文理横断 AI活用課程
関西学院大学

文理横断 AI活用課程

「Mastery for Service(奉仕のための練達)」をスクールモットーとする関西学院大学が、これからの時代に向けて新たな挑戦を始めた。今春スタートした「AI(人工知能)活用人材育成プログラム」がそれだ。文系・理系を問わず、AIを実社会で生かせる人材の育成を目指す。

基礎から指導 即戦力へ

ビジネス現場想定し演習 課題解決などのツールに

「AI活用人材育成プログラム」は全10科目で構成。AIやデータ解析の基礎や課題解決型演習を通して、ビジネス即戦力のスキルを身に付ける 世界は今、AI技術の急速な進歩で社会構造や働き方などの大きな転換期を迎えている。人間の仕事の4割以上が機械に置き換わると予想される一方で、新しい仕事が生み出されるという前向きの見方もある。「AI活用人材育成プログラム」は、そうした変化の時代に必要とされる人材を育てるための教育課程だ。目指すのはAI技術そのものの研究開発者ではなく、AI技術を活用して課題を解決したり新サービスや新製品を作り出したりする「AIユーザー」。さらにAIユーザーにソリューション(解決策)を提供する「AIスペシャリスト」。そうした「AI活用人材」が企業などで最も求められる時代になると見据えた。
特長は「初学者を念頭においた授業内容」。基礎から積み上げるカリキュラムなので予備知識がなくても学べる。実際のビジネス現場で想定される事例を基にした演習を数多く盛り込み、実践的なスキルを体系的に修得する。卒業後に即戦力となるのが狙いだ。
プログラムは全10科目で構成される。この春に開講したのは「AI活用入門」。受講生全員がIT化による現代の産業構造の変化などについて学び、同時にAI技術やデータサイエンス、アプリケーション開発の基礎知識をしっかり身に付ける。

「文系理系関係なく学んでほしい」と語るプログラムを開発した巳波弘佳教授 その上で秋学期からは言語解析がテーマの「AI活用導入演習A」と音声認識、画像・動画解析を学習する「同B」が始まる。
やはり秋に開講する「AI活用実践演習」は「A」「B」「C」の3講座。「A」はAIを用いたウェブアプリケーション開発、「B」はAIの基盤技術である機械学習・深層学習、「C」はユーザーインターフェイス(UI)デザインの基礎知識を修得する。
AI活用に不可欠なデータ解析の基礎知識、さまざまな問題解決フレームワーク、プレゼンテーション手法などを修得する「AI活用データサイエンス実践演習Ⅰ」を今秋、「同Ⅱ」を来春に開講予定。また、20年秋には「AI活用発展演習Ⅰ」、21年春には「同Ⅱ」が始まる。それまでの学習を最大限活用し、企業や自治体が抱える課題についてチームで解決策を提案する能力を鍛える実践的な演習だ。ビジネスの現場で即戦力となるスキルに磨きをかけるのがここだ。
「AIは理系だけが学べば良いというわけではない。これからの時代、AIの深い原理の理解だけにこだわるのではなく、文系も理系もまずはAIを使いこなせるようになることが大事です」と、プログラムを開発した巳波弘佳学長補佐(理工学部教授)は指摘する。
政府は3月、AI活用人材を25万人育成する国家戦略の案を公表した。例えば、法律や経済などを学んだ学生は、専門を学んだ上でAIをツールとして使う。そうした姿が今後は当たり前になる。「文系、理系に関係なく、社会全体がその方向に向かっている。文系の学生にこそ学んでほしいし、自らの強みとしていってほしい」と、巳波教授は力を込める。
学生たちの反応は予想以上だ。「確実にAIを使いこなせる人材を育てる」というコンセプトが響いたのか、240人の受講枠に3倍以上の応募があるという。
法学部1年の緋本侑梨子さんは「文系でもAIが活用できる」という巳波教授の話を聞いて履修を決めた一人。「専攻である法律とAIの知識を自分なりに関連付けて、将来は社会に貢献したい」と抱負を語る。

キャリアセンター 対話型AIが就職支援 日本IBMの技術を導入

神戸三田キャンパスへ講義にやってきた日本IBMの出張バス。人工知能を使った性格分析などを行った 「AI活用人材育成プログラム」のスタートに先立って、関西学院大学は日本IBMと人材育成や産学連携などの包括的な共同プロジェクトを17年から展開してきた。AI先端企業の日本IBMは業務用AI「Watson」を開発し、顧客対応や情報分析、意志決定支援などの分野で実績を挙げている。「AI活用人材育成プログラム」には、日本IBMならではの技術や視点が取り入れられ、他大学にない特色となっている。
学内のキャリアセンターには「Watson」を活用した対話型AI「KGキャリアChatbot」が導入され、進路や就職に関する学生の質問に答えている。就職支援のAI開発は関西学院大学が初めてだ。

創立150年見据えて

創立150周年を迎える2039年を見据え、関西学院は18年2月に将来構想「Kwansei Grand Challenge 2039」を策定した。学園としての「ありたい姿・あるべき姿」を掲げた超長期ビジョンと、前半10年間の方向性を定めた長期戦略から成る。これを踏まえて基盤計画と実施計画を盛り込んだ中期総合経営計画策定に取り組む。「AI活用人材育成プログラム」も、将来構想を実現する取り組みの一つだ。

キャンパスらいふ

学祭委員務め 考える力向上

大学祭(新月祭) 実行委員会メンバー 1年生から大学祭実行委員会の活動をしています。開催のための署名集めから、模擬店や企画に参加している団体の管理、出演者の交渉、イベントの企画など、さまざまな業務があります。大学祭期間は朝から夜まで1日中奔走する日々が続きます。心身共に負担は大きいですが、本当に楽しく達成感があります。委員会を通じて考える力や折衝能力がついたことは大きな自信になりました。
(経済学部4年・堀俊之さん)

友情深まる 1人暮らし

住んでいるのは学生専用アパート。サークル仲間と飲み会を開いたり、互いの部屋に泊まったり。友人と過ごす時間が長く、卒業後も続く関係ができた気がします。入学当初は慣れない料理に苦戦しましたが、今はほぼ自炊。和食も覚えました。学校がある西宮では、関学生と分かるとみんな好意的に接してくれます。地域と良い関係が築けているんだと実感します。関学生には住みよい町ですね。
(文学部4年・稲吉康汰さん)

学長に聞く

AI駆使する能力必須

村田治学長
―今年から「AI(人工知能)活用人材育成プログラム」を導入しました。

AIの発達による社会の大きな変化が予測されています。すでにAIは実装化され、多くの企業が活用するようになってきています。これから求められるのはAIの専門家だけでなく、活用できる人材です。そこで本学では理系、文系を問わず全学部生を対象に、AI・データサイエンス関連の知識を持ち、活用して現実の諸問題を解決できる能力を有する人材を育成するための「AI活用人材育成プログラム」を開講しました。
政府は今年、「AIを使いこなす人材を年間25万人育てる」という戦略案を公表しましたが、まさに時代を先取りしたカリキュラムだと自負しています。使用するのは日本IBMの社内教育プログラムをベースに学生向けに共同開発した、非常に汎用(はんよう)性があり高度なプログラムです。

―創立150周年を迎える2039年を見据えて「Kwansei Grand Challenge2039」を策定しました。

最上位に掲げた目標は、卒業生が「真に豊かな人生」を送ることです。そのためには「質の高い就労」を実現しなければなりません。AIの発達などによって労働環境が劇的に変化する中で、生きがいを持って働くために、AIの知識を持ちながら、人間にしかできない能力を発揮できる人材の育成が求められます。

―求める学生像は。

これからの時代に必要とされるのは、アイデアを出しイノベーションを起こせる人材。大学時代の学びで人生は大きく変わっていきます。個性や得意分野はぜひ身に付けてほしい。そのための学びの場は多彩に用意しています。

在学生からのメッセージ

学びを通じ海外に視野

人間福祉学部4年 門田悠花さん(22)

人間の心と体に向き合う人間福祉学部があることから関学を選びました。スポーツが大好きで、ラグビー部のマネジャーをしていました。また、海外にも興味があり、今年初めて開講された英語とスポーツの融合プログラム「English through Sports」を選択し、今年3月に2週間、オーストラリアに留学しました。ラグビーのプロチームで、マネージメントやチーム運営、広報まで学べたことは素晴らしい体験でした。あいさつ程度だった英語力も、ホームステイでホストファミリーと会話する中で自分の意思をはっきり伝えられるようになりました。留学を通して今後は、日本の食の魅力を世界に広める仕事をしたいと思っています。関学での学びを通じて海外に目を向け、社会に貢献できる人になれたらと考えています。

大学概要

住所 西宮上ケ原キャンパス=西宮市上ケ原一番町1の155
西宮聖和キャンパス=西宮市岡田山7の54
神戸三田キャンパス=三田市学園2の1
アクセス 西宮上ケ原=阪急甲東園駅徒歩12分、阪急仁川駅徒歩12分
西宮聖和=阪急門戸厄神駅徒歩13分
神戸三田=JR新三田駅から直行バス15分
学部(本年度定員) 神学部(30人)、文学部(770人)、社会学部(650人)、法学部(680人)、経済学部(680人)、商学部(650人)、人間福祉学部(300人)、国際学部(300人)、教育学部(350人)、総合政策学部(590人)、理工学部(700人)
教員 教授496人、准教授114人、講師98人、助教40人
在学生 2万4270人
ホームページ https://www.kwansei.ac.jp/

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