2分野学び独創性培う

芸術文化観光専門職大学 2023

芸術文化観光専門職大学

 

2分野学び独創性培う

2021年春に開学したばかりの芸術文化観光専門職大学(Professional College of Arts and Tourism)=略称CAT=は、芸術文化・観光学部、同学科の1学部1学科で、日本を代表する劇作家平田オリザさんが学長を務める。理論と実践を繰り返しながら「芸術文化」と「観光」という異なる二つの専門分野を架橋して学ぶことで、独創的な人材育成を目指す。

コミュニケーション教育

学びの土台、演劇的手法活用 世界的アーティスト、観光実務者ら指南

文化施設の企画運営や地域との関わりなどを学ぶ「アートマネジメント概論」の授業

芸術文化観光専門職大学では、全員が「芸術文化」と「観光」の両分野を学ぶ。川目俊哉副学長は、「二つの異なる専門分野を持ち、その上に幅広い知識が乗っている『π(パイ)型人材』を育成する」とし、「両分野を架橋することで、蛸壺(たこつぼ)に陥らない柔軟な発想で地域を元気にする人材になってほしい」と話す。
同大の学びの土台には演劇的手法を用いた「コミュニケーション教育」があり、他者と対話し、意見をすり合わせてまとめ上げていく能力を養う。
芸術文化分野では、パフォーミングアーツの演劇とダンスを世界的に活躍するアーティストらから教わることができる。また、劇場やホールなど文化施設の企画運営のノウハウや地域との関わりなどを学ぶ「アートマネジメント概論」もまちづくりを考える本学の特徴となる科目だ。

「理論」と「実践」繰り返し徹底

鉄道会社の制服を着て、実際の鉄道業務を体験する「観光交通業実習」=JR豊岡駅

観光分野では、観光の現場経験豊富な実務家教員から観光分野の基礎からまちづくりまでを学修し、芸術文化をコンテンツに生かしたこれからの観光のあり方を探っていく。
中尾清教授(観光学)は「但馬地域全体が一つの舞台とすると、観客=観光客にいかに楽しんでもらうか、どうマネジメントするかを考えることは同じこと。海山川のある自然豊かな但馬は実習先としても最適だ」と強調。「好奇心のある方に来ていただければ、サポートする環境は整っている」と話す。
授業の3分の1(約800時間)が実習で、宿泊施設や劇場など100以上ある実習先に赴く。
1学年を4期に区分する「クォーター制」で、「第1、3クォーター」は講義中心、「第2、4クォーター」は実習中心と、「理論」と「実践」を交互に繰り返すことも重要な学修スタイルだ。単なる体験に終わらず、問題意識を持って実習先に臨むことで実践的な学びが身に付き、さらに学年を追うごとに取り組みも高度になっていく。

専門知識生かし地域課題解決

但馬18高校でワークショップ JR赤字区間 「観光列車」の企画予定

芸術文化観光専門職大学の教員らの専門知識を生かして、具体的な地域の課題解決に取り組む拠点「地域リサーチ&イノベーションセンター(RIC)」では、開学初年度から事業を展開し、多くの学生が積極的に参加している。
但馬地域の3市2町の高校(全18校)では、演劇的手法を用いたコミュニケーションワークショップを実施。各自治体それぞれの現状や課題に合わせて取り組んでおり、香美町では、起業した後の事業継続ができているかどうか実態を調査し、地域資源を生かした戦略を提案。朝来市では創業支援施設の利用者に独立や事業拡大に向けた経営アドバイスなどをしてきた。
地元企業とも連携協定を締結しており、全但バス(養父市)では、学生の意見を取り入れ、高い視点の景色を楽しむ車外カメラを新車両に採用した。

RICセンター長の川目俊哉副学長は「全国各地から入学した異なる背景を持つ学生と教員の専門知を組み合わせることで、これまで見えていなかった地域の宝物に光を当てられる可能性がある。学生の地域を見る視点や編集力もこのような活動を通じて鍛えられる」と意義を語る。
平田オリザ学長がディレクターを務め、毎年秋に数週間にわたって開催される国際的な「豊岡演劇祭」も、学生が企画・運営に携われる貴重な実習の場だ。

現実的な地域課題も見つめる。今春、JR西日本の路線で但馬地域の一部が赤字区間として発表されたが、課題解決に向けたアプローチとして「観光列車」を企画する予定だ。また、演劇祭を見に訪れた人たちの宿泊施設を、どう豊岡市中心街から分散させていくかも考える。
平田学長は「学生が加わることで、今までとは違う視点からの観光ビジネスモデルができ、展開できるはずだ」と強調する。

本格的な劇場、大道具など制作室も

学内の劇場(講堂)。舞台・座席の可変性が高く、音響・照明設備も最新

「実習棟」には本格的な作品も上演できる劇場(収容人数220人)や大道具制作室、小道具制作室、染め物衣装制作室などが完備されている。
「海外の劇場に多い形式で、発表だけでなく、創作する場も備わっていることが特徴」と強調するのは杉山至准教授(舞台美術)。スタッフワーク全般ができ、「裏方の部分も含めて劇場文化を体感し、全ての工程を学ぶことができる」と話す。
劇場自体も可変性の高いタイプで、座席は移動・収納が可能。今年5月に一般上演された作品では、舞台を中心にして両脇に座席を配置。作品づくり全てが学生の実習の場で、俳優として出演するだけでなく、本格的な音響・照明装置も駆使し、大道具や小道具、衣装制作から舞台監督、制作、広報等スタッフワークまで全てを担う。
小劇場や屋外広場、「学術情報館」の大階段などで作品発表することも。

日々の自主学習は「ラーニングコモンズ」を活用し、ホワイトボード前でディベートする姿も見られる。
日常的にコミュニケーション力を磨く狙いで、1年目はシェアハウス方式の全寮制だ。4人1部屋で、各個人の個室のほか、共有のキッチンやリビングがあり、各階に共有のスペース、ランドリールームを完備している。1階の交流室では演技練習に励んだり、映画鑑賞を楽しんだりしている。

学長に聞く

共感力育み地域に貢献

―教育理念は。

平田オリザ学長

「自立」「共感」「公共性」の3本柱です。自立した学生を育てるために経営学も必須科目です。寮生活はその一つで、4人一部屋ですが、同じ地域の出身者が一緒にならないようにしています。二つ目は他者の理解、異なる価値観を持った人の言動に同意する必要はないけれど、共感することです。新型コロナウイルス禍が収束すると、円安で観光業は特に突風のような追い風になると思います。海外発信や異文化を理解するために共感力を身に付けてほしい。最後は世界的な公共性です。例えば但馬の観光業は海洋資源に支えられており、「持続的に利用するためには」などの視点が必要です。

―開学2年目を迎えて。

但馬は立地に恵まれており、多くの授業は対面で行うことができました。ですが、国際交流はできず、さらに今の高校生は特に、コロナ禍で海外に行った人がほぼゼロです。コロナ後を見据えて徹底的に力を入れて、提携校を増やします。最近では、韓国で多くの俳優を輩出する大学と提携を結びました。2期生が加わってキャンパスライフが少しずつ始まり、地域に若者も目に見えて増えました。

―受験生に向けて。

芸術、観光の両方が地域の課題とつながっているので、学んだことがそのまま地域に生かせます。理念とも通じるのですが、入試では共感力を見ています。好奇心や自身と他者に興味を持ち、異文化、異なる価値観を持った他者から吸収できる学生になってほしいです。自然豊かで食べ物がおいしく、人情があって、暮らしやすいこの但馬で、4年間思いっきり自分のやりたいことをやってほしいです。

在学生からのメッセージ

学生集まり化学反応

芸術文化・観光学部2年 北原真悠さん

 私自身、旅行や演劇で心が元気になります。新型コロナ禍で、一時的に制限された余暇や娯楽を、さらに途絶えさせてはならないと考え、マネジメントも学べる本学を選びました。授業は芸術、文化、観光の第一線で活躍される人から理論と実践を教わり、劇場や劇団など成果を発信できる環境もあります。学生や教員らでつくる演劇公演では、コロナ禍でも多くの地域の人が見にきてくださいました。全国から目がキラキラしている学生が集まっているのが特徴です。それぞれ違うものに熱を注いでいて、集まると化学反応が起きます。この大学は、自分の新しい側面も発見できる環境が備わっています。学ぶ中で目指すものも変えられ、自分の可能性をたくさん試せて、磨き上げられると実感しています。

掲示板

オープンキャンパス情報

本学の大学紹介、模擬講義も体験できます。
併せて、進学個別相談会も開催します。ぜひ、ご参加ください。
詳しくは大学HPでご確認ください。

開催日程 場所
6月26日(日) WEB開催
7月17日(日) 大学キャンパス開催
8月5日(金) 東京会場開催

大学HPはこちら

大学概要

住所 豊岡市山王町7の52
アクセス JR豊岡駅より徒歩7分
学部
(本年度定員)
芸術文化・観光学部(芸術文化・観光学科80人)
教員 教授13人、准教授7人、講師12人、助教7人、助手1人
在学生 166人(5月1日現在、1・2年生のみ)
ホームページ https://www.at-hyogo.jp/

 

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