konan‐u.ac.jp/ |