関西学院大学
未来志向の課題解決へ
キリスト教主義教育に基づき「Mastery for Service(奉仕のための練達)」を、スクールモットー(校訓)に掲げる関西学院大学。次代を見据えた特色ある学びを展開し、来年開設30周年を迎える神戸三田キャンパスではアントレプレナーシップ(起業家精神)を持ち、世界で活躍する人材を育成するための施設や専攻の充実を図るほか、未来に価値を創造するイノベーション人材の創出を目指す「王子キャンパス(仮称)」構想も2029年4月の開設に向け動き出した。
2025年4月、神戸三田キャンパス開設30周年
起業支援施設 新たに整備
理学、工学、生命環境学、建築学の理系4学部と総合政策学部の計5学部が集まる「神戸三田キャンパス(KSC)」(三田市)が25年4月に開設30周年を迎える。節目に合わせ、起業支援施設と学生寮、商業施設を備えた複合施設「KSC Co―Creation Village(C―ビレッジ)」を整備する。
「C―ビレッジ」の目玉となるのが、起業を志す人たちを産学官民連携で支援するインキュベーション施設「Startup Base(S―ベース)」だ。KSCではこれまでも、起業に必要な経営スキルを養う「スタートアップアカデミーfor KSC」、理系学生が社会の課題解決に結びつけるための起業家によるリレー講座「ベンチャー起業家講座」など、アントレプレナー(起業家)の育成に注力してきた。
「S―ベース」は、自治体や企業、市民にも開かれた施設であることが最大の特徴。学生だけでなく、地域の企業人、住民、大学生、高校生、中学生らを対象にアントレプレナーシップを育む多彩なプログラムを展開。また、自治体と協力し、地域や企業の課題を解決する実践の場も用意し、各主体が交流・協働しながら、地方創生につながる社会変革の実践拠点となることを目指す。
地域にも開放、学生寮やフィットネスジム
「S―ベース」に併設するKSC初の学生寮「G―ドーム」はキャンパスから徒歩圏(正門から3分)に立地し、300人が入居可能。大学4年間だけでなく大学院に進学しても継続して入居でき、学習・研究に専念できる環境が整う。1階にはダンススタジオ、音楽スタジオ、ラーニングルームなど寮生同士が交流できる施設もそろう。居住する学生にとっては日常的にアントレプレナーシップをかき立てられる環境に身を置くことができる。また、商業施設として、24時間365日利用可能なフィットネスジム「FIT365」が出店。関学生だけでなく、住民をはじめ一般にも利用を開放する。
複雑化する未来に対応 大学院研究科に2専攻新設へ
建築学専攻博士課程前期課程 建築と都市空間を一体的に研究
KSCでは、複雑化する未来に向け、国境や文系・理系、学問分野、大学と社会など、さまざまな枠を超えた教育を推進する目的で、理系学部の再編・拡充を21年4月から進めている。25年4月に新設される理工学研究科建築学専攻博士課程前期課程(開設予定)もその一環だ。研究対象は、建築物の設計に関する領域と、都市計画・運営・防災に関する領域の2領域で、建築空間と都市空間とを連続的・一体的に捉えた教育研究を実現。安全・快適で美しい建築および都市空間の計画や設計、運営などに関する専門的知識と技術を備え、グローバルな視点で持続可能な建築と都市の未来を創造する人材の養成を目指す。
既存の専攻では「物理学」を「物理・宇宙物理学」、「人間システム工学」を「知能・機械工学」にするなど6専攻で名称を変更。全9専攻の定員を計約100人増やした。
国連システム政策専攻修士課程 国際機関の職員など専門家養成
また、総合政策研究科国連システム政策専攻修士課程(開設予定)は、関学の使命である「世界市民」育成の精神に基づき、国連、その他の国際機関の職員など世界の公共分野でリーダーとして活躍するプロフェッショナルの養成を目指す。全科目の授業を英語、少人数かつ演習主体で行い、海外大学院と同等のレベルで展開。カリキュラムは、国連の採用基準に基づいて体系的に編成する。
王子キャンパス(仮称)2029年開設へ
技術革新起こす人材養成
29年4月、新しいキャンパスが誕生する予定だ。神戸市灘区の王子公園に整備する「王子キャンパス(仮称)」で、地域や社会、世界にイノベーション(技術革新)を起こす人材を養う。学生約4千人のうち約2割を留学生が占める国際性豊かなキャンパスを目指す。
23年12月に、「王子公園再整備にかかる大学設置・運営事業」を進める神戸市との間で、「王子キャンパス(仮称)」を設置することで合意した。今後、神戸市と連携しながら、阪神間を代表する学術・文化拠点のシンボルの創出を目指し、構想を具体化する。
王子キャンパスでは文理融合、学際的な学びを重視し、英語のみで学位の取得が可能なプログラムを拡充。東南・南アジアなどからの留学生にとっても魅力的な学びの場とする。また、社会が抱える課題の解決に向け、実践を重ねながら知を習得する新たな学びの手法を採り入れ、未来に向けた新たな価値を生み出せる人材を育てる方針だ。
災害時は防災拠点にも
敷地内のレストランや図書館は、地域住民にも開放するほか、災害時には防災拠点としても活用することも考えており、地域と共存できる大学を目指す。関西学院大学は1889年の創立から40年ほどは現在の王子公園一帯にキャンパスを置いていた歴史があり、創学の地で新たな歴史を刻もうとしている。
8月にオープンキャンパス 模擬講義や学生企画も
今夏もオープンキャンパスを各キャンパスで開催する。西宮上ケ原キャンパスでは8月3日(土)、4日(日)に、神戸三田キャンパスは10日(土)にそれぞれ開く。
学部紹介、模擬講義、大学紹介、入試説明(一般選抜・総合型選抜)のほか、学生企画やキャンパスツアーなど関西学院大学についてより深く知ることのできるプログラムをそろえている。また、現役の関学生が自分の学部の魅力を語る企画も実施する。ゲストとして西宮上ケ原には両日、難関私立大専門塾「マナビズム」の八澤龍之介さん、神戸三田には教育系ユーチューバーのヨビノリたくみさんを招く。
学長に聞く
境界越える革新者育む
―大学の特色は。
14学部14研究科から成る総合大学で、キリスト教主義に基づく教育を目的として1889年に創立しました。スクールモットー(校訓)は隣人や社会、世界に仕えるため自らを鍛える「Mastery for Service(奉仕のための練達)」です。大学での学びが知識獲得型から課題解決型へとシフトしつつある今、より良い社会の実現を目指すため、次世代を見据え「境界を越える革新者」の育成を進めています。
―学びの面での取り組みは。
理系学部の再編・拡充を進めている神戸三田キャンパスでは2025年4月、理工学研究科に建築学専攻(博士課程前期課程)、総合政策研究科に国連システム政策専攻(修士課程)を新設予定です。さらに起業を志す学生、市民を産学官民連携で支援し、地域課題の解決にも寄与する「インキュベーション施設」も整備します。また、23年12月に神戸市と基本協定を締結し、29年4月の開学に向け「王子キャンパス(仮称)」構想の検討を進めています。文理融合、学際的な学びを重視し、学生定員4千人の約2割を留学生にするのが目標。留学生向けに英語で学位を取得できるような体制を目指します。
―受験生にメッセージを。
関西学院の創立者ウォルター・R・ランバス先生は神学と医学を修めた後、宣教師として来日。教師5人、生徒19人の学校を始めました。本学で学ぶことは、このような歴史の中で自らを修練していくことでもあります。皆さんの学びは次代へとつながります。関西学院大学はこれからもより良い社会の実現を目指す皆さんの期待に応える教育・研究を推進していきます。
在学生からのメッセージ
役立つロボットを創作
工学部 知能・機械工学課程3年 畠井悠希さん
幼い頃からブロック玩具やロボットアニメが好きで、「将棋AI」をきっかけに人工知能(AI)にも関心を抱くようになりました。そこで、二つの分野を学べるマルチプル・メジャー(複専攻)制度のある関学工学部へ。機械工学に加えAIについて学んでいます。さらに全学科目のAI活用人材育成プログラムを受講。情報技術や知識を活用し、社会課題を解決する応用力を鍛えています。ロボコンサークルではロボットの力で迷路を走るマイクロマウス競技に取り組み、メカ、制御、センサー、プログラミング、AIなど幅広い技術や知識を使い実践を積む中、2023年2月、社会人技術者も多数出場する全国大会で優秀学生賞を受賞。将来はAIもロボットも使いこなす技術者として、社会に役立つロボットを創り出すことが目標です。
大学概要
住所 | 西宮上ケ原キャンパス=西宮市上ケ原一番町1の155 西宮聖和キャンパス=西宮市岡田山7の54 神戸三田キャンパス=三田市学園上ケ原1番 |
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アクセス | 西宮上ケ原=阪急甲東園駅徒歩12分、阪急仁川駅徒歩12分 西宮聖和=阪急門戸厄神駅徒歩13分 神戸三田=JR新三田駅から直行バス15分 |
学部 (2025年度定員予定) |
神学部(30人)、文学部(770人)、社会学部(650人)、法学部(680人)、経済学部(680人)、商学部(650人)、人間福祉学部(300人)、国際学部(300人)、教育学部(350人)、総合政策学部(495人)、理学部(180人)、工学部(265人)、生命環境学部(228人)、建築学部(132人) |
教員 | 教授518人、准教授114人、講師102人、助教41人 |
在学生 | 24737人(5月1日現在) |
ホームページ | https://www.kwansei.ac.jp/ |