三木キャンパスに人間科学部と保健医療学部、尼崎キャンパスに教育学部と人間科学部の一部を置く関西国際大学。グローバルネットワークを積極展開して、海外体験学修を看護学科を除く全学生の必修科目とするほか、全学部で「安全・安心」教育の専門科目を開講し、学生防災士を誕生させるなど、先進的な取り組みで全国的に注目を集めている。卒業までに社会で求められる能力を身につけることを目指した、組織的な教育システムづくりにも定評がある。
カンボジアの小学校で算数を教える関西国際大の学生
「世界に学び、社会で活(い)かす」をテーマに、アジア・太平洋地域を中心とする12の国と地域にある50の協定校や、国内の地域社会、企業などと協力して取り組む学外体験型学修に力を入れる。主軸となるのが、単なる語学留学にとどまらず海外のさまざまな現場に踏み込み、広く価値観や文化を学ぶ「グローバルスタディ」。全学生必修(看護学科は選択制)で、初回の渡航費を大学が負担する。
海外での調査研究活動「フィールドリサーチ」▽海外で社会貢献活動に取り組む「海外サービスラーニング」▽海外就業体験「海外インターンシップ」▽6カ月以上の「交換留学」―の4分野、計20プログラムを用意。中でも、カンボジアの現地語を覚えて貧困地域の子どもたちに勉強を教える「安全教育と学習支援に向けたサービスラーニング」のプログラムが人気という。「多様性を肌で感じ、同世代の学生との交流を通じて価値観などの違いを実感することが重要だ。想定外の事柄に対応したり、報告会を通して振り返ったりすることで成長できる」と濱名篤学長。
まちに出向き住民の意見を聞く学生ら。「コミュ二ティスタディ」は地域社会がキャンパス
世界をキャンパスとするのが「グローバルスタディ」なら、国内の地域社会をキャンパスとするのが「コミュニティスタディ」。地域高齢者の見守り活動をはじめとした社会貢献活動をする「サービスラーニング」や企業や自治体での「インターンシップ」を通じて、自ら課題を発見し解決していく能力を身に付ける。
また4年間の学修やキャリアプランの一環として、これらの取り組みに計画的に参加できるように、新たに「ラーニング・ルートマップ」と呼ばれる工程表を導入した。「グローバルスタディ」や「コミュニティスタディ」にいつ参加し、どこに就職活動のピークを持ってくるか。1年次から考えて、自らのキャリアプランにしたがって標準マップに手を加えていく。「目指す進路によって4年間の過ごし方は人それぞれ。キャリア形成においては、就活講座を受けるだけでなく、自ら目標を立ててルートを設定することが重要。それができれば、例えば夏休みの過ごし方から違ってくる」と濱名学長は話す。
関西国際大の特長は、学生が主体的に学び続けられるように教育システムを整えているところ。卒業までに身につけるべき汎用(はんよう)的能力を「KUIS学修ベンチマーク」として定めた上で、科目ごとに得られる能力を設定し、卒業までの科目を修得すれば社会で必要とされる能力が自然と身に付く設計となっている。
「目標の設定、学修、振り返り」の流れもシステム化している。アドバイザーと呼ばれる専任教員との面談で目標を設定して学修し、その成果を大学サイト内の「e―ポートフォリオ」に記録。さらに学期末に「リフレクション(振り返り)・デイ」を設けて、返却された前学期の試験やレポートを基に自分の学修活動を振り返り、新たな目標を設定する。評価については、大学独自に開発した統一基準を用いている。
昨年「セーフティマネジメント教育研究センター」を創設。危機管理のスキルを生かす人材を輩出していく
これからの社会に必須の「安全・安心」をテーマとした学びに取り組む関西国際大は、2016年度に防災や危機管理に関する教育プログラムを提供する「セーフティマネジメント教育研究センター」を創設した。
プログラムの第1弾「防災入門」は、日本防災士機構の認証を受け「防災士」の資格取得を目指す選択科目。同年度は人間科学部を対象に39人が資格を取得し、本年度からは対象を全3学部に広げて計150人が受講する。協定を結ぶ県内11企業から支援を受け、学生の防災士試験受講料や教材費が免除されるのが特長だ。
さらに本年度から専門的に学びたい学生に向け、災害や犯罪など多難な社会を生き抜く力を得る新コース「セーフティマネジメントコース」が人間科学部経営学科に誕生した。消防署や警察関係機関のほか、一般企業や地域社会でも幅広く危機管理のスキルを生かせる人材を育てていく。元兵庫県副知事で初代防災監の齋藤富雄副学長は「阪神・淡路大震災を経験していない神戸市民が6割以上を占め、次なる巨大地震も切迫する中、培ってきたことを若い人に伝え人材を育成する必要性を痛感している。防災スキルを現代の基礎教養として、セーフティマネジメントの基本知識を全学生に提供できる体制づくりを進めたい」としている。
今年春に第1期生98人を送り出した保健医療学部。看護師国家試験合格率は98%と高い
三木キャンパスにある保健医療学部が、今年春に第1期生98人を送り出した。「北播磨総合医療センター」設立に伴い、高度先端医療に対応できる看護専門職者育成の要請を受けて13年に開設。第1期生の看護師国家試験合格率は98%を達成した。
看護師のほか、助産師や保健師、養護教諭2種の資格取得が可能。看護学実習棟には、四つの実習室のほか、看護師に必要な技術を最新鋭の全身モデルや人体模型などを用いて学べるスキルスラボを配備。図書館機能も充実させ、学生の学びを支えている。
医療系大学で常々課題に挙がるのが実習の受け入れ先となる医療機関の確保だが、同学部の実習は北播磨総合医療センターを中心として積極的に行われている。学内での授業や実習の指導にもセンターの医師や看護師らを講師として招くなど医療現場に即した知識や技術を修得するための生きた学びを実践できる環境が整っている。第1期生は同センターに15人が就職しており、地域医療に貢献する人材として期待されている。
濱名篤学長
―関西国際大学が目指すのは。
日本の労働人口の半数近くが就いている職業が、10~20年後には人工知能やロボットで代替可能になるというデータがあり、間もなく就職率が大学選びの指標でなくなるでしょう。人間にしかできない力、主体的に考え、どんな状況にでも対応できる力、自分で人生を選択していく「私を生きる力」。これらをしっかり身につけられることが、将来予測が困難な時代に期待される大学の役割だと考えます。
―全学生に「安全・安心」教育を進めています。
グローバル教育を推進する中、経済的な豊かさや宗教、ジェンダーなどは国や地域で価値観に違いがある一方、「安全に暮らしたい」という欲求は普遍的な価値として共有できることを実感してきました。安全は常識でなく、災害はひとごとではありません。地域コミュニティーの一員として災害に備え、発生時には率先して迅速的確に行動できる学生を育てる必要があると考え、防災士養成講座研修機関認証を兵庫県の大学で初めて取得し、学生防災士を育てています。
―学生に身につけてほしいことは。
本学では先進的な教育システムを構築する中で、「評価」のプロセスを重視しています。学生のパフォーマンスを評価して能力向上を図るほか、「評価と実践」という必修科目もあります。評価は嫌なものととらえがちですが、受け身で一喜一憂するだけでなく自分のものにしていける人は、大きな成長を遂げることができます。評価を本質的に理解し、自ら考え選択し、責任を持って行動できる「私を生きる力」を身につける人材を育てたいと考えています。
犯罪心理学に興味を持ち、関西国際大学のオープンキャンパスで振り込め詐欺についてのミニ講義を受けたのが志望のきっかけでした。講義内容と教授の人柄が印象に残り、さらにこの大学で学びを深めたいと思い山口県の高校から進学しました。授業内容は期待通りで、充実した日々を送っています。新入生をサポートする「学生メンター」や、後輩の学修を支援する「学修支援チューター」の経験を通じて、やりがいを感じることが多いです。将来は大学での学びを生かして、社会の安全に関わる仕事に就きたいと考えています。
住所 | 三木キャンパス(大学本部)=三木市志染町青山1の18 尼崎キャンパス=尼崎市潮江1の3の23 |
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アクセス | 三木=神戸電鉄緑が丘駅バス5分 尼崎=JR尼崎駅徒歩5分 |
学部(本年度定員) | 教育学部(200人)、人間科学部(225人)、保健医療学部(80人) |
教員 | 教授46人、准教授28人、講師23人、助教7人、助手2人 |
在学生 | 2002人(男976人、女1026人) |
ホームページ | http://www.kuins.ac.jp/ |
日程 | 7月22日(土)・23日(日)、8月6日(日)・27日(日)、9月16日(土)、 10月1日(日)、12月17日(日) |
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時間 | 午前10時〜午後4時 |
お問い合わせ | 入試課 ☎06-6496-4120 |