お笑い芸人(神戸学院大学卒業)
「NON STYLE」
 井上裕介さんに聞く

夢に向かって全力ポジティブ 全ての道のりは自分に返る

▽いのうえ・ゆうすけ
1980年、大阪市生まれ。大阪府立東淀川高を経て神戸学院大学経済学部に入学。在学中の2000年に漫才コンビ「NON STYLE(ノン・スタイル)」を結成し、吉本興業のオーディションに合格。2005年に上方お笑い大賞最優秀新人賞、08年にM-1グランプリ優勝。著書に「スーパー・ボジティヴ・シンキング―日本一嫌われている芸能人が毎日笑顔でいる理由」など。

お笑い芸人の井上裕介さん(36)は漫才コンビ「NON STYLE(ノン・スタイル)」のツッコミ担当。漫才コンテスト「M-1グランプリ」で優勝したほか、最近は短文投稿サイト「ツイッター」などで披露する〝前向き発言〟で女子中高生らの支持を集めるなど、独特の存在感を放っている。神戸学院大(神戸市西区)に在学中、相方の石田明さんとコンビを結成。「健全に楽しい学生生活を追求した」経験が、現在の芸人人生につながっているという。

三宮で路上漫才し芸人へ

―神戸学院大を選んだ理由は。

理数系の偏差値の方が高かったが「理数系は女子学生が少ない」という理由で、男女の比率が同じぐらいの文系大学を選びました。世の中、男と女はほぼ半々。だから男女同じぐらいの割合で学ぶ環境が、僕にとって楽しい学生生活を送るための条件だった。そういう理由で大学を選ぶ人間もいてます。

―実際に楽しい学生生活が送れた?

とても楽しめました。バンド活動がやりたかったのでフォークソング部に入部し、学園祭ではステージでギターを弾きながら歌ったことも。バレーボールやフットサル、ボーリングなどを団体で楽しむ「愛球愛好会」というサークルにも所属していました。30~40人という大人数で活動をしようとするとき、リーダーシップを取る人、それを支える人、などと役割分担をしないとうまくいかない。今、バラエティー番組などで司会、ひな壇、ゲストなどの役割をわきまえて物事を進める意識を、サークル活動で養えたと思います。1年生で残った男子が僕だけで、女子の先輩方から弟のようにかわいがってもらった経験も大きかった。男兄弟の兄としては新鮮で心地よかったし、部屋のインテリアや美容に気を使って女子力が高いと今言われている部分にもつながっているかもしれない。

―在学中にコンビを結成。

自分よりギターが上手な人が多くいる現実を知り、バンドでプロになる夢はあきらめたが、ステージに立ってスポットライトを浴びたいという思いは残っていました。それで高校時代から引き続き仲の良かった相方と、3年の時に阪急三宮の駅前で漫才の路上ライブをしました。2人の出身地の大阪ではなく三宮を選んだのは、知らない人ばかりなので漫才でスベっても大丈夫と思ったから。2000年といえば阪神・淡路大震災後、復興の道筋が見え出して街に活気が出始めたころ。神戸で刊行する雑誌に取り上げられ、復興に向かう人々に焦点を当てていた写真家・立木義浩さんに撮影してもらったこともありました。半年ほど同じ場所で週1回漫才を続け、そこそこの数のお客さんが集まってくれて、手応えみたいなものを感じ、オーディションを受けて吉本興業に入りました。

―受験を控えた高校生に伝えたいことは。

大学に受かる、受からないで先の人生が決まってしまうわけではない。「大学に行かなくても入れた世界」で仕事をしている人間だから、自信を持って言えます。自分の経験から、大学には楽しいことが待っているけど「大学に行かなくても楽しいことは見つけられる」ということも。僕の進学動機は不純かもしれませんが、一生懸命遊ぶことで、芸人という道に進むことができた。全ての道のりは後の自分に返ってくることを覚えておいてほしい。
今の高校生は、好きな子にはLINEで簡単に告白できるし、行ったことのない店の情報もインターネットですぐ調べられる。いい意味でも悪い意味でもハードルが下がり、大人にならなければ手に入らないものが減ってしまった。もちろん危惧する部分はあるけど、新しい世代は思いもよらないような発明をし、楽しみを生み出したりしてくれるはず。その楽しみを享受させてもらおうと期待しています。

特集大学

特別インタビュー