▽みながわ 1992年京都市生まれ。2011年4月、神戸大学に入学。同11月、漫才コンビ「ネイビーズアフロ」を結成し、吉本興業のオーディションに合格。15年3月、神戸大学卒業。20年10月に第50回NHK上方漫才コンテスト優勝、21年4月に第56回上方漫才大賞新人賞を受賞。
「選んだ道 良いか悪いか自分次第」
ネイビーズアフロ(吉本興業所属) みながわさん
小学校5年生の時にお笑いの道に進む目標ができ、大学時代は勉学の傍らオーディションを受ける日々に明け暮れたというみながわさん。在学中は興味を持てなかったことでも、学んだことは今になって役立っていることがあるといいます。
M―1優勝し、心に響くお笑いを
―お笑いの道に進んだきっかけは。
小学生の時、吉本新喜劇にはまり、父に生で見てみたいとお願いしたら、最前列ど真ん中の席を取ってくれたんです。新喜劇が始まる前に漫才があって、退屈やろうなと思っていたら、トップバッターで出てきた2人組がめちゃくちゃ面白くて。当時はまだ無名でしたが、アウェーのような会場で大爆笑を取って帰っていく姿がまたかっこよかったんです。それがきっかけで漫才師になろうと思いました。その2人組がブラックマヨネーズさんで、2年後には漫才コンクール「M―1」で優勝しました。
―高校生の時に相方のはじりさんと出会ったのですね。
高校の文化祭でM―1グランプリのような催しがあって、はじりとは違う友達を誘って出て優勝しました。人に笑ってもらう喜びを体感して漫才へ進む道がより現実的になった瞬間でした。はじりが別の友達とコンビを組んで出ているのを見て、彼と組みたいと思い口説きました。高校生や大学生が自主的に漫才の舞台を運営する場があって、そこに2人で出るようになりました。
―大学選びはどのように。
正直に話すと、京都の大学に行きたかったのですが、模擬試験の成績や自分の得意科目が生かせる現実的に受かりそうな大学ということで選びました。相方のはじりも結局同じ大学に進むことになったんです。神戸はおしゃれでハイカラな港町というイメージを持っていたのですが、大学に通いだしてみると本当にその通りでした。
―どのような大学生活でしたか。
大学2年生になったら、はじりと吉本総合芸能学院(NSC)という吉本の新人タレント養成所に入るつもりでいたのですが、お笑い芸人だった友人から、オーディションに受かれば吉本興業に入れるという話を聞いて、1年生の時からオーディションを受けまくりました。大学の授業が終わってから、オーディションがある日には大阪に出ていました。エントリー費用を捻出するために、オーディションのない日はアルバイトに精を出していました。2年生の前期は、お笑いに生活の比重を置きすぎて取得単位がゼロでした。相方は、大学の間は僕に付き合ってあげようという気持ちだったと思うのですが、僕は何としてでもお笑いの道に進みたかったので、結果を出さないと本気になってもらえないと思って必死でした。
大学で得た知識、今も役に
―大学での学びはいかがでしたか。
入学した学部は発達科学部という教員を養成する学部で、学科では入学式の後に、みんなの前で一人一人が自己紹介をする習慣がありました。その後も、学科の行事として一緒に六甲山に登ったり、六甲全山縦走に参加したりといった機会がよくあり、とても仲が良くなりました。卒業後は皆さまざまな道に進んでいて、このことはあの人に聞こう、あれはあの人に聞こうと頼ることがあります。大学の友達は中学、高校の友達と比べると関係が希薄なのかと思っていたのですが、そんなことはなく、交友は長く続いています。
―印象的な授業はありますか。
学部の学生はそれぞれ目指す先生の教科がばらばらだったので、学部で学べる範囲が非常に幅広かったのが楽しかったですね。周りには転部する学生も結構いて、発達科学部から海事科学部に行ったり、逆に発達科学部に転部したりしてくる学生もいました。大学に入ってからでも新たに好きな道が見つかったら、そちらに行けるのは自由でいいなと感じました。
僕自身は、科目を選択する際にも後々お笑いに役立てばいいと考えて選んでいました。人の心の動きが分かれば、笑うメカニズムも理解できるのではと考え、心理学の授業を取ったのを覚えています。結局、そんな簡単なものではありませんでしたが、学問の奥深さを知ることができました。1年生の時に取った教養原論という授業は、もともと自分の興味が薄かった分野だったのですが、今でもその内容は頭に残っていて、今お客さんに向けて授業をするイベントではその時に得た知識、雑学が役立っています。
―これからの目標は。
上方の古き良き漫才が昔から好きだったので、僕たちもそこを極めていきたいと考えています。そして目標は、あと3年参加資格があるM―1の決勝の舞台に立ち、優勝することです。新しいことに挑まないと評価されない世界ですが、僕たちのスタイルを守りながら、多くの人の心に響くお笑いが提供できたらいいなと思っています。
―これから大学を目指す人たちにメッセージをお願いします。
僕は大学のことを深く知ることなく受験して入学したのですが、結果として充実した4年間を送ることができました。選んだ道を良い道、悪い道にするのは自分次第です。仮に目標にしていた大学に行けなかったとしても、そこで新たな魅力、すてきな縁が見つけられるはずです。大学生の期間は皆さんが想像している以上に自由な時間が多いです。もし、やりたいことがあれば、それがお金のかかることだとしても、親御さんの力を借りてでも悔いのないようにやってほしいと思います。