流通科学大学は商学部、経済学部、人間社会学部の3学部7学科から成る。昨年度は、コロナ対策でいち早くオンライン授業を導入した。入学から卒業まで学生を総合的に支援する教育プログラム「夢の種プロジェクト」は7年目を迎え、将来の夢を探し、育て、咲かせる取り組みは一巡し、優秀な人材輩出に成果を上げている。ビジネス界に強い大学として、本年度は起業・事業承継コースを新設し、社会ニーズに応えた動きを加速させている。
コンテスト形式の企業課題解決企画「神戸学生イノベーターズ・グランプリ」で準優勝を果たした観光学科のゼミ学生たち。キッチンカーで作りたてワッフルを提供する提案を行った
社会共創プログラムは、学生が企業や地域、自治体と連携し課題解決を図る取り組みだ。学生たちは昨年度も、コロナ禍という困難な状況の中で好成績を収めてきた。
いくつかを紹介すると―。流科大主催の「神戸学生イノベーターズ・グランプリ」(通称・I―1グランプリ、他大学、高校含む32チーム180人参加)では、t―KZ(観光学科ゼミ)が神戸市内にキッチンカーを常設・巡回させ、作りたてワッフルを提供する提案で、準優勝した。
「第1回マーケティング研究会」(企画=CCCマーケティング総合研究所)には6大学8ゼミと4企業が参加、マーケティング学科・羽藤ゼミが優勝した。「若者が心から欲しいと思える自動車サービス・プロダクト」という日産自動車の課題に取り組んだ。
辻中拓摩さん(3年)は「ディーラーから話を聞いたり、アンケートをしたりするなどして、車離れしている若者に車を購入してもらう企画を提案した」と振り返る。「企業の方から『調査に基づいた、しっかりした内容』と評価をいただき、うれしかった」という。
生涯スポーツの国際大会「ワールドマスターズゲーム(WMG)2021関西」の知名度アップを図る「インターカレッジ・コンペティション2020」には8大学14チームが参加し、人間健康学科・山口ゼミが準優勝した。
「神戸の海を活用したビジネスアイデア」をテーマにしたコンテスト(9チーム参加)では観光学科・辻本ゼミが優秀賞を受賞した。
本年度からスタートした英会話レッスン「English cafe」。ネーティブの先生と一緒に音楽やゲームなどで楽しみ、英語力を身につけていく
留学生に勧めたい私立大学として、日本留学アワーズを3年連続で受賞している流科大には中国、ベトナム、韓国など19の国と地域の約600人の留学生が在学している。世界で活躍する人材育成を目指し、交換留学など海外研修・留学制度も充実しており、海外への留学が困難な現在の状況下でも、日常の国際交流を通し、グローバルな感覚を育むことができる。
国際色豊かなキャンパスライフの拠点の一つが、「国際交流施設 学生寮『RYUTOPIA(りゅうとぴあ)』」だ。2018年、キャンパス内に開設され、現在、10の国の留学生と日本人学生計158人が共同生活を送っている。
1階の国際交流スペースでは、さまざまな交流プログラムが行われる。野口紗恵子さん(観光学科2年)は「同じユニットに韓国、中国、カンボジア出身の留学生がいます。自国の料理を作り合ったり、休日に一緒に出掛けたり、とても仲がいいんですよ」と話す。
本年度からスタートした定期的に開かれる英会話レッスン「English cafe」は、ネーティブの先生らと学生たちが音楽を聴いたり、ゲームやクイズを楽しんだりしながら、自然に英会話力が身に付く。
また、独自のカリキュラムとして、英語と中国語を徹底して習得する「グローバル・スタディーズ・プログラム」(GSP)も人気だ。
就職活動を応援するために多彩なサポートブログラムを用意。中には面接対策の「着こなし講座・メーキャップセミナー」なども
キャリアアップセミナーは、各業界の第一線で活躍するビジネスパーソンを講師に迎え、業界の現状や基礎知識を短期集中で学ぶ。スペシャリスト育成を目的とした独自のプログラムだ。
実施しているコースはマーケティング、リテール(一般小売り)、ホテル・ブライダルなど。このうち、ホテル・ブライダルコースで学んだ学生たちは昨年8月23日、公募で選ばれたカップルに、流科大での「キャンパス婚」という思い出をプロデュースした。
リーダーを務めた岡部奈鶴女さん(観光学科4年)は「ウエディングプランナーの仕事の楽しさと大変さを実感した。本番を終えた後は達成感でいっぱいになった」と話す。ブライダル業界への理解を深める、かけがえのない体験となったに違いない。
ホテル・ブライダルコースの学生らが、公募で選ばれたカップルに「キャンパス婚」をプロデュース。打ち合わせから結婚式の企画進行まですべて学生が行った
流科大の強みは、ゼミの担当教員と就職部が連携し、一人一人の夢の実現に何が必要かを一緒に考え、進路決定まで「伴走」することだろう。同大の大きな特色と言っていい。
昨年度は、地元企業との強いつながりを生かし、約150社の学内企業説明会を実施した。コロナ禍で多くの企業がオンラインでの説明会や面接に切り替えていく中、学生がスムーズに対応できるよう支援してきた。
実際に就職率が高いという理由で流科大を志望する学生も少なくない。昨年度の日本人学生の就職率は97.5%に上った。
多様な資格取得や試験へのサポート体制も整っている。
国家公務員や地方公務員を目指す学生向けの「公務員試験対策プログラム」は、正課カリキュラムと連動し、卒業単位として認定されている。正課外でも同様の対策講座が充実している。
特筆したいのは、経済学部の演習だ。国や県、市町村の一般職、消防士、警察官などを目指す学生が多く見込まれるといい、初年次から「公務員特別演習」で、基礎知識や資質、技能を習得できる。
カリキュラム自体が公務員試験合格を目指すことを想定して組まれている数少ない大学といえそうだ。
藤井啓吾学長
―コロナ禍が続きます。
困難な時が続きますが、以前から通信環境が整っていたこともあり、昨年度はオンラインによる授業対応がスムーズに進みました。本年度は、対面授業を希望する学生には全ての科目を対面で受講できるようにしつつ、並行してオンラインでも受けられるようにしています。今後の課題として、授業内容や到達目標によって対面とオンラインを使い分ける、ウィズコロナ時代に適応したカリキュラム・マネジメントにも取り組みます。オンライン化の進展で、学生にはより一層の自己管理能力が求められます。社会の変化に対応した生活習慣を身に付けてほしいと願っています。
―「夢の種プロジェクト」が定着してきました。
「なりたい自分」の「夢の種」を探し、育て、咲かせるという、流科大独自の教育プログラムです。初年次は「なりたい自分発見カリキュラム」に取り組み、2年次からは、企業や社会と連携する「社会共創プログラム」などの「考える学習型授業」や、国際交流活動などを通じ、学部・学科ごとに専門性を身に付けます。さらに夢の実現に向け、ゼミの担当教員と就職部が、卒業まで学生をサポートします。自分の夢は何か。それを自分の力で考え、見つける。正解が用意されていない、アフターコロナ時代を生き抜く本物の力を育てます。
―学長からメッセージを。
本年度から実践的な学びを通じ、起業や事業承継ができる人材を育てる「起業・事業承継コース」を設けました。企業内でも、起業を担える人材が求められる時代です。起業マインドや事業意欲を持った学生、それに刺激を受け、自らも踏み出す勇気を持った学生を総力挙げて応援します。
住所 | 神戸市西区学園西町3の1 |
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アクセス | 神戸市営地下鉄西神・山手線学園都市駅徒歩5分 |
学部(本年度定員) | 商学部(450人=マーケティング学科200人、経営学科250人)、経済学部(200人=経済学科150人、経済情報学科50人)、人間社会学部(250人=人間社会学科90人、観光学科70人、人間健康学科90人) |
教員 | 教授56人、准教授34人、講師12人 |
在学生 | 3888人(5月1日現在) |
ホームページ | https://www.umds.ac.jp/ |