大阪芸術大学短期大学部(芸短)は、メディア・芸術、デザイン美術、保育の3学科12コースを設けており、このうち、メディア・芸術、デザイン美術の2学科は、伊丹市内にキャンパスを置いている。第一線で活躍する現役のプロフェッショナルが教員陣に名を連ねており、少人数制の授業を通じて濃密な2年間を送った学生は、それぞれが身につけたスキル、知識、知恵を生かして社会に羽ばたいている。
特任講師の河邊こずえさん(手前)が担当するバレエの授業は他コースの学生も履修できる人気科目だ
メディア・芸術学科は「メディア(出版・広告・放送・映像)」「舞台芸術(身体・制作)」「ポピュラー音楽」「声優」「ポピュラーダンス」の5コースが設けられている。機材やスタジオなど充実した設備のもとでコースごとの専門演習、実習のほか、コースを超えてさまざまな表現手法を学べるようになっている。
教授陣はその道の第一線で活躍し続けたプロフェッショナルがそろう。舞台芸術コースの身体系の学生が履修する「ヴォーカル基礎演習」の担当講師、西島美子さんは劇団四季のミュージカルでさまざまな役を演じてきた。「講義では一音一語途切れることなく聴衆に伝わる舞台人としての声をつくることを心がけている。社会に出てどのような技術を習得するにおいても訓練は役立つ。やっていることが自分のふに落ちた瞬間ぐんぐん伸びていく学生の姿を見るのが楽しい」と話す。
なお、ポピュラー音楽コースの学生向けにも、全く別内容の「ヴォーカル基礎演習」が用意されている。
「ヴォーカル基礎演習」担当講師の西島美子さん(手前)は劇団四季のミュージカルで活躍してきた
バレエ担当の特任講師、舞踊家の河邉こずえさんは数多くのバレエコンクールで受賞歴を持ち、写真を使った身体表現でも多くの作品を発表している。「はじめは身体で表現することに対し恥ずかしさを持っていた学生たちが、舞台から観客に伝える意識を持つことで身体で会話ができることを覚えていき、卒業公演では堂々と演じられるようになる」と学生の成長を実感している。
声優コースの教授、古川登志夫さんはドラゴンボールのピッコロ役、ワンピースのエース役などを務める人気声優として知られ、長年の経験に基づいた技術、ノウハウを伝授するとともに個性の大切さを説いている。学生らは毎年、声優の名門「青二プロ」などのオーディションに挑戦。大勢が憧れの業界で活躍している。
メディア・芸術学科長の小野寺昭さん
「太陽にほえろ!」の殿下役としておなじみの同学科長、小野寺昭さんは「2年間でプロとしての第一歩を踏み出せる基本はみっちりたたき込む。併せて、プロの世界で長く生きていくために大切な謙虚さ、素直さの大切さも説いている。何かに打ち込むことを通じて多くのことを吸収してほしい」と話す。
デザイン美術学科長の松井桂三さん
デザイン美術学科は、「グラフィックデザイン・イラスト」「空間演出デザイン」「アートサイエンス(開設予定)」「キャラクター・マンガ・フィギュア」「デジタルアート」「工芸・立体デザイン」「絵画・版画」の7コースがある。1年次前期に3コース以上の基礎実習を履修できる。後期から専攻コースを選択できるようになっており、自分の進路を考える時間が用意されている。
学科長を務める松井桂三さんは、多くの作品が世界の美術館で永久保存されているグラフィックデザイナー。大学生の時に考案したアタッシェケース型のパッケージがアップル社の目に留まり、基本パッケージシステム構築の仕事につながるなど「世界で誰もやっていないことは何かを常に考えデザインをしてきたことで、世界から評価してもらうことができた」と話す。今もその姿勢は衰えることなくガラスと陶器を融合させた作品を発表するなど、プロの仕事ぶりを学生たちに見せ続けている。
想像力を刺激する屋根付きの立体造形スペース
「デザインは、機能を満たしたり、問題点を解決するための方法論。それを自らプロデュース、指示できる人材を育てていきたい」と話す。
同学科の教授陣もそうそうたる顔ぶれがそろう。「キャラクター・マンガ・フィギュア」コースには、世界を舞台に活躍するカリスマフィギュア作家の寒河江弘さん、「グラフィックデザイン・イラストコース」には、世界のファッション誌で活躍する写真家の畑口和功さん、「空間演出デザインコース」には、数多くの住空間、商空間、インテリアデザインなどを手がける気鋭の建築家、谷尻誠さんら数え上げればきりがない。
コンピュータールームでは知恵と技術を習得する
また、設備面でも、立体造形スペースが屋根付きの中庭に広々と確保されているほか、絵画や版画制作のためのアトリエ、ガラス炉や陶芸の窯など、創造力・感性を磨く、まさに総合芸術短大としてのぜいたくな環境がそろっている。
芸短は大学名に「大阪」が付いているものの、3学科のうち2学科が「伊丹」学舎にある。神戸方面からのアクセスは、阪急伊丹駅、阪急山本駅、またJR中山寺駅など複数の経路があり、最寄りのJR中山寺駅からは徒歩12分の距離だ。キャンパスは隣接する荒牧バラ公園とともに都市部の中に緑あふれる空間が広がっており、春の桜や秋の楓(かえで)など四季折々の変化が感性を育んでくれる。芸短への兵庫県出身者の入学者は年々増加傾向にあるという。
芸短が提供する「Kiss FM KOBE」の番組「ハイスクールノオト」(毎週土曜日8時~8時15分)が県内の高校生に人気だ。
サウンドクルーを務めるのは、芸短出身のフリーアナウンサー、永田早紀さん。永田さんが県内にある高校の放送部を訪ね、学校の話題をリポートするとともに、各校の生徒がスタジオで出演し、自分たちの高校をアピールするオリジナルCMを作る内容。放送開始後3年で約100本のCMを制作したという。聴取者の高校生の中には、芸短で講師も務める永田さんから学びたい、と入学した学生もいる。
塚本英邦学長
―伊丹市と大阪市にキャンパスがあります。
前身は1945年に大阪市内に創設した平野英学塾で大阪芸術大学の源流でもあります。本部は大阪市ですが、敷地が手狭になり86年に伊丹学舎を増設しました。「メディア・芸術」「デザイン美術」「保育」の3学科のうち芸術・美術系2学科は伊丹学舎が拠点です。2学科で12コースあり、総合芸術短期大学ゆえに学科、コースを超えてコラボレーションできる環境は学生に大いに刺激になります。現役で活躍する各分野のプロフェッショナルが指導に当たるぜいたくな学びの環境と、緑豊かなキャンパスで感性を研ぎ澄ませながら表現力、創造力を磨くことができます。
―来年度から新コースを開設します。
アートサイエンスコースです。最近ではプロジェクションマッピングやドローンを使った映像など新しい表現手法を使ったアートが脚光を浴びています。従来の技術にロボットやセンサーなど最先端の技術を組み合わせて全く新しいものを生み出す手法や考え方を学べるカリキュラムを考えています。異なるものを融合させて新たなものをつくり出す発想は、社会に出てからあらゆる局面で生かせると考えています。
―芸短の強みは。
4年で学ぶことを2年で凝縮して学べる点が最大の特徴です。ハードですが、その分濃密で充実した学生生活を送ることができます。さらに学びたい学生は、卒業後にグループ校の大阪芸術大(4年制)の3年次編入を目指すこともできます。大学でのさまざまな体験を通して、知識や技能の引き出しを増やし、視野を広げて社会に巣立っていってほしいと願っています。
小さい頃から絵画や工作が好きで、高3の春にはこの大学への進学を決めていました。とはいえ、具体的に何をやりたいかは漠然としていたので、1年次前期で3コースの基礎実習を履修し、その中で最も興味がわいたグラフィックデザイン・イラストコースを後期から専攻することにしました。動画作品を仕上げるのでも、ナレーションなど他学科の学生に協力してもらいながら作り上げることができるのは総合芸術大学ならではです。大好きなパッケージデザインの仕事に就くことが今の目標です。
住所 | 伊丹キャンパス=伊丹市荒牧4の8の70 |
---|---|
アクセス | JR宝塚線中山寺駅徒歩12分、阪急宝塚線山本駅徒歩20分 |
学部(本年度定員) | メディア・芸術学科(160人)、デザイン美術学科(160人) |
教員 | 教授11人、准教授9人、講師1人 |
在学生 | 528人(5月1日現在) |
ホームページ | http://osaka-geitan.jp/ |
日程 | 7月9日(日)、8月20日(日)、9月10日(日)、2月11日(日) |
---|---|
時間 | 午前10時〜午後3時 |
お問い合わせ | 入試課 ☎072-777-3353 |