武庫川女子大学
関西の女子大をけん引
武庫川女子大学は、約１万人の学生が学ぶ全国最大規模の女子総合大学だ。理系から文系、音楽、スポーツまで学びの幅は広く、近年、女子大では珍しい建築学部や経営学部も誕生し、学部学科のラインアップは共学の大学に引けを取らない。２０２３、２４年度に新たな学部や学科を開設し、１２学部２０学科になる。関西の女子大をけん引し、躍進を続ける。
スポーツマネジメント学科
多様なスポーツビジネス分野 活躍する人材育成へ 本年度、新設
ダンススタジオを訪問し、施設の代表（左）から運営や財務などを学ぶ学生たち
本年度、健康・スポーツ科学部に新設されたスポーツマネジメント学科は、スポーツの専門知識や競技経験を生かし、成長著しいスポーツビジネスの現場で活躍する人材を養成するのが狙いだ。
学科開設に先立ち今年２月、大阪の舞洲プロジェクトが主催する「スポーツビジネスコンテスト」があり、武庫川女子大学企画「集客・新規来場者を増やす」が最優秀賞を獲得した。健康・スポーツ科学部には以前からスポーツマネジメントコースがあり、今回の学科開設はその実績の上に立ったものだ。
多様な教員がそろったのも、この分野で実績を重ねる女子大ならでは。柳沢和雄学科長は「スポーツ関連のサービス提供や商品・用具の開発、子どもや高齢者のスポーツイベントへの動員にも女性の視点は欠かせない。さまざまなスポーツが持つ多様な価値を伝えたい」と話す。
スポーツビジネスの世界はファッションや美容、レジャー、まちのにぎわいを生み出すスポーツ施設管理とも結びつく。
成熟した社会を形づくるスポーツへの理解を通し、豊かなスポーツライフをマネジメントできる女性の育成に期待がかかる。
理系に強い女子大学
市販されている飲料の成分を抽出し、適正な商品であるか分析する食創造科学科の学生たち
フラスコを手に茶の抽出物の様子を観察する食創造科学科の学生たち。糖の吸収抑制などの機能性をうたう複数の市販の茶葉で、血糖値降下作用を比較検討する卒論研究の真っ最中だ。同じ時間、別の大教室では白衣姿の学生たちが実験を終え、真剣な様子でリポートを書いていた。
開学当初から教員や管理栄養士など女性活躍に道を開いてきた同大学は理系にも強い。まず、１９６２年度に薬学部が開設された。２００６年度に女子大で初めて開設した建築学科は２０年度、学部となり、景観建築学科との２学科に進化した。
文理融合の流れも加速
今年新設された「社会情報学部」の授業。最先端の設備が導入された環境で情報のスペシャリストを養成する
文理融合の流れも加速している。本年度、新設された社会情報学部は情報メディア専攻と情報サイエンス専攻の２専攻制。母体となった情報メディア学科のデータサイエンス領域に特化した情報サイエンス専攻ではＩＴ、人工知能（ＡＩ）を自在に操る情報のスペシャリストを育成する。
経営学部では１年次から企業や自治体とのコラボレーションを多数取り入れ、資格取得に頼らない新たな女性の生き方を強力に推進している。「完成年度」となる本年度、１期生の進路が注目される。
来春、「歴史文化学科」が誕生
未来へのヒントを歴史に探る
「わたしは異世界（ヒストリカルワールド）にＤＩＶＥする」。高鳴る好奇心をイラストとキャッチコピーで表現
文学部が進化する。
２４年４月、新たに誕生する歴史文化学科は日本史に特化する。重視するのは、貴族や武将など権力者や為政者ではなく、生活者の軌跡だ。女性の感性が育んできた衣食住の側から文化の本質に迫る。
キャッチフレーズは「わたしは異世界（ヒストリカルワールド）にＤＩＶＥする」。膨大な歴史が堆積するヒストリカルワールドを、現代を生き抜くアイデアの宝庫と捉え、未来へのヒントを歴史から探る。
英語グローバル学科は２専攻制に
英語グローバル学科も来春、英語のスペシャリストを目指す英語文化専攻と、英語をツールにビジネスやマーケティングを学ぶグローバル・コミュニケーション専攻の２専攻制となる。いずれもアメリカ分校での４カ月間留学を実施。ハイレベルな英語基礎力のうえに、世界で活躍できる多様な力を身に付ける。
米ワシントン州にアメリカ分校
全教員がネーティブ 学生寮完備
武庫川女子大学はアメリカにもキャンパスがある。ワシントン州スポケーン市に１９９０年に開校したアメリカ分校＝写真＝は、学生が語学と異文化理解を深めるためのグローバル拠点だ。英語グローバル学科では、１学年全員が分校で４カ月間、寮生活をしながら学ぶ。
教員は全てアメリカの大学院修士課程でＴＥＳＯＬ（英語教授法）の資格を得たネーティブスピーカー。その教育内容は、英語教育認定協会（ＣＥＡ、アメリカ教育省の外郭団体）からアメリカの大学レベルの教育機関として認定されている。
甲子園球場の１２倍もの広大なキャンパスで過ごす日々は安全かつ濃密だ。
地域に開かれた西宮北口キャンパス
リカレント教育 拠点開設
西宮市内４カ所目のキャンパスとして開設したのが、阪急西宮北口駅から徒歩５分の西宮北口キャンパス（ＫｉＴａ―Ｅ）だ。ここで今年４月からリカレント教育「ＭＵＫＯｎｏａ＋（ムコノアプラス）」がスタートした。就業に欠かせないデジタルトランスフォーメーション（ＤＸ）に特化した１５０以上の講座を「働き続けたい」全ての人に開いている。
学長に聞く
発想と行動力を後押し
―武庫川女子大の特色は。
瀬口和義学長
本学の母体・武庫川学院は立学の精神に「高い知性、善美な情操、高雅な徳性を兼ね具（そな）えた有為な女性の育成」を掲げています。これを２０３９年の創設１００周年に向けアップデートしたのが「一生を描ききる女性力を。」とうたう「ＭＵＫＯＪＯ Ｖｉｓｉｏｎ」です。女性の活躍がより一層求められる今、学生には自らの意志と行動力で可能性を広げ、生涯を切り開いてほしい。その実現のため、教育、研究、キャリアを中心に前例のない改革を進めています。
―新たな取り組みは。
本学は、建築学部など男性中心だった領域の学部をいち早く開き、女性のポテンシャルを引き出してきました。２４年度には歴史文化学科を開設し、１２学部２０学科になります。総合大学の知見を生かし、産学、産官学の連携プロジェクトが各所で動いています。今年４月には西宮北口キャンパスでビジネスパーソンを対象に、デジタルトランスフォーメーション（ＤＸ）に特化したリカレント教育「ＭＵＫＯｎｏａ＋（ムコノアプラス）」をスタートさせました。
―学生に期待することは。
これから必要なのは、自ら考え、行動する力。ライフイベントを乗り越えていく「一生を描ききる」力が求められます。本学独自の基盤教育プログラム「ＭＵＫＯＪＯ未来教育プログラムＳＯＡＲ」では入学直後の全学生に、ジェンダーギャップ指数で世界の下位にある日本の現状を赤裸々に提示し、自らのキャリアを考える契機としています。今後も、女子総合大学であることを最大限に生かし、自由な発想と伸びやかな行動力を後押しする教育・研究の機会を提供していきます。
在学生からのメッセージ
貴重な実践学習の経験
経営学部 経営学科３年 北川菜摘さん
武庫川女子大学は母の出身大学です。説明会のとき、企業や行政の方と一緒にプロジェクトに取り組む「実践学習」に参加できると聞いて、経営学部を選びました。マーケティングなど少し難しい講義もありますが、実践学習が本当に貴重な経験になっています。２年次には、サメ革小物専門店「アトリエシャーク」をインスタグラムでＰＲするプランを検討したり、神戸・六甲山上で現代アートを展示する「六甲ミーツ・アート」で作品設営や接客に携わったりしました。最近は、学内の図書館で、企業の方とクレープを販売してたいへんな人気でした。経営学部の有志でつくる「シェア・スタ☆」でも企画やイベントに関わっています。将来は、ラジオ局のライブイベントの企画や広告関係の仕事に就くのが目標です。
大学概要
| 住所 | 中央キャンパス＝西宮市池開町６の４６ 浜甲子園キャンパス＝西宮市甲子園九番町１１の６８ 上甲子園キャンパス＝西宮市戸崎町１の１３ |
|---|---|
| アクセス | 中央＝阪神鳴尾・武庫川女子大前駅徒歩約７分 浜甲子園＝阪神甲子園駅徒歩約１５分 上甲子園＝ＪＲ甲子園口駅徒歩約１０分 |
| 学部 （2023年度定員） |
文学部（３５０人）、教育学部（２４０人）、心理・社会福祉学部（２２０人）、健康・スポーツ科学部（２８０人）、生活環境学部（１６５人）、社会情報学部（１８０人）、食物栄養科学部（２８０人）、建築学部（８５人）、音楽学部（５０人）、薬学部（２５０人）、看護学部（８０人）、経営学部（２００人） |
| 教員 | 教授２２２人、准教授９９人、講師４９人、助教３７人、助手５５人（５月１日現在） |
| 在学生 | １００７０人（大学院含む）（５月１日現在） |
| ホームページ | https://www.mukogawa-u.ac.jp/ |