芸術工学で課題解決へ
神戸芸術工科大学

芸術工学で課題解決へ

 神戸芸術工科大学では、神戸市西区の緑あふれるキャンパス内で、ものづくりや表現に関わる7学科25コースの学生がともに学んでおり、1989年の開学以来、約9千人の卒業生を送り出している。専門領域にとどまることなく広く社会を総合的に理解する教育を重視し、デザインやアートを通して現代社会が抱える課題を解決できる人材の養成を目指している。

地域と連携、実践力養う

明石城400周年事業に学生が参加

2019年、明石城築城400周年記念事業で、神戸芸工大学生有志が参加し制作に関わった「明石城光のアート」と「明石城キャンドルナイト」  和と洋、山と海、自然と街が共存する神戸を舞台に、地域や自治体、企業と連携し、社会の課題をデザインとアートによって解決する取り組みを通じて、キャンパスだけでは得られない、社会で必要とされる実践力を学ぶことができる。
 2019年に明石城築城400周年記念事業として開催された「光の明石城」では、「明石城光のアート」と「明石城キャンドルナイト」に学生有志が学科の枠を超えて関わった。「明石城光のアート」では、東芝生広場を明石海峡に見立て、明石海峡大橋をモチーフにしたメインオブジェを制作。また、サブオブジェは、明石海峡に生息する海の生物や船をモチーフにして、メインオブジェの周囲に配置した。これらの作品には3300本のペットボトルを使い、荷造り用カラーテープをペットボトルに詰め込み、作品を効果的に演出した。
王子動物園記念ロゴ制作今年開園70周年を迎える王子動物園の記念ロゴを神戸芸工大の学生らがデザインを行い、最終4案から来園者投票で「Ojizooの仲間たち」に決まった 「明石城キャンドルナイト」では、オブジェの周りに海峡の波や潮流をイメージして4千本のキャンドルを並べて点灯。オブジェとキャンドルの光が融合し、幻想的な空間が現れた。併せて、来場した子どもたちに「光でつなぐ地域と未来」をテーマに「お父さん、お母さんに感謝の気持ちを伝えるメッセージやイラスト」「将来の夢や希望を願って」を描いた紙をキャンドルホルダーに巻きつけて点灯し、子どもたちに地域と家族、そして未来を思うきっかけをつくりだした。 16年からは、神戸中心部の三宮センター街を活性化するため、商店街上層のデッキに憩いの空間を制作する「三F(サンエフ)ストリート」プロジェクトに毎年取り組んでいる。三Fの「三」は三宮の「三」、「F」は「Forest For the Future」の「F」を意味している。「森で動物たちが集い、くつろぎ、にぎわう場所に、また、神戸の未来につながる出来事がここから生まれるように」という思いを込めている。昨年は、学生有志が神戸港のガントリークレーンと木をモチーフにした木製のオブジェ「ganTrees(ガンツリーズ)」を制作。訪れた人が神戸らしさを体感し、買い物の合間などにくつろげる空間を演出している。

三宮センター街プロジェクトも

三宮センター街で毎年取り組んでいる、上層デッキに憩いの空間を制作する「三F(サンエフ)ストリート」プロジェクト また、再開発が進むJR三ノ宮駅前のスペース活用に向け、JR西日本から三ノ宮駅ターミナルビル撤去工事壁のデザイン制作について依頼があり、ビジュアルデザイン学科の学生がイラストレーションとデザインを担当した。季節ごとに4回に分け、毎回異なる学生が装飾を行った。歩行中の視点移動を生かした動的表現で空間を彩り、殺伐とした空間になりがちな現場を華やかに彩り、歩く人に安心感と楽しみを提供した。

社会に貢献できるクリエーター養成

環境デザインなど7学科25コース 一線で活躍のプロが指導

映像表現学科 神戸芸工大では、社会の課題を解決し、人の生活や心を豊かにするために時代が必要とするものを生み出すための学びを重視。環境デザイン、プロダクト・インテリアデザイン、ビジュアルデザイン、映像表現、まんが表現、ファッションデザイン、アート・クラフトの7学科25コースに分かれた専門領域での学びを通じ、社会に貢献できるデザイナー、アーティスト、クリエーターの養成を目指している。
 芸術工学は、人間の社会と歴史を基礎に、デザイン、アート、サイエンスの学術活動を融合して表現する学問と定義。基礎教育では、芸術、デザインについて横断的に幅広く学ぶだけでなく、歴史、文化、社会など表現に必要な総合的な知識を身に付け、多様な価値を理解し、倫理観と判断力を備えた豊かな人間性を育む。その上で専門の学びへと進み、それぞれの学科で自分の適性に合ったコースを選択(映像表現学科のみ入学時からコースを決定)。専門分野の技術や技法を学び、それを外部に発信する機会も多く設けている。
ビジュアルデザイン学科 各学科・コースでは、その世界の一線で活躍する現役のプロフェッショナルの教員から直接指導を受けられるのも特長だ。例えば、まんが表現学科では、しりあがり寿教授のもと、お笑い芸人のコントを見てまんが化する授業がある。映像表現学科では映画「パンク侍、斬られて候」(綾野剛さん、北川景子さん主演)などで知られる石井岳龍監督が教授を務めている。
 卒業生は、建築家、自動車のデザイナー、テレビの番組制作者、グラフィックデザイナー、まんが家やファッションデザイナー、美術教員をはじめ、企業や自治体などで多岐にわたって活躍しているほか、フリーのクリエーターとして独立している人も多い。

制作に集中できる設備環境

環境デザイン学科スタジオ。1人1台の製図台や、建築材料の強度を調べられる実験室などがある 緑に溶け込むようにしてデザインされたキャンパスは阪神甲子園球場約3個分の広さを誇る。各コースには、プロフェッショナルが現場で使う施設や設備が充実し、学科の特色に応じ集中して制作に打ち込める環境が用意されている。
環境デザイン学科では、2年次より1人1台製図台が用意されるほか、ラボラトリーには建築材料の強度を調べることができる構造実験室を備えている。ファッションデザイン学科では工業用ミシンや染色、織、ニット、プリントなどプロが使う専門機器を設置し、まんが表現学科では1人1台ずつ液晶タブレットが与えられ、情報図書館ではデザイン・アートの専門技術書や映像資料を自由に閲覧し、創作に生かすことができる。また、アート・クラフト学科では工芸の技術を学ぶための専門機器と巨大なアトリエスペースを構えている。

学長に聞く

創造的人材、育成目指す

齊木崇人学長
―大学の使命は。

 本学は、神戸市と神戸の産業界からの「神戸にデザイン大学を」という要請に応えて、1989年に開学した大学です。現在では、芸術工学部に7学科、大学院に修士と博士課程を擁し、約1700名の学生が在籍しています。従来の人文科学・自然科学・社会科学などの知識だけでは捉えきれない「生活」「環境」「情報」の分野で、芸術と科学を融合したアート、デザイン、メディアの表現活動を通じて、新しい社会課題を発見し、解決に導く「創造的な人材の育成」を目指しています。

―カリキュラムの特徴は。

 入学後は、基礎学力やICT(情報通信技術)の習得に加えて、7学科と25の専門コースを概観し、「芸術工学」がいかに人々の未来を考える幅広い学問であり、社会を豊かで美しいものに変えていくことができるかを学びます。そして、第一線で活躍する教授陣の指導の下、高度な表現技術を身に付け、自らの専門性を深めていきます。また、地域社会で必要な実践力を養うために、さまざまな活性化プロジェクトにも参加します。卒業時には、4年間の学習成果を卒業制作展で発表する機会があり、「自分が成長したことを実感する」ことができます。

―どのような学生を求めていますか。

 私は学生に、自分の好きなものがあるか尋ねています。「自分の好きなもの」で自分を表現したい人、社会の課題に鋭敏に反応できる人、心広く他者とコミュニケーションできる人を求めています。ポストコロナ時代の変化を柔軟に受け入れ、ゆとりあるキャンパス環境のなかで、多様な知識や豊かな表現力を磨き、自分の道を切り開く場所、それが、神戸芸術工科大学です。

在学生からのメッセージ

大切なのは自由な表現

芸術工学部 アートクラフト学科美術教育コース4年 栗原梨緒さん

 中学の美術教師を目指すために大学選びをしたのですが、はじめに幅広い学びを体験した後にコースを選択できる点に神戸芸工大の魅力を感じ、決めました。1年生の基礎教育の段階で絵画やフィギュアづくり、ガラス加工や陶芸技法など、さまざまな素材や技法を体験したことは今後に役立つことと思います。また、他学科の学生と一緒に「明石城光のアートプロジェクト」に参加したことで刺激を受け、アートが地域とつながっていることを学べました。他の学生に比べてきれいに、上手に描けない自分に落ち込むこともありましたが、先生から、表現する上で一番大切なことは自分らしさを出すことだと教わり、表現する楽しさが広がりました。美術教師になることができたら、子どもたちにも自由に表現することの大切さを伝えていきたいです。

掲示板

神戸芸術工科大学 社会人向けプログラム

 本学は、社会人キャリア・アッププログラム(履修証明プログラム)において、社会人の方を対象とした学習プログラムを開講しています。主にクラフト分野の実習系正規科目を中心に構成されている「ガラスコース・陶芸コース」から選択でき、120時間以上の授業で組み立てられたプログラムを、半年で修得します。
 授業は、学生とともに受講していただきます。高等学校卒業者およびこれと同等以上の学力がある方で、定年退職後のキャリア形成を考える方、クラフトの技術取得によって、職業選択の幅をより広げたい方をお待ちしております。
 2021年度後期募集は、6月中に大学WEBサイト(www.kobe‐du.ac.jp)で案内予定です。

大学概要

住所 神戸市西区学園西町8の1の1
アクセス JR三ノ宮駅、阪急電鉄・阪神電鉄神戸三宮駅より、神戸市営地下鉄(西神・山手線)に乗り換え学園都市駅下車、徒歩6分
学部(本年度定員) 芸術工学部(環境デザイン学科70人、プロダクト・インテリアデザイン学科70人、ビジュアルデザイン学科80人、映像表現学科45人、まんが表現学科45人、ファッションデザイン学科50人、アート・クラフト学科40人)
教員 教授42人、准教授28人、助教11人、実習助手18人
在学生 1620人(5月1日現在)
ホームページ https://www.kobe-du.ac.jp/

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