国際的課題解く力磨く
神戸大学

国際的課題解く力磨く 留学プログラム多彩

神戸大学は「人文・人間科学系」「社会科学系」「自然科学系」「生命・医学系」の4大学術系列の下に10学部15大学院を擁する国立総合大学。「先端研究・文理融合研究で輝く卓越研究大学へ」をビジョンに掲げ、世界が共通して抱える課題を解決できるグローバル人材の養成を目指している。

世界367機関と学術交流協定 手続き、奨学金申請などサポート

欧州最古の大学の1つ、ベルギーの名門・ルーヴェン大学に留学している神大生。神大は世界64カ国・地域の367機関と学術交流協定を結んでいる 1868年の神戸港開港以来、世界に開かれた交易都市として発展を遂げ、培われた気風が神戸大学には今もしっかりと息づいている。世界64カ国・地域の367機関との学術交流協定を結び、交換留学や短期語学研修などの多彩な海外留学プログラムを設けている。
中でも充実しているのは、留学先大学への入学料、授業料、検定料を納める必要のない(神戸大学への授業料は必要)「交換留学」制度だ。期間は1学期間か1年間。留学先で修得した単位は神戸大学との単位互換が可能で、卒業要件単位を満たせば1年間留学した場合でも4年間で卒業できる。毎年約140人の学生がこのプログラムを活用して留学している。
外国語能力の向上と異文化理解の強化を目的に行われている「海外外国語研修」では、これまでにワシントン大学(米国)、北京外国語大学(中国)、グラーツ大学(オーストリア)、リヨン・カトリック大学(フランス)などの名門大学に学生が派遣されてきた。  「海外インターンシップ」は、在学中に海外の職場で就業体験ができるプログラム。夏季休業期間の1カ月間、兵庫県ワシントン州事務所(米国)や西オーストラリア州・兵庫文化交流センター(豪州)などで兵庫県の文化や歴史を紹介するブースの企画・運営や現地の学校を訪問しての日本語教育支援などを担当する。
「神戸グローバルチャレンジプログラム」は、特定のクオーターや長期休暇を活用し、アジアや欧米の国・地域をフィールドに学修できる学部1、2年生向けのプログラムだ。「フィールドワーク」「インターンシップ」「学生企画型」など多様なコースが設定され、学びの動機付けを得ることを目標としている。低年次での経験を、課題発見・解決型グローバル人材への一歩につなげようとするものだ。
また、学内におけるグローバル人材育成の拠点となっているのが異文化交流スペース「国際教育総合センター」だ。年間1800人に及ぶ海外留学生を対象にした交流、生活、就職支援などを行う留学生教育部門と、世界のさまざまな場面で活躍できる高度な能力やタフな精神力を備えた人材を育てるプログラムを開発し、日本と欧州連合(EU)の学生交流で定評のあるプログラムコーディネート部門に分かれている。また、学内の国際交流も活発に行われており、日本人学生にとっては大学にいながらにして異文化に触れあえる場となっている。
神戸大学は、学生の円滑な海外留学を支援するため、2018年4月から「神戸大学グローバル教育管理システム(GEMs=ジェムズ)」を導入した。複雑な留学手続きを簡単にし、留学をより身近に感じてもらうのが目的。大学が提供する海外留学プログラムの検索・申請のほか、留学準備から帰国後の手続きの進捗(しんちょく)管理、奨学金の検索・申請、海外渡航届の提出をサポートすることで、留学への意欲を後押しする。

学内施設にネーミングライツ 取得続々、資金確保に

海事科学研究科の学生フリールーム「TATSUMI Lounge」=深江キャンパス 国からの国立大学法人への運営費交付金が年々削減される中、独自に資金を捻出する方法が多様化している。その一つが、「ネーミングライツ(施設命名権)」だ。神戸大学では、18年2月に基本方針を定めて以降、3社が権利を取得した。
社会科学系の学生が授業で利用する六甲台第一キャンパス第三学舎の情報処理教室はデータ通信・システム構築事業などを行うNTTデータがネーミングライツパートナーに選ばれ、同年4月に「NTTDATA IT Room」と命名された。

社会科学系の学生が利用する情報処理教室「NTTDATA IT Room」=六甲台第1キャンパス 六甲台第二キャンパス工学研究科の情報知能演習室はシステムインテグレーターの新日鉄住金ソリューションズ(現・日鉄ソリューションズ)が権利を取得し、同年10月に「NSSOL Lab」と名付けられている。また、海事科学研究科にある学生フリールームは、19年4月に海運業を中心に多角的な事業展開を行う辰巳商會が権利を獲得し、「TATSUMI Lounge」と命名された。

数理・データサイエンスセンター AI技術活用に対応

課題解決型授業(PBL)を日本総研と共同して開講=数理・データサイエンスセンター インターネットの台頭により膨大なデータが社会に蓄積されるようになり、それらを新しい事業の創出や地域課題の解決に生かそうという動きが活発になっている。国は、数理・データサイエンス・AIはデジタル社会の「読み・書き・そろばん」に当たるとし、大学に対しても文理問わず初級レベルの人工知能(AI)技術を活用できる人材の育成を求めている。  神戸大学でもこうした動きを受け、「数理・データサイエンスセンター」を17年12月に設立した。文理を問わず幅広い分野の学生に、数理・データサイエンスの基礎を学び、リテラシーを身に付ける機会を提供している。また、さまざまなデータを持つ企業・自治体からデータの提供や課題を受けて、課題解決型・価値創造型プログラムを開発、実施し、より実践的な人材育成の仕組みを構築する。

キャンパスらいふ

落ち着ける付属図書館

社会科学系図書館の大壁画「青春」 キャンパス内のお気に入りの場所は六甲台にある社会科学系図書館です。1933年に建てられた重厚な建物で、国登録有形文化財に指定されています。入り口には、洋画家の中山正實画伯が描かれた日本有数の大壁画「青春」があり圧倒されます。ほの暗い書庫で本を探すのさえ楽しい時間です。授業の合間や授業の後、この落ち着けるスペースで勉強、読書をして過ごす時間をぜいたくに感じます。

下宿近くの山や街散策

実家のある京都からの通学に2時間かかってしまうため、3年生になった時から下宿生活を始めました。現在は、平日は神戸で、週末は実家のある京都で過ごしています。山と海に囲まれた神戸は開放的な雰囲気があって暮らしやすく、下宿近辺の山を歩いたり、海が見えるメリケンパークの散策によく行きます。神戸はスイーツの街、友人とケーキの食べ歩きも楽しんでいます。
(経営学部4年・三島春香さん)

学長に聞く

世界に貢献する人材を

武田廣学長
―教育ビジョンは。

本学は1902(明治35)年、国際港湾都市・神戸で神戸高等商業学校として誕生しました。以来、「真摯・自由・協同」の理念のもと117年の歴史を刻み、その間多くの学校を統合し、総合大学として発展を遂げてきました。社会科学系にルーツがありますが、近年は理系の学部も力を付け、文理のバランスが取れた研究、教育体制が整ってきました。こうした強みを生かし、文理の枠を超えた幅広い知識と視野を持った人材を育てるべく改革を進めています。

―グローバル人材の育成を掲げています。

もはや日本と海外の境はなく、日本が抱える人口減少、高齢化、移民、環境、エネルギーなどの課題は、そのまま世界が抱える共通課題でもあります。日本にいるだけでは知ることのできない、気づくことのできない現実や情報、知識に触れることで思考の制約が解き放たれ、さまざまな解決のヒントを得ることができます。若いうちに異文化を経験し、社会に出てからの財産にするためにも多様な海外留学プログラムで、学生を後押ししたいと考えています。

―育成したい人物像は。

卒業時に身に付けるべき共通の能力を「複眼的に思考する能力」「多様性と地球的課題を理解する能力」「協働して実践する能力」と定め、全学生に教養教育を行っています。深く専門を突き詰めながらも、総合大学ならではの幅広い分野の学問を学べる強みを生かし、複眼的なアプローチで世界的な課題を解決できる素養を育んでほしいと考えています。山、海、都市が混在する恵まれた環境も本学の魅力です。世界に貢献できるグローバル人材に成長できるきっかけを皆さんに提供します。

在学生からのメッセージ

豊かな環境で挑戦して

経営学部4年 三島春香さん(23)

浪人時に関心を持ったキャリアに関する本を読むうちに、刺激を受けた著者が神戸大学経営学部の教授だったことから「ここで学びたい」と思い受験しました。求人企業と求職者のマッチングに関する外国文献を読む授業が面白く、自分自身の就活、社会に出てからのキャリア形成にも生かせそうです。
2年次から学内情報を学内外に発信する学生広報チームに入り、学部を超えてさまざまな教員や学生に取材し、記事にしてきました。また、姫路市夢前町山之内地区のハーブ農家と連携した商品開発や本の出版プロジェクトなどにも手を挙げて関わることができました。神大には、やりたいと思うことをやらせてもらえるカリキュラム、プロジェクトがたくさんあります。この恵まれた環境を生かし、ぜひいろんなことにチャレンジしてほしいですね。

大学概要

住所 六甲台=神戸市灘区六甲台町1の1
楠=神戸市中央区楠町7の5の1
名谷=神戸市須磨区友が丘7の10の2
深江=神戸市東灘区深江南町5の1の1
アクセス 六甲台=阪急電鉄六甲駅、JR六甲道駅、阪神電鉄御影駅から市バス36系統「鶴甲団地」行き
学部(本年度定員) 文学部(100人)、国際人間科学部(370人)、法学部(180人)、経済学部(270人)、経営学部(260人)、理学部(153人)、医学部(272人=医学科112人、保健学科160人)、工学部(565人)、農学部(160人)、海事科学部(200人)
教員 教授539人、准教授388人、講師96人、助教208人、助手15人
在学生 1万6212人(大学院含む)
ホームページ http://www.kobe-u.ac.jp

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