▽おおよし・ようへい 1985年、神戸市出身。甲南大学経営学部EBA総合コースを卒業。2008年に毎日放送入社。担当番組は「よんチャンTV」(月~金・午後3時40分)の火~金に出演。
「心の針動けば即挑戦を」
毎日放送アナウンサー 大吉洋平さん
中学2年生の時にアナウンサーの仕事で海外を飛び回りたいという憧れを持つようになったという大吉さん。大学時代は、勉学に遊びに留学にと中身の濃い日々を送り、その中でも多くの人との出会いが、今の仕事に生きていると言います。
英語活用し学べる学部選択
―アナウンサーを目指すきっかけは。
フジテレビの朝の番組でアナウンサーの須田哲夫さんが毎日、ニューヨークから中継で現地の様子を紹介するコーナーがありました。その情報だけで頭の中にニューヨークの地図が描けるくらい夢中になり、アメリカへ行きたい、アナウンサーになりたいという憧れが生まれました。高校1年生の時にはアメリカに留学したいと親に懇願し、9・11のテロでアメリカ行きはかなわなかったもののオーストラリアの高校に1年留学しました。英語は話せず、友達もできず、帰りたい気持ちでしたが、半年ほどたってようやくなじむことができました。精神的なタフさはそこで身に付きました。
―大学選びは。
せっかく習得した英語を生かしながらも別のことを学びたいと考えていた時に、甲南大学に国際的なビジネスパーソンを養成するEBA総合コース(現マネジメント創造学部)のことを知りました。アメリカの大学にいるような環境で経営を学ぶことができ、アメリカの大学で単位を修得するプログラムもあることから、即決しました。
―入ってみてどうでしたか。
当時は1学年40人に満たないぐらいの小さな規模のコースでしたが、アメリカの大学から先生が教えに来るなど授業のハードルは高く、ついていくのに必死でした。例えば、海外から日本にやってくるお客さんにユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の魅力を伝えるために、どのようなマーケティングプランが必要かといったテーマが与えられ、リサーチしながら英語でプレゼンテーションをするようなことをしていました。人前で整理して話すスキルは、そこで身に付きました。
同じコースの学生は多様なバックグラウンドを持っており、ともに助け合い、切磋琢磨(せっさたくま)しながら学ぶ環境は刺激的でした。もちろん遊びも一生懸命で、「日本全国の大学生の中で俺らが一番、大学生活を楽しんでるよね」とお互い確認し合うような、今振り返ると痛いコミュニティーでしたが、当時の仲間とは今でも家族のような関係性で付き合いが続いています。
―アメリカでの留学生活はいかがでしたか。
長期休暇の時に、大学のあるニューヨークから大陸を横断するアムトラックという鉄道に乗り、一番等級の低いチケットを取って3、4日かけて西海岸のロサンゼルスまで旅をした思い出が最も印象に残っています。出稼ぎ先のニューヨークから家族のいる故郷にやっと戻れるヒスパニック系の人や、毎年1年の締めくくりに最上級の寝台車両に乗るのが楽しみという老夫婦らと話をしながらの旅でした。親に出してもらった学費の額を聞いて、一日一日を充実して過ごさないことにはとても元が取れないと感じ、勉強はもちろんのこと、日本では会えない人、できない体験をしようと、もったいない精神を発揮していました。今でもどんなところに仕事のチャンスが転がっているか分からないので、ほとんどのお誘いは受けるようにし、会いたいと思った人にはできるだけの努力をして会うようにしています。
現場の空気を言葉に紡ぐ仕事に誇り
―就職活動は。
留学先から戻ってきたのが3年生の夏です。リサーチしてみると、放送局を受ける学生はすでにOB訪問に動き出していると聞いて、慌てて大学の就職課に行って、「アナウンサーになりたいのですが、どうしたらいいですか」というところから始めました。メディア業界を目指す学生のためのコースに通いながら、自分の周囲で業界に近い人を徹底的に探し出して100人ほどに会いました。大勢の方と話すうちに、こういう話をすると反応が良い、または悪いというのが分かってきて、おのずと面接対策ができたように思います。何のコネクションもなかったからこそできたことです。
本命のフジテレビに落ちた時はショックでしたが、その後、憧れだった須田さんにファンレターを書いて、毎日放送に決まったことを伝えたところ「いつか東京に来られることがあればぜひご飯でも食べましょう」と返事が来たので、その週末には会いに行きました
―アナウンサーの仕事はいかがですか。
2008年に入社してから、実は1回も風邪をひいたことないんです。これまで仕事で世界45カ国に行くなどやりたいことができ、毎日が楽しいから免疫力が保たれているのかもしれません。朝起きると、今日はどんな現場に行くんだろう、今週は一体誰に会えるんだろうといつもわくわくしています。アナウンサーの仕事はいつか人工知能(AI)に取って代わられるのではという人もいますが、現場に宿る空気を自分のフィルターを通してそしゃくし、言葉にして紡ぐことは人間のアナウンサーしかできないことだと思っています。
―大学を目指す人にメッセージを。
大学を目指していた当時の自分にメッセージを送るとしたら、自分の心の針が少しでも動くことにはがんがん飛びつけ、と言いたいです。それが三日坊主に終わってもいい。たくさんのものに触れる中で、自分の心のS極とN極がぴったりくっつく世界を見つけ出して、まっすぐ進んでほしいと思います。