武庫川女子大学
文理の枠超え学び進化
武庫川女子大学は、約1万人の学生が学ぶ全国最大規模の女子総合大学だ。理系、文系、芸術からスポーツまで学びの幅が広く、近年は建築学部や経営学部、社会情報学部が次々に誕生し、関西の女子大をけん引する。2025年度は女子大初の環境共生学部が開設され、13学部21学科となった。理系、文系の枠を超えた柔軟で多様な学びがさらに進化している。新たな人材育成方針「MUKOGAWA COMPASS」の下、さまざまな分野で活躍する女性の人材育成に力を入れる。
今春開設 環境共生学部
地球規模の課題に向き合い

甲子園浜でのフィールドワークで、海水から抽出した微生物を確かめる環境共生学部の学生たち=西宮市
「うわっ、カニがいっぱい」「こっちはゴカイがいるよ」―。5月中旬、潮が引いた甲子園浜に学生たちの歓声が響いた。河川や沿岸域の水環境と生態系の実態を探るフィールドワーク。バケツを手にした学生たちは、長靴で干潟をぐんぐん進み、発見があると観察し、海水をすくって塩分濃度や酸素濃度を測定した。
今年4月に開設した環境共生学部では入学直後から県内外にフィールドワークに出向く。温室効果ガスの排出、異常気象、海洋や大気の汚染など、地球環境を取り巻く課題に新たな発想で突破口を開く人材を育成するためだ。文部科学省の「大学・高専機能強化支援事業」に選定されている。
県内外でフィールドワーク
実験、座学で研究力向上
「フィールド・環境施設実習」では、身近な里山・里海や環境保全関連施設でさまざまな課題を体感。現場で見いだした課題を集約し、チームで課題解決を探っていくプロジェクト型のプログラムにつなげる。1年後期から3年前期まで続く実践型の「社会連携プロジェクト」をベースに、ラボでの実験、座学で段階的に研究力を身に付け、課題解決力を高める「フィールド&ラボ」の立体的なプロセスが特長。行動と専門的な学びをつなげ、環境問題に求められる幅広い知識や実践力を身に付ける。
柔軟性のある科目選択も特徴の一つだ。防災・減災や環境保全などの「保全・まちづくり分野」、エネルギーやバイオテクノロジーなどの「生命・資源応用分野」の二つの分野から、興味や将来の目標に応じてカリキュラムを組み立てられる。
徹太郎・環境共生学科長 02-240x300.webp)
環境共生学科長來海徹太郎氏
來海(きまち)徹太郎・環境共生学科長は「環境といっても幅広い。16人の教員はそれぞれ異なる専門分野を極め、環境分野を網羅している。フィールドワークや環境施設実習では複数の教員が担当し、多角的な視野で物事を考えることを学べる」と話す。また、「自然科学系の学問なので理系の学びが中心となるが、環境に興味のある人なら文系理系問わず、ぜひ来てほしい。個々の授業の中で文系出身者にも着実に理解できるように工夫し、場合によっては個別対応もする」と青野光子学部長が語る通り、フォロー体制も万全だ。学生と教員との距離も近く、落ち着いた雰囲気の中で学習に集中できる。

環境共生学部長青野光子氏
近年、環境問題に取り組む企業や公共団体がますます増え、環境に関する専門知識とスキルを身に付けた人材のニーズは高い。新学部開設に当たって企業に実施した人材需要アンケート調査でも、「持続可能な社会の実現に貢献できる人材を育成する」という同学部に対する期待の声は多く、業種を問わず活躍の場が広がると期待される。
恵まれた周辺環境と施設
名塩野外活動センター 丹嶺学苑研修センター
フィールドワークのための恵まれた周辺環境や施設設備も魅力だ。青野学部長は「本学は六甲山を背景に、武庫川が流れ甲子園浜にも近い。1、2年からフィールドに出て体験学習することで、さまざまな気づきがあり、身近な環境問題を実感として意識でき、専門的な興味を深めるきっかけになる」と話す。
名塩野外活動センター(西宮市)と丹嶺学苑研修センター(神戸市北区)は、いずれも山間部に位置し、豊かな自然環境の中でフィールドワークを思う存分実施できる。例えば名塩野外活動センターでは、野生動物の通り道にウェブカメラを設置して観察し生態系を考察する。学生と共にカメラの設置位置なども調べながら進めていく計画だ。さらに産官学のコラボレーションで、地域との連携も深めプロジェクトにつなげていく。
先進機器備える研究室
知的好奇心刺激する実験

最新の高度な分析装置・実験装置が導入された研究室=浜甲子園キャンパス
薬学部があり自然科学系の学科が集まる浜甲子園キャンパスは、実験・研究設備が充実している。環境共生学部の開設にあたり、分析装置や実験設備など各専門分野の新たな機器を整えた。研究棟の4、5階は、先進的な機器が使いやすくレイアウトされた研究室がずらりと並ぶ。
環境分子イメージング研究室の矢野義明教授の研究室では、蛍光色素で着色した細胞膜を高度な顕微鏡で観察する実習や、光を使って化学物質の種類を調べる実験など、好奇心を刺激するさまざまな学びを実施。矢野教授は「ラボでの実習や実験はフィールドワークと同じく、まずは体感し興味を持ち、そして理解を深め研究していく。未知への追究を楽しむ姿勢は、社会に出ても大いに役立つはず。好奇心をもって楽しみながら学んでほしい」と話す。
それぞれの研究室では、学生や教員が意見交換できる場を多く設け、互いに刺激を受けながら理解を深めていく学びの環境づくりを重視している。
9月供用開始 プロジェクト棟
「社会連携プロジェクト」の拠点に
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建設中の「プロジェクト棟(イメージ図)」。環境に配慮した設計で、今年9月からの利用を予定している
現在建築中のプロジェクト棟は、環境共生学部の学びのベースとなる実践型の「社会連携プロジェクト」のための場所だ。木造2階建てで、吹き抜けのあるラウンジの南と北の1、2階にプロジェクトルームを計4室配置した。自由度の高いデザインで、環境への配慮から木材や珪藻土系の自然素材を多用。風の通り道や陽光を各所に取り入れ、日常から環境との共生を感じる設計となっている。
自由度高いデザイン 学生ら交流の機会多く
青野学部長は「デスクワークもできるし、グループワークもできる。作業用のスペースもあり、規模を拡大したり、ついたてで区切ったり、フレキシブルに使えるよう設計している。広々としたフリーな空間で、お互いに刺激を受け合い、コミュニケーションの機会が多い仕掛けとなっている。研究室や講義室とは異なる学びの場となる」と話す。8月末に竣工(しゅんこう)、後期が始まる9月から学生たちの居場所となる。
学長に聞く
オンリーワンの大学へ
―特色を教えてください。

髙橋享子学長
母体の武庫川学院は1939年、教育者公江喜市郎がイギリスの全人教育を範として創設しました。その10年後に開学した大学は時代に先んじて学びの領域を広げ、近年は建築、経営、社会情報などを開設。今年4月に環境共生学部を開設して13学部21学科となりました。学生数は1万人、卒業生は20万人超に上ります。医学部こそありませんが、薬学科から看護、食物栄養、心理、社会福祉、音楽療法士を養成する応用音楽学科に至る「コ・メディカル(医師以外の医療従事者)」養成に向けた学部学科の充実は県内随一であり、国家試験合格率も全国平均を大きく上回っています。学科をまたぐプロジェクトや、産官学に金融を加えた社会連携も活発です。
―将来のビジョンは。
こうした実績が女子総合大学の「ナンバーワン」を支えてきました。少子化が迫るこれからの時代には、ここにしかない「オンリーワン」の大学であることが必須です。本学は8研究科14専攻を擁する大学院、デジタルトランスフォーメーション(DX)に特化したリカレント教育センターなど、卒業後も「学びたい」という思いに伴走する仕組みがあります。アメリカに分校を持ち、総合大学ならではの領域架橋的研究の活性化と高度化、国際化を進め、ここだから得られる成長とメリットを最大化していきます。
―どんな人に学んでもらいたいですか。
人材育成方針「MUKOGAWA COMPASS」で八つの資質や姿勢を明示し、「自ら考え、動く」人材の育成を進めています。人生を能動的に切り開き、社会に貢献する意欲がある人を、総力を挙げて支援します。
在学生からのメッセージ
国内外で社会貢献実践
文学部英語文化科4年(現・英語グローバル学科) 中島美結さん
日本最大規模の女子総合大学で、教育環境や学生支援が整っている大学だと感じています。オープンキャンパスの雰囲気や、アメリカ分校への留学プログラムに魅力を感じて入学しました。新型コロナの影響で、留学はオンラインとなりましたが、リスニング力やスピーキング力の向上を実感。自分の意見が求められ、主張する機会も多く、積極的にコミュニケーションを取る姿勢が身に付きました。
入学後は、学内公認ボランティア団体に所属し、広報担当として交流サイト(SNS)で情報発信をしています。能登半島地震発生後には、団体で募金活動も行いました。学生の行動が、国内、海外への貢献につながることにやりがいを感じています。将来は航空業界で働き、グローバルな視点で社会に貢献したいです。
大学概要
| 住所 | 中央キャンパス=西宮市池開町6の46 浜甲子園キャンパス=西宮市甲子園九番町11の68 上甲子園キャンパス=西宮市戸崎町1の13 |
|---|---|
| アクセス | 中央=阪神鳴尾・武庫川女子大前駅徒歩約7分 浜甲子園=阪神甲子園駅徒歩約15分 上甲子園=JR甲子園口駅徒歩約10分 |
| 学部 (2026年度定員予定) |
文学部(430人)、教育学部(240人)、心理・社会福祉学部(220人)、健康・スポーツ科学部(280人)、生活環境学部(195人)、社会情報学部(180人)、食物栄養科学部(280人)、建築学部(85人)、音楽学部(50人)、薬学部(165人)、環境共生学部(80人)、看護学部(80人)、経営学部(200人) |
| 教員 | 教授220人、准教授104人、講師49人、助教34人、助手58人(2025年5月1日現在) |
| 在学生 | 10041人(大学院含む)(2025年5月1日現在) |
| ホームページ | https://www.mukogawa-u.ac.jp/ |