武庫川女子大学
多様な学びで新段階へ
武庫川女子大学は約1万人が学ぶ全国最大規模の女子総合大学だ。理系や文系、芸術からスポーツまで学びの幅が広く、近年は女子大では珍しい建築学部や経営学部などが次々に誕生して女性活躍のフィールドを拡大。2025年度には女子大初の環境共生学部を新設(設置構想中)し、13学部21学科となる。また新しい時代にふさわしい人材育成方針「MUKOGAWA COMPASS」を策定し、新たな学びのステージを目指す。
環境共生学部2025年4月に開設予定
地球規模の課題に挑む
文部科学省の「大学・高専機能強化支援事業」の選定を受け、25年4月に開設を予定する環境共生学部環境共生学科は、温室効果ガスや微細なプラスチック片「マイクロプラスチック」など地球環境を取り巻く危急の課題に新たな発想で突破口を開く人材を育成する。
学びの特長は、徹底した「現場ファースト」。1年前期から始まる「フィールド・環境施設実習」では地域の山や海、環境関連施設に足を運び、地球が抱える課題を体感する。それぞれが現場で見いだした問いを「実践型社会連携プロジェクト」に集約。複数のチームに分かれ、企業や環境団体の協力を得ながら課題解決の道筋を探る。この実践型社会連携プロジェクトは3年前期まで続き、学部の学びの基盤となる。
プロジェクト型で突破口探る
プロジェクトの進行に伴い環境保全系、環境共生系、環境資源応用系の三つの領域から興味に応じて自由に科目を選べる自由度の高いカリキュラム設計も特長だ。多彩な研究領域を持つ教員陣が一人一人の意欲に応える。
恵まれた施設・設備も魅力だ。フィールドワークでは山間部に保有する丹嶺学苑(たんれいがくえん)研修センター(神戸市北区)と名塩野外活動センター(西宮市)を活用する。学内には実践型社会連携プロジェクト専用のプロジェクトルームとして、木のぬくもりを生かした開放的な建物を新築予定。仕切りのないオープンスペースは、複数のグループが互いに刺激し合いながらプロジェクトを進めるのに最適だ。
バイオテクノロジーやエネルギー、先端技術材料開発などの研究者はもちろん、環境省をはじめとする公務員やコンサルタントなど多様な進路に対応する学びがそろう。近年は企業でも環境への取り組みがますます進んでおり、環境に関する専門知識と研究スキルを身に付けた人材は幅広い分野でニーズが高まっている。
人材育成方針 MUKOGAWA COMPASS
「自ら考え、動く」をスローガンに
武庫川女子大学は新たな人材育成方針「MUKOGAWA COMPASS」を24年4月に公表した。母体となる学校法人武庫川学院が創設100周年を迎える39年に向けた取り組みで、「新しい武庫女教育」の名のもと21年度から進める教育改革の一環。人生という航海で針路に迷ったとき、行動や考えの方向性を示す羅針盤にしてほしいとの思いが込められている。
「MUKOGAWA COMPASS(以下コンパス)」のスローガンは「自ら考え、動く」。人工知能(AI)やデジタル化、多様性理解の広がりなど時代の変化が加速する中、率先して行動することが答えのない時代を生き抜く鍵と考えて策定した。学部学科の専門教育や共通教育などの正課教育はもちろん、クラブ活動やボランティア、地域貢献などの課外活動も含めた全ての学びの方向性となる。今後、コンパスに沿ったカリキュラム改編を進める。
「新しい武庫女教育」を推進
全学アンケートの結果も反映したコンパスは、個人を形成する要素を「知識」「姿勢」「行動」の三つに分類。それぞれに関係する八つの資質・能力を定め、同大学の教育で身に付く力を明示した。「特に『姿勢』の三つには女子大である本学の長所が表れている。同時に、全体的には従来のスクールカラーを進化させる内容になっている」と新しい武庫女教育推進委員長を務める北口勝也・学長企画室長。「コンパスに示したのは、これからの時代に必要な一生を描ききる力。目標を持ち、実現のために何をすべきか考え、それを実行に移すための指針としてほしい」と話している。
理系に強い伝統の学び
建築学部、社会情報学部も開設
武庫川女子大学は1962年開設の薬学部を筆頭に、理系分野へ果敢にフィールドを広げてきた。2006年に開設した女子大初の建築学科は20年には建築学部となり、景観建築学科との2学科に進化。23年にスタートした社会情報学部は情報メディア専攻と情報サイエンス専攻の2専攻制で、時代に不可欠な情報系スキルを身に付けたスペシャリストを育成している。生活環境学部や食物栄養科学部、看護学部、心理・社会福祉学部、新設の環境共生学部も文系理系の枠に収まらない柔軟な学びを展開している。
ワシントン州にアメリカ分校
全教員TESOL有資格
米ワシントン州スポケーン市にあるアメリカ分校は、武庫川女子大学のグローバル教育の拠点だ。甲子園球場の12倍もの広さがある自然あふれるキャンパスで、寮生活をしながら英語力と異文化理解を高められる。全教員が米国の大学院修士課程でTESOL(英語教授法)の資格を有し、教育内容は米国の大学レベルの教育機関として認定されている。
英語グローバル学科は4カ月間の分校留学を必修化。経営学科や教育学科なども4カ月間の留学プログラムを設定し、他の学部学科でも3~5週間の留学を希望者に実施している。
歴史文化学科
民俗学・考古学などもカバー 生活者の視点で学ぶ
24年4月に開設した歴史文化学科は関西や阪神間でフィールドワークを行い、「ひと」「もの」「ところ」に触れながら座学と現場を行き来する立体的な学びが特長だ。古代から現代までを対象に、歴史学をはじめ、民俗学、考古学、文化史、地理学など広範囲な学びをカバー。武士や貴族などの為政者の視点よりも、生活者、特に女性の視点を重視して日本史を見つめ、課題解決力と未来を創造する力を養う。
学長に聞く
女性の活躍推進に注力
―教育・研究の特長は。
全国最大規模の女子総合大学です。母体の武庫川学院は創設85周年の現在、大学を中心に付属保育園・幼稚園から大学院に至る総合学園をなしています。女性の活躍のフィールドが広がる一方で、長きにわたり女性が少なかった分野はまだ男性中心。女子教育の府として、こうした分野に対応する学問領域を用意することを使命と考え、建築学部や経営学部、社会情報学部などを相次いで開設しました。2025年4月には女子大初の環境共生学部を開設予定です。研究領域における女性活躍推進にも注力しています。本学は国から24年度「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(女性リーダー育成型)」に、私立大学で唯一選定され、若手研究者、女性リーダーの育成に全学を挙げて取り組んでいます。
―人材育成方針について。
100周年に向けた「MUKOJO Vision」のスローガンは「一生を描ききる女性力を。」。Visionを実行し、一生を描ききる鍵は「自ら考え、動く」こと。これを軸に人材育成方針「MUKOGAWA COMPASS」を策定し4月に公表しました。人の在り方を知識、行動、姿勢の三つに分類し、それぞれにひもづく計八つの能力と資質を定めました。
―受験生へメッセージを。
まずは本学の教育内容を見てください。産官学連携の取り組みの活発さ、アメリカに分校を持つ希少さ、学部学年を超えて学ぶ200科目もの共通教育などを知れば、きっと「特色ある大学」として選択肢に挙がるでしょう。「自分のポテンシャルを一番引き出してくれる大学はどこか」を見極め、自分だけの羅針盤を手に入れてください。
在学生からのメッセージ
経験生かしIT業界へ
生活環境学部 情報メディア学科(現・社会情報学科)3年 岡田璃音さん
メディアやマーケティングからデータサイエンスまで、文系理系にしばられず幅広く学べるところがいいなと思って情報メディア専攻を選びました。学生数が1万人規模の大きな大学なので、学内外からさまざまな刺激を受けられるのがいいところ。企業との連携プロジェクトに参加したり、持続可能な開発目標(SDGs)に取り組む県内企業のプロモーション動画づくりをゼミで経験したりして、志が高く社員を大事にしている会社がたくさんあることを知りました。社会に対して漠然と抱いていた恐れや不安も解消され、将来に対する気持ちも前向きになりました。IT業界に進めたらいいなと思っていますが、どんな進路を歩んだとしても武庫女で学んだ経験を生かして、女性が活躍できる社会づくりに力を尽くしたいです。
大学概要
住所 | 中央キャンパス=西宮市池開町6の46 浜甲子園キャンパス=西宮市甲子園九番町11の68 上甲子園キャンパス=西宮市戸崎町1の13 |
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アクセス | 中央=阪神鳴尾・武庫川女子大前駅徒歩約7分 浜甲子園=阪神甲子園駅徒歩約15分 上甲子園=JR甲子園口駅徒歩約10分 |
学部 (2025年度定員予定) |
文学部(430人)、教育学部(240人)、心理・社会福祉学部(220人)、健康・スポーツ科学部(280人)、生活環境学部(195人)、社会情報学部(180人)、食物栄養科学部(280人)、建築学部(85人)、音楽学部(50人)、薬学部(165人)、環境共生学部(120人)、看護学部(80人)、経営学部(200人) |
教員 | 教授216人、准教授101人、講師45人、助教33人、助手51人(2024年5月1日現在) |
在学生 | 9921人(大学院含む、5月1日現在) |
ホームページ | https://www.mukogawa-u.ac.jp/ |