「知」と「人」枠超え共創
神戸大学

「知」と「人」枠超え共創

 国際港湾都市に位置する神戸大学は、「人文・人間科学系」、「社会科学系」、「自然科学系」、「生命・医学系」の4大学術系列の下に10学部15研究科を持つ国立総合大学。新ビジョンを「知と人を創る異分野共創研究教育グローバル拠点」とし、「hinotori™ サージカルロボットシステム(以下、ヒノトリ)」のプロジェクトや「海神(かいじん)プロジェクト」をはじめとした先端教育研究と異分野共創により、世界に誇れる成果で社会の発展に貢献するための改革を進める。

産官学連携して開発・完成 国産初の手術支援ロボット
hinotori™(ヒノトリ) 改良、応用併せ人材を育成

昨年12月、「ヒノトリ」使用1例目の前立腺がん内視鏡手術(左端は、操作する藤澤学長)  先端的外科医療における高度医療機器開発の重要性は高いが、現状は多くを海外からの高額な輸入品に頼っている。医療費削減が求められ、国産の医療機器開発が待望される中、神戸大学は産業界と連携して神戸・ポートアイランドの神戸医療産業都市に医療機器の研究開発拠点を設置。注目を集めるのが、国産初の手術支援ロボット「ヒノトリ」の取り組みだ。異分野共創による卓越した先端研究推進と、社会実装に向けた研究成果還元を目指す神戸大学では、ヒノトリの臨床応用や遠隔手術のシステム確立を進める一方、教育面ではヒノトリのロールモデルを医療の未来を支える人材育成につなげる。
 ヒノトリは神戸大学と医療用ロボットメーカー「メディカロイド」(神戸市)が開発した神戸発の手術支援ロボットだ。支援ロボの世界市場は米国製「ダヴィンチ」の独壇場で、神戸大学も2010年から導入したが、1台3億円以上の本体コストに加えて維持費も高額。承認審査が厳しい高度医療機器は開発リスクが高いが、メディカロイドとともに開発を目指しイノベーションを起こすことを決断した。
 15年から試作機が年1回ペースでつくられ、藤澤正人学長(当時は医学研究科長)ら神戸大学の医師により医療現場の声を反映。19年には神戸市・産業界と提案した「神戸未来医療構想」が国の事業に採択され、神戸医療産業都市に「リサーチホスピタル」として設けた医学部付属病院国際がん医療・研究センター(ICCRC)での開発がさらに加速した。生身の人間が相手だけに着実に改良を重ね、動きが繊細な国産ならではの産業ロボがようやく完成。臨床研究が先行していた神戸医療産業都市で、初めての大型医療機器誕生となった。
 20年8月に薬事承認され、ヒノトリを使用した内視鏡手術を同年12月にスタート。1例目の手術はICCRCで実施し、藤澤学長が内視鏡の立体映像を見ながら操作した。人間の手首より可動範囲がはるかに広く、手ぶれもない支援ロボを手術の大半使用し、前立腺がん患者の前立腺全摘手術は問題なく成功。今後はロボット支援手術を普及させながら、ICCRC内に開設したトレーニングセンターで医師の操作習熟を図っていく。

5G活用し遠隔操作実験

医療機器開発と人材育成を目指して

国産初の手術支援ロボット「ヒノトリ」  ナビゲーションシステムの開発も始まった。4月に商用の第5世代(5G)移動通信システムを活用して、ヒノトリの遠隔操作実験を開始。ICCRC内の実証実験施設「プレシジョン・テレサージェリー(遠隔手術)センター」で離れた病院間での実用化、遠隔指導の確立やグローバル展開も目指している。そのほか、予後予測モデル開発による支援ロボの先端化や部分的自動化を目指し、体内溶解性の金属を用いたフューチャーデバイス開発にも取り組んでいる。
 こうした医療機器の研究開発では、医療現場に精通しながら先端工学技術の知識も持った融合人材が必要となる。海外からもトップ人材を招いて世界レベルの卓越研究と産学共創教育を行い、先端的医療機器開発において能力が発揮できる人材育成を目指す。また、学生が医療従事者、研究者、企業人らと医療機器の開発や実証ができるように、ICCRC内にメディカルデバイス工房「未来医工学研究開発センター」も設けた。
 神戸大学の取り組みが、神戸を最先端の医療機器開発拠点へと導く。藤澤学長は「長い時間をかけ苦労して生み出されたヒノトリのロールモデルを凝縮して、次世代に伝えることが重要。研究・開発面と並行して教育面の人材育成を図りたい」と話している。

海神プロジェクト

海洋立国のリーダー輩出へ 新船「海神丸」 来年度から運用

イルカをイメージした流線形のフォルムが特徴の新造練習船「海神丸」(イメージ図)。2022年度からの運用を予定  船舶を持ち、海洋立国日本をけん引するグローバルリーダーの輩出を目指す神戸大学は、「海の神戸」にちなんだ「海神(かいじん)プロジェクト」を進めている。2021年4月に新学部「海洋政策科学部」を設置し、22年度からは最新の探査機能を備えた新船の運用も始める。
 主な施策の一つが「海洋政策科学部」のスタート。03年に神戸商船大学との統合で発足した海事科学部を発展的に改組し、今年4月に1期生が入学した。海と人間の共生に向けた基本概念を基盤に、国際海洋社会を先導する「海のグローバルリーダー」、海洋探査・開発・利用などを専門とする「海のエキスパート」、船長や機関長のほか経営にも携わる「神大海技士」を育成。入学者選抜の募集区分は「文系科目重視」と「理系科目重視」の二つある。

「海神プロジェクト」のイメージキャラクター、手塚治虫氏の名作「海のトリトン」©手塚プロダクション プロジェクトの目玉は新船の建造。30年以上活躍した深江丸に代わる「海神丸」はイルカをモチーフにした流線形のフォルムが特徴。10月に進水式、22年度からの運用を予定している。実習や住環境が充実した船内で最先端装置を用いて「神大海技士」を育成するのはもちろん、世界の研究者や官公庁、企業との連携研究、災害時の支援や「海への興味」を高めてもらう社会貢献なども担う。
海戦略のもう一つの取り組みが、19年に設立した「海共生(うみともいき)研究アライアンス」。「海と人間の共生」をテーマに掲げるネットワーク型未来研究拠点だ。さまざまな学部の領域を融合し、巨大な地震や噴火の発生予測に役立つ観測手法を開発するなど、最先端の海洋関連研究に加え、海洋立国へ向けた政策提言などにも取り組む。

学長に聞く

多様性、国際性育てる

藤澤正人学長
―30年ぶりに卒業生が学長就任。新しいビジョンは。

 神戸大学は「学理と実際の調和」を建学理念に「真摯(しんし)・自由・協働」の精神の下、学問の継承と発展に貢献してきました。この伝統を継承し、10学部15研究科が一丸となって学内外との連携を深め、「『知』と『人』を創る異分野共創研究教育グローバル拠点を目指す」をビジョンに掲げました。傑出した知を生かし、社会に貢献できる産官学共創研究・教育を推進しており、私が開発に携わった国産初の手術支援ロボット「ヒノトリ」はそのロールモデル。苦労して得た国産医療機器の開発の叡智(えいち)を、次世代の人材育成にも生かしていく考えです。

―これからの神戸大学をどう考えるか。

 学内の潜在的な教育研究を活性化させ、異分野共創によりイノベーションを創出し社会実装へ。そこで得た外部資金で大学の教育研究を高めていく。そんな循環型の「イノベーションエコシステム」の構築が大学運営力の強化に必要と考えています。この大学を卒業し、経歴の大半を過ごした私にとって、「神戸大学で学んでよかった」と自信を持って巣立ってもらえる学びやにすることは何より大事です。

―受験生にメッセージを。

 教育研究成果を地元に還元し、地域を活性化する取り組みは、神戸市の人口減少の歯止めにつなげる意味でも重要です。神戸大学の卒業生が地元で活躍するのが理想的。母校の教壇に立ち、この大学を支えてくれる人も必要です。自分自身で限界をつくらず、目標は高く持ち、潜在能力を開花させてほしい。一人一人に寄り添って光る原石を磨き、多様性や国際性を備えた次世代を担う優秀な人材を育てていきたいと考えます。

在学生からのメッセージ

広がる交友、経験の場

文学部 人文学科3年 正中麻侑生さん

  幼い頃から興味があった日本史学を専修し、歴史学では「いかに意義深い問題提起ができるか」が大切なことを学んでいます。学生広報チームに所属し、神大生や卒業生に取材して大学の魅力を発信しています。この学びや経験を生かして、将来はジャーナリズムの世界で調査報道に関わることができたらと考えています。
 在学して感じるのは、語学カリキュラムの充実度の高さ。1年次は国際会議の雰囲気を模擬的に味わいながら、英語でポスターセッションをするという有意義な体験を通じて自信を得ました。学部の枠を超えた授業等、他学部生と共に学ぶ機会もあります。理系の友人とも交流し、新たな視点に気付くことも多いです。コロナ禍の今、オンラインで語り合うことでかけがえのない存在だと実感しています。

掲示板

社会人向け講座や催し

 神戸大学では、地域社会への貢献という使命から、大学における教育および研究の成果を広く社会に開放し、社会人の教養を高め、文化の向上に資するため、公開講座や各種イベント等を開催しています。
 公開講座では、人文・社会科学、自然科学、生命・医学など、さまざまな分野の多岐にわたるテーマを、本学の教員を中心とした多彩な講師の方々にお話しいただきます。
 新型コロナウイルス感染症の影響等により、日程が変更または中止になる可能性があります。また、申し込みを希望される場合は、既に受付を終了している場合がありますのでご注意ください。詳細はホームページにてご確認ください。

大学概要

住所 六甲台=神戸市灘区六甲台町1の1
楠=神戸市中央区楠町7の5の1
名谷=神戸市須磨区友が丘7の10の2
深江=神戸市東灘区深江南町5の1の1
アクセス 六甲台=阪急電鉄六甲駅、JR六甲道駅、阪神電鉄御影駅から市バス36系統「鶴甲団地」行き
学部(本年度定員) 文学部(100人)、国際人間科学部(370人)、法学部(180人)、経済学部(270人)、経営学部(260人)、理学部(153人)、医学部(272人=医学科112人、保健学科160人)、工学部(565人)、農学部(160人)、海洋政策科学部(200人)
教員 教授503人、准教授374人、講師98人、助教280人、助手31人
在学生 1万5986人(5月1日現在)
ホームページ https://www.kobe-u.ac.jp

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