神戸大学
知と人と共創と協働へ
神戸大学は「人文・人間科学系」「社会科学系」「自然科学系」「生命・医学系」の4領域で10学部15大学院などを擁する国立総合大学だ。「知と人を創る異分野共創研究教育グローバル拠点」として進化・発展しつづけることをビジョンに掲げて、神戸のイノベーションをけん引する研究拠点を形成。傑出した知を創造する一方で得た知を社会に広く還元しようと、小学生から社会人まで幅広い年代を対象に教育プログラムを提供している。
デジタルバイオ&ライフサイエンスリサーチパーク(DBLR)
中核施設、医療産業都市へ集積
神戸大学が建学の理念「学理と実際の調和」を具体化するため、ビジョンに掲げるのが「知と人を創る異分野共創研究教育グローバル拠点」を目指すこと。昨年10月、大学の英知を結集した研究拠点「デジタルバイオ&ライフサイエンスリサーチパーク(DBLR)」の中核施設を神戸・ポートアイランドの医療産業都市に集積し、地域の中心的存在としてイノベーションをけん引している。
25年春、医学部に新学科 新医療機器開発担う人材育成 バイオ、先端膜工学も強化
DBLRは「社会システムイノベーション研究拠点」「バイオものづくり研究拠点」「先端膜工学研究拠点」「医工学研究拠点」「健康長寿研究拠点」の五つの研究拠点からなる。
なかでも「医学」と「工学」の異分野共創は重点テーマの一つだ。国内の医療現場における欧米製の機器の輸入超過に対する、国産の機器開発課題に向きあっている。国産初の手術支援ロボット「hinotori(ヒノトリ)」の開発を監修した神戸大は、医療機器開発の中核となる人材育成を目的として今年4月に「医療創成工学専攻」を大学院に設置。2025年4月には同専攻との一貫教育を想定した医学部の新学科を設置する計画で、新機器開発につながる創造的人材の育成を目指している。
また、生物が作り出すバイオ分子の特性をものづくり技術に生かす「バイオものづくり」、分離膜や機能性薄膜などの技術を追求する「先端膜工学」も地球温暖化の抑制にもつながる研究として注目が集まっている。
これら重点領域の強化と拠点間の相乗効果を図り「傑出した知を創出」▽研究教育を支えるために学内の戦略企画を強化して「事業成長を促進する経営体制を実現」▽優秀な学生に経済的支援などを行って「次世代の有能人材を創出」▽ファンドを活用したりベンチャー創出を後押ししたりして「社会実装・価値の創出」―の4点に取り組む。
幅広い年代に教育プログラム
リカレント教育
DBLRに関連して、社会人の学び直しを意味するリカレント教育にも力を入れている。「総合研究大学」として果たすべき役割は、研究を通じて最先端の知を創造するだけでなく、得た知を社会に広く還元することと考えており、部局単位で進めてきた社会人リカレント教育事業を集約して一層の推進を図るため、今年1月に学長直下の「リカレント教育推進室」を設置した。
デジタルトランスフォーメーション(DX)人材の育成プログラムをはじめとして、さまざまな分野でプログラムが用意されている。
国立大学としての使命を果たす一方、自走する教育プログラムの充実化はこれからの国立大学運営に不可欠となる。
神戸みらい博士育成道場
学部・大学院における教育やリカレント教育以外に、小・中学生や高校生対象の教育プログラムも展開している。
小学5年生から中学3年生対象の教育プログラム「神戸みらい博士育成道場」は22年から5カ年計画で始まった。初年度は42人が神戸大の研究室や数理・データサイエンスセンターのほか、大型放射光施設「スプリング8」や県立「人と自然の博物館」など県内の研究施設を活用しながらフィールドワークを実施。専門家との対話や質疑応答の中から、新しい学びやより深い思考に挑戦する力を磨いた。第1段階育成プログラムの終了後、選抜者がさらに好奇心や探究心を高められる第2段階育成プログラムも用意。参加者同士が高め合える「道場」的な学びの場を提供するのが特長で、学生が受講生をサポートし相互の成長も期待できる。
育成道場は科学技術振興機構(JST)が支援するプログラムの一環。博士号の取得者や論文数の減少による日本の研究力低下が指摘される中、その問題解消の一役を担うことも考える。コーディネーターを務める蛯名邦禎名誉教授は「答えが分かっていないことを探すのが研究。しかしインターネットで検索する時代になり、深掘りして探究する精神が薄れている」と説明。「プロの知見や技術を直接見聞きできる貴重な経験を通じて、趣味にのめり込む意欲を持っている児童生徒に、自己流の学びから学術へと進化を遂げてもらえる」と話す。高い意欲や突出した能力のある小中学生を、将来日本を引っ張る人材に。「ジュニアドクター」育成に向け、探究のプロである大学が果たす役割は大きい。
科学分野で高校生にも
高校生に対する教育プログラムは、さらに早い17年から行われている。同機構の支援のもとで神戸大学を実施機関とし、兵庫県立大学、関西学院大学、甲南大学と4大学共同で運営されているのが「ROOTプログラム」。科学分野で強い好奇心・探究心を持った高校生が国際的に活躍できる科学者や技術者に成長していくためのプログラムを組む。
さらに神戸大学では22年に「高大接続卓越グローバル人材育成センター」を設置。「高大連携部門」のほか、大学入学共通テストを課さず高校での主体的な取り組みなどを評価する「『志』特別選抜」を担当する「アドミッションオフィス部門」や「入学後教育部門」をそれぞれ強化して、卓越した人材育成を総合的に推進している。
学長に聞く
創造する力を養う場に
―教育理念は。
1902年の創設以来、「学理と実際の調和」を理念とし、「真摯(しんし)・自由・協同」の精神のもと、普遍的価値を有する「知」を創造するとともに、人間性豊かな指導的人材の育成を使命としてきました。キャンパスは四つに分かれており、「人文・人間科学系」「社会科学系」「自然科学系」「生命・医学系」の4領域からなる10の学部と15の大学院、法学と経営学の専門職大学院、経済経営研究所、医学部付属病院などの教育研究施設から成り立っています。
―大学の現況を。
今春、医学と工学が連携して先端的医療機器・システムを創造する「医学研究科医療創成工学専攻」に第1期生が入学しました。ポートアイランドの神戸医療産業都市地区にも複数の研究開発拠点が集積し、本学の新しい科学技術革新基盤である「デジタルバイオ&ライフサイエンス・リサーチパーク」を形成しています。世界に誇れる最先端技術の研究・開発が行われており、新しい価値を創造し、産官学連携による社会実装やスタートアップの育成の場として、さらなる成長が期待されています。優れた特色のある学部とセンターが相互に連携しながら学術的・独創的な教育・研究を実践し、国内外で高い評価を得る総合研究大学として発展し続けています。
―受験生にメッセージを。
大学とは自ら選んだ専門分野の学びを深めて自己研鑽(さん)に励む場です。一方で幅広い知識と視野を身に付けながら、物事を俯瞰(ふかん)して自分の研究に取り組むことにより、傑出した新しい技術や価値を創造する力が養えるはず。神戸大学は愛情と優しさを持って大きな夢を描く君に寄り添い、君とともに未来を創ります。
在学生からのメッセージ
幅広い学びの選択肢
国際人間科学部 環境共生学科4年 白坂俊樹さん
神戸大学に対する憧れが強かったものの、何を学びたいかが高校時代に決まりませんでした。また高校まで理系だったのですが、大学では文系も学びたいと考え、文理融合型人材を育成するため幅広い選択肢が用意された環境共生学科へ。学部ならではのグローバルスタディーズプログラムでは、コロナ下で留学が難しかったため、農作物の輸入を行う国内企業を訪問。グローバル社会の課題解決を目指す授業を通じて多くのことを学びました。部活動ではアメリカンフットボール部の主将を務め、日本一という目標を明確にして、100人以上の部員やスタッフが共通認識として団結できるように心がけています。立場の異なる人と関わってきた経験を生かし、将来は世界中の人と接しながら、新しいものを切り開いていくような仕事に携わりたいです。
大学概要
住所 | 六甲台=神戸市灘区六甲台町1の1 楠=神戸市中央区楠町7の5の1 名谷=神戸市須磨区友が丘7の10の2 深江=神戸市東灘区深江南町5の1の1 |
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アクセス | 六甲台=阪急電鉄六甲駅、JR六甲道駅、阪神電鉄御影駅から市バス36系統「鶴甲団地」行き |
学部 (2023年度定員) |
文学部(100人)、国際人間科学部(370人)、法学部(180人)、経済学部(270人)、経営学部(260人)、理学部(153人)、医学部(272人=医学科112人、保健学科160人)、工学部(565人)、農学部(160人)、海洋政策科学部(200人) |
教員 | 教授566人、准教授392人、講師126人、助教414人、助手39人 |
在学生 | 15869人(5月1日現在) |
ホームページ | https://www.kobe-u.ac.jp |