神戸大学
幅広い領域 学び究める
国際港湾都市に立地する神戸大学は「人文・人間科学系」「社会科学系」「自然科学系」「生命・医学系」の4大学術系列の下、10学部15研究科で約1万6千人が学生生活を送る国立総合大学だ。幅広い領域を網羅し多様な学びが深められる強みを生かし、ビジョンに掲げる「知と人を創る異分野共創研究教育グローバル拠点」を目指した先進的な取り組みを、社会とも連携しながら進めている。
SDGs実現へ成果還元
神戸大学は、「持続可能な開発目標(SDGs)」に総合大学ならではの姿勢で取り組む。理系・文系の枠を超えた異分野共創・協働により先端教育・研究を進め、多様な人材を育成し、その研究成果を自治体や産業界とともに国内外に発信して社会実装につなげていく考えだ。
生命医学系では、人生100年時代において重要となる健康長寿とwell beingの実現に取り組む。近年、認知症やフレイル・生活習慣病の予防に効果的とされる研究成果が明らかになってきたことから、「頭と体の運動教室」「健康づくりセミナー」「健康状態の見える化」をパッケージ化したサービスを大学のさまざまな研究分野の知見を統合して開発した。
スタート時の拠点型にコロナ禍でオンライン型も加わり、JA共済連と協業して全国の農家らも支援。自治体と連携して指導・研究を進め、地域の医療・介護費の削減につながる可能性もある。認知症予防の研究とプログラム普及の相互作用成果を通じて豊かで幸せな高齢社会づくりに貢献することは、「すべての人に健康と福祉を」掲げるSDGsの目標達成にもつながる。
健康、医療、脱炭素に注力 省エネ、抗ウイルスのAI空調も
体に優しい医療を提供するために新規創薬や医療用ロボットなど先端医療機器開発にも力を注ぎ、人材育成の体制を充実させている。
バイオテクノロジー分野もSDGsへの貢献度が高い。「バイオ生産工学研究室」は持続可能な消費・生産のパターンを確保するため、生物が作り出すバイオ分子の特性をものづくり技術などに生かす「バイオものづくり(合成生物学)」の研究開発を進めている。温室効果ガス排出量実質ゼロを目指す「2050年カーボンニュートラル」でも期待を集めており、今年4月に岸田首相、末松文科相、萩生田経産相らが相次いで視察に訪れた。
特に力を入れる研究開発が水素細菌だ。地球温暖化の原因物質といわれるCO2から生分解性プラスチックを直接生産。これを原料に、農業用プラスチックフィルムや使い捨て食器などを製品化できる一石二鳥の細菌で、ゲノム改変により他の物質も作れるようになる。CO2を原料とするバイオものづくりは、CO2削減だけでなく石油依存からの脱却を図って産業革命にもつながる取り組みだ。関連する「先端バイオ工学研究センター」では、教育研究実績や関係機関との連携関係を基に多様なバイオ有用物質の生産など社会実装につなげ、バイオエコノミーをけん引する役割を担う。
「先端膜工学研究センター」は、分離膜や機能性薄膜などの膜技術を追求する国内初かつ唯一の総合的な膜工学研究拠点で、各研究室で多様な膜を扱う。例えばCO2だけを透過する分離膜を用いれば大気中への排出量が削減でき、地球温暖化の抑制・カーボンニュートラルにつながる。水をきれいにする分離膜を用いれば、水道水を効率よく製造したり、下水処理施設で水と濁質物質をコンパクトな装置で分けて、きれいにした水を河川や海へ戻したりできる。20年度は開発したCO2分離膜や水処理膜技術を3件実用化した。
さらに注目を集めるのが、省エネと抗ウイルス対策を両立した世界初のAI空調システムだ。一般的な空調システムは機器周りの効果だけだが、AIを活用して気流・人流に基づいた送風調節機能と除菌システムを開発することで、40%以上の省エネと抗ウイルス対策を実現。「工学研究科」「医学研究科」や「産官学連携本部」が開発と効果検証をしている。医学部付属病院、羽田空港や関西国際空港のほか、伊勢丹新宿本店ではグループ店舗への展開を目的に実証事業を実施。全国の百貨店へ展開した場合、500万トン以上のCO2削減効果が見込まれるという試算もある。
起業家育成へ実践教育
ベンチャー約40社輩出 独自の投資ファンド創設へ
組織的な社会実装の実現を目指す神戸大学は、学内に戦略・企画立案をする「産官学連携本部」、学外には戦略を実行する会社「株式会社神戸大学イノベーション」を設立して連携体制を図っている。
産官学連携本部内には中心となる「共同研究・オープンイノベーション推進部門」や「知的財産部門」のほかに、大学発ベンチャーを育てる「アントレプレナーシップセンター」を設置。全学生や社会人を対象に、起業家育成の実践教育、スタートアップや活動の支援などを行っており、これまでに約40社の大学発ベンチャーを輩出している。
アントレプレナーシップセンターの実践教育の一つとして、「神戸大学起業部」も今年5月に創部したばかり。チームでビジネスプランを作成し、国内外のコンテストに応募しながら起業を目指すクラブ活動で、ビジネスデザイン力を身に付ける。社会に役立つ価値創造力の涵養(かんよう)を目指すVスクールも設置されている。
そのほか、起業直後の資金需要に即応し、切れ目のない支援で成長を促す大学独自の投資ファンドも2022年度に創設する。地元の金融機関や企業から30億円程度を集め、有望なベンチャーに1千万円規模を投資する計画。発掘・起業準備ステージに必要な「GAPファンド」、育成ステージを担う「神戸大学ファンド」を用意し、大学発ベンチャーを後押しする。
多機能練習船「海神丸」
4月に初航海、運用開始 最先端研究設備、災害支援も
海のグローバルリーダー輩出を目指す神戸大学では、多機能練習船「海神丸」(892トン)が今年4月に初航海し、運用を開始した。
30年以上活躍した「深江丸」に代わる「海神丸」は、イルカをモチーフにした流線型のフォルムが特徴だ。ゆとりある実習環境や男女共同利用に配慮した船内住環境が充実。多角的な海洋底探査・観測のための最先端研究機能のほか、災害時支援機能も備えている。
学長に聞く
異分野共創 未来を創る
―目指す大学像は。
神戸大学は1902(明治35)年設置の神戸高等商業学校を創立の起点として、120年の長い豊かな歴史があります。開学以来、「真摯(しんし)・自由・協同」の精神と「学理と実際の調和」の理念を重んじてきました。昨年度から理念を具体化する新たなビジョンとして、「知と人を創る異分野共創研究教育グローバル拠点」を掲げています。文理の枠組みを超え研究力を高め総合知を創出する一方、社会が求める優秀な研究者や実践力のある学生を育てる考えです。そして、知と人を創る環境を整えるため、産官学連携のイノベーション・エコシステム確立にも力を入れています。
―具体的な取り組みは。
産官学連携で取り組んだ神戸医療産業都市の一大プロジェクトが国産初の手術支援ロボット「ヒノトリ」で、承認後1年半ほどで国内に約20台が導入され、200例以上の手術が行われました。今後は普及や改良と同時に、手術手技のAI解析や遠隔医療システムの開発に取り組みます。未知の創薬や、健康長寿を目指した認知症予防の研究も時代の要請です。また、生物資源とバイオ技術で地球規模の課題と経済発展の共存を目指す「バイオエコノミー」や、環境問題の主要対策として注目の「水素菌」や「CO2分離膜」は、カーボンニュートラルな社会の実現に欠かせない先端工学研究です。バランスの取れた本学の強みと特色ある研究を発展させ、研究成果である知を生かし社会実装する取り組みを進めていきます。
―受験生へ一言。
海、山、街、進取の気風に富む国際都市神戸で多様な学びを深められるのが本学。
神戸大学は、君に寄り添い、君とともに未来を創ります。
在学生からのメッセージ
人とのつながり 大切に
国際人間科学部子ども教育学科2年 三木琴音さん
神戸市出身で、幼い頃から神戸大学に憧れを持っていました。学部・学科は、教育だけではなくグローバル社会についても学べるところにひかれて選びました。学校教育が専門ですが、他学科の社会教育も選択し、二つの相対する教育の長所や課題について俯瞰(ふかん)的に学ぶことに面白さを見いだしています。学習課程に追われる毎日ですが、日本に居ながら国際交流を経験したいと考え、今春から留学生チューターになりました。海外からの留学生の受け入れが徐々に戻ってきているので、入国手続きのサポートなどを通じて留学生と会話したり、海外の教育事情を学んだりしています。将来の夢はまだ漠然としていますが、人とのつながりが感じられ、神戸大学で培った学びを生かせるような職業に就きたいです。
掲示板
講座や120周年記念催し
神戸大学では、地域社会への貢献という使命から、大学における教育および研究の成果を広く社会に開放し、社会人の教養を高め、文化の向上に資するため、公開講座や各種イベント等を開催しています。
公開講座では、人文・社会科学、自然科学、生命・医学など、さまざまな分野の多岐にわたるテーマを、本学の教員を中心とした多彩な講師の方々にお話しいただきます。
また、今年は創立120周年を迎えることから、さまざまな120周年記念事業を予定していますので、ぜひご参加ください。
なお、申し込みを希望される場合は、既に受け付けを終了している場合がありますのでご注意ください。
詳細はホームページにてご確認ください。
大学概要
住所 | 六甲台=神戸市灘区六甲台町1の1 楠=神戸市中央区楠町7の5の1 名谷=神戸市須磨区友が丘7の10の2 深江=神戸市東灘区深江南町5の1の1 |
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アクセス | 六甲台=阪急電鉄六甲駅、JR六甲道駅、阪神電鉄御影駅から市バス36系統「鶴甲団地」行き |
学部 (本年度定員) |
文学部(100人)、国際人間科学部(370人)、法学部(180人)、経済学部(270人)、経営学部(260人)、理学部(153人)、医学部(272人=医学科112人、保健学科160人)、工学部(565人)、農学部(160人)、海洋政策科学部(200人) |
教員 | 教授511人、准教授347人、講師99人、助教289人、助手29人 |
在学生 | 15870人(5月1日現在) |
ホームページ | https://www.kobe-u.ac.jp |