兵庫県立大学
国際性を養う実習充実
兵庫県立大学は、国際商経、社会情報科学、工、理、環境人間、看護の6学部と9大学院研究科、5付置研究所、付属中学・高校を擁する。世界最先端の研究施設をはじめ、県内の多様な施設と連携した恵まれた教育・研究環境を持つ。全学部の学生が履修できる「グローバルリーダー教育プログラム」のほか、留学生とともに暮らし、英語で授業を受ける国際商経学部のグローバルビジネスコースなど、グローバル教育は特に充実している。
全学部生が履修可能な副専攻
グローバルリーダー教育プログラム
所属学部の「主専攻」以外に、各自の学びの機会を広げるため、学部の枠を超えて設けられた三つの「副専攻」が用意されている。その一つ「グローバルリーダー教育プログラム(GLEP)」では、専門知識に加え外国語コミュニケーション能力とグローバル教養を身につけ、国際社会で活躍する人材の育成を目指す。
語学・問題解決力高め海外実習も
GLEPは、語学力や対話力を養成する「国際コミュニケーション科目群」と、リーダーシップやグローバル教養、課題発見・解決力を養成する「リーダーシップ科目群」からなる。最大の特徴は、海外で学ぶ機会が用意されていることだ。「グローバルプロジェクト入門(海外)」は1~2週間の海外実習プログラムで、海外の大学や企業などを訪問し、グローバルな視点で考え、社会課題の解決に向けて主体的に取り組む力の習得を目指す。また、選抜された学生のための「海外実務体験」もある。世界各地の兵庫県海外事務所や現地企業、NPO、大学などで就業体験を行い、リーダーシップ力を養成するためのより実践的な学びの機会を提供する。
海外での経験が自信に
「英語の文章構成力がついた」
副専攻では、異なる学部の学生と共に、交流を深めながら学ぶ。「授業で英語のプレゼンテーションやフィールドワークを重ねるうち英語で文章を構成する力がついた。英国・ロンドンへの海外研修の経験を生かし、将来は海外と日本をつなぐ仕事に就きたい」と環境人間学部の今津彩華さん(2年生)。
看護学部の小原菜々江さん(3年生)は「海外研修ではオーストラリアのパースに行き、現地で交流した大学生とは今も連絡を取り合っている。将来は、日本に住む外国人の方や、外国での医療・公衆衛生に関わる活動をしたい」と話す。
国際商経学部3年生の朝原令さんは、日本が誇る食を支える生産者と直接関わり、その魅力を世界に広める仕事に就くことを目指している。「その夢を実現させるために、海外実務体験では香港を行き先に選び、現地のシェフを招いた会議へも参加することができた」と語る。
「課題を行動に反映させたい」
社会情報科学部の松元亮太さん(2年生)は、「情報を集めること以上に、そこから感じ取った課題を行動に落とし込むことの大切さをGLEPで学んだ。学部で学んでいるデータ分析を道具にしながら社会課題の解決に落とし込んでいきたい」と話す。
理学部の2年生、田上隆史さんは、野鳥の行動や生態をフィールドワークによって解明する研究者を目指している。「季節による野鳥の移動を調べるには海外の研究者やその地域の住民との連携が大切」とし、ルーマニアの海外研修では「母語以外の言語でも自分の意見を相手に伝える自信がついた」と言う。
工学部3年生の田村彗智さんは、国際社会、地域社会での課題解決に取り組む「グローバルプロジェクト演習」にひかれて履修。「演習では学祭にハラールカレー店を出すプロジェクトに取り組んだ。そこで仲良くなった他学部の友達とインドに10日間旅行に行ったのもよい思い出」と語る。
〈国際商経学部グローバルビジネスコースの学生に聞く〉
全ての講義やゼミを英語で学び、1年時には国際学生寮に入寮して留学生と共に生活するほか5週間の海外語学研修などが組み込まれた国際商経学部のグローバルビジネスコース(GBC)。そこで学ぶ4人の学生に、GBCでの学びで得られたことを聞いた。
豪での体験で自身に変化
高校時代にESS(英語クラブ)に所属していたという高橋伽菜さん(3年生)は「入学時は英検2級レベルだったが、レベルごとにクラス分けされる1年春学期の英語の授業で、秋学期からの留学生を交えた英語で学ぶ専門科目を受ける準備ができた」と話す。2年時には国際学生寮の寮長を務め、その後1年間休学してオーストラリアで現地の学生に日本語を教えるインターンを経験。「4年で卒業するという固定観念に縛られていたが、周りの学生の多様なキャリアを知って自分らしく生きようと考えられるようになり、人生の選択肢が広がった」と自身の変化を感じている。
プレゼン力生かす仕事に
帰国子女の中山穂乃華さん(3年生)は「英語を使った仕事に就きたい」とGBCを志望。「留学生を交えたグループワークで議論、プレゼンテーションをする授業が多く、英語力、チームワークが鍛えられた。マーケティングをもとに商品開発や販促を考える授業や、実際に企業で働いている方が事業戦略などについて語る実践的な授業が多い」と感じている。国際学生寮での生活では一緒に旅行に行くインドネシア人の友人もできたそうで、将来は「プレゼン力」と英語力を生かし海外の企業と交渉する仕事に就きたいと話す。
互いの文化知ること大切
インド人留学生のバット・シッダントさん(4年生)は、3年余りの日本での大学生活を通して「国際交流のためにはお互いの文化を知ることが最も大切だと気付いた」と、日本人学生の友人と積極的に銭湯や祭りなどの日本文化を体験している。卒業論文は「日本の労働力不足に人工知能や移民政策がどう寄与できるか」をテーマに選んだ。大学院への進学を目指し、大学院卒業後は、日本とインドの懸け橋を務める仕事に就こうと考えている。
異なる背景で議論 有意義
ザンビア人留学生のルオ・ムレクワさん(2年生)は将来、自国で起業するという夢を持っている。「日本にいながら英語で経済とビジネスを学べる環境が魅力。異なる文化的背景を持つ学生同士が議論することによって新しいアイデアが出る過程が面白く、意見の対立を調整する術も身につく」と言う。「ザンビアから1人で留学してきたが、先生や学生がいつでも手を差し伸べてくれるのでさみしく感じることはない」と話していた。
学長に聞く
洞察力と創造力鍛える
―大学に求められる役割は。
兵庫県立大学は2004年に伝統ある神戸商科大学、姫路工業大学、兵庫県立看護大学の県立3大学が統合して発足、本年、創立20周年を迎えました。学知の空間としての大学の役割は、豊かで多彩な未来社会のビジョンを示し、新たな価値と希望を生み出すことです。持続可能な開発目標(SDGs)にうたわれている「Leave No One Behind」の考え方を基底に据え、対話をベースとするグローバルな視点から、創造的改革を進めています。
―時代背景を踏まえ、どのような教育が求められているでしょうか。
デジタル知性AI(人工知能)の急速な発展により、従来の学問のあり方は大きな転機を迫られています。私たちは飛躍的に進歩する情報科学技術(DX)の功利性に目を奪われるだけでなく、氾濫するフェイクを見抜く研ぎすまされた洞察力や、複眼的な思考に基づく創造力を鍛えねばなりません。検証が困難で客観性を持たない安易な言葉に流されることなく、価値の相対主義を超え、真実に近づく努力が求められています。
―兵庫県立大学を目指す人にメッセージを。
戦争、分断、貧困、沸騰する地球、生物多様性の危機など、変貌する現代社会を生き抜くためには、しなやかな人間力と深い教養、時代の要請に応える高度な専門的知識と技術をしっかりと身に付け、自立することが必要です。
本学での多様で学際的な学びを通して自己を成長させ、人々との間に壁を作るのではなく、橋を架ける、グローバルで進取の気概に富んだアントレプレナー(起業家)精神を身に付けてください。
在学生からのメッセージ
成長し続けられる人に
国際商経学部 国際商経学科4年 キラナ・エカ・アマリア・ロジーダさん
グローバルビジネスコース(GBC)の革新的なビジネスプログラムと優れた教授陣に興味を持ち、インドネシアから留学してきました。大学では実践的な学びで実社会のスキルを身につけられ、グローバルな取り組みへコミットメントすることで、世界で成功するための準備ができていると感じます。「S&I(サステナビリティ&インクルージョン)クラブ」に所属し、須磨海岸での定期的な清掃活動、ビーガンやハラール料理のイベント開催などを通じて環境の持続可能性とキャンパスにおける文化的包摂性の促進に努めています。将来は持続可能性、教育、テクノロジーなどの社会貢献できる分野で、自分の興味や価値観に沿ったキャリアを追求するつもりです。個人的にも仕事上でも新しい経験の機会を求め、成長し続けたいです。
大学概要
住所 | 神戸商科=神戸市西区学園西町8の2の1 姫路工学=姫路市書写2167 播磨理学=赤穂郡上郡町光都3の2の1 姫路環境人間=姫路市新在家本町1の1の12 明石看護=明石市北王子町13の71 |
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アクセス | 神戸商科=神戸市営地下鉄学園都市駅徒歩10分 姫路工学=各線姫路駅から神姫バス「県立大工学部」 播磨理学=JR相生駅から神姫バス「県立大理学部前」 姫路環境人間=各線姫路駅から神姫バス「県立大環境人間学部」 明石看護=各線明石駅から神姫バス「がんセンター前」 |
学部 (2025年度定員予定) |
国際商経学部(360人)、社会情報科学部(100人)、工学部(352人)、理学部(175人)、環境人間学部(205人)、看護学部(105人) |
教員 | 教授235人、准教授169人、講師25人、助教73人、助手6人 |
在学生 | 6635人(5月1日現在) |
ホームページ | https://www.u-hyogo.ac.jp/ |