神戸学院大学
社会を生き抜く力育む
神戸市内最大規模の私立総合大学である神戸学院大学は2026年、創立60周年を迎える。記念すべき節目の年の完成を目指して現在、開学の地である有瀬キャンパス(神戸市西区伊川谷町有瀬)では、リニューアル工事が進んでいる。その中心が1号館建設プロジェクトだ。
創立60周年見据え「有瀬」リニューアル
学生らの新たな居場所に
有瀬キャンパスは、古くから「漆山」と呼ばれてきた小高い丘に位置し、眼下に瀬戸内海と明石海峡大橋を望む。ポートアイランドキャンパス、神戸三宮サテライトなど同市内にタイプの異なる複数のキャンパスを持ち、1万1千人余りの学生数を擁する文理融合型私立総合大学へと発展してきた同大の歴史は、この「有瀬」で幕を開けた。
1966年、淡路島出身の病理学者・森茂樹が「真理愛好・個性尊重」を建学の精神に掲げて創設した。欧米留学などを経て病理学の権威として名声を得た森は、72歳で国立大学の学長を退任した後、自らの大学設置構想実現のために心血を注いだ。大学創設に向けては資金調達や用地確保など幾多の課題があったが、不屈の精神でそれらを乗り越え、神戸学院大学が産声を上げた。
森は当初から総合大学を構想していたが、開学当初は栄養学部のみの単科大学。男女共学の全国初の栄養学部であった。周囲を畑に囲まれ、同学部が入る1号館だけがぽつんと立っていた。翌67年に法学部と経済学部が設置され、学生数も増加。追って薬学部、人文学部が開設され、新校舎の建築が相次いだ。現在は10学部8大学院研究科を誇る総合大学に発展を遂げている。
2007年、大きな転機を迎えた。ポートアイランドのコンテナヤード跡に新たなキャンパスを開設した。六甲山と神戸港を借景とする、最も神戸らしい立地。爽やかな潮風が心地良いウオーターフロントのキャンパスは最新の研究設備を備えており、学生たち自慢の学びの環境だ。
現在は本部をポートアイランドに移し、開学の地である有瀬は「マザーキャンパス」と位置付けられる。そんな有瀬で、創立60周年記念事業として、次の60年を見据えた有瀬キャンパスの新しい起点となるプロジェクトが進行している。キーワードは「有瀬が、変わる。」だ。
同大の歴史上、第一歩を刻んだ有瀬1号館は、いわば大学の「顔」であり、シンボリックな存在。リニューアルは、実に大きな意味合いを持つ。ポートアイランドキャンパス開設以降、学生・教員らは必要に応じて2拠点を行き来してきたが、有瀬側からはポートアイランドの環境に焦がれる声が多数上がっていた。今回のプロジェクトは、そうした声に応えるものでもある。学生、教員、OB、OG、地域住民など、神戸学院大学に関わる全ての人にとっての居場所づくりをすることで、キャンパスの新たな顔をつくる。
新しい1号館は、講義室、自習室、教員研究室、カフェ、コンビニエンスストアなどを備え、大小さまざまな特色があるラウンジが、開放的な吹き抜けを介してつながる3層構造の建物だ。
1、2号館跡地を一体化してリニューアルし、広場の整備も一緒に行うことで、広場と建築が連続してつながるカフェテラスなど、建物内外部を一体的に利用できる空間づくりを目指す。ラウンジは学生や教員たちの日常の語らいの場所となるだけでなく、発表会やオープンセミナー、イベントなども行う予定。新しい空間での偶発的な出会いを誘発することで、ライブ感のある学びや発見があるキャンパスライフの実現を目指していく。
大学都市神戸産官学プラットフォーム 市内11の大学・高専とともに参画
人材育成、研究通じ地域貢献
神戸市内の大学と企業、行政が人材の獲得や育成で連携する一般社団法人「大学都市神戸産官学プラットフォーム」が2023年11月に設立され、神戸学院大学も参画している。
同市では学生が卒業後に市外で就職することにより、若者の流出が増える傾向にあり、その定着が喫緊の課題である。同プラットフォームには市内にある23大学・短大のうち11大学と1高等専門学校が参画。「神戸の将来を支える人材の獲得」などの視点を基に、若者に選ばれる都市となるためのプロジェクトを展開している。
企業、行政と連携し多彩に展開
「大学カリキュラムとインターンシップ・就職活動との接続」では、神戸学院大学が実施している単位認定型就業体験プログラムに、同プラットフォームが推薦する企業を組み込み、学生が就職したいと思える会社を探す一助となるよう運営している。さらに受け入れ企業から賃金の支払いを受けながら働き、課題に取り組む「ペイド型(報酬型)就業体験」を同プラットフォームが計画中で、実施の際は同大学内でも周知する。また、「大学・学生と企業スポーツの連携プロジェクト」は、神戸をホームタウンとし地域貢献活動を積極的に展開する企業スポーツチームが舞台。学生が新鮮な感性や発想力を生かして、集客やファンの拡大などの戦略プランを立案して実行していく。
神戸学院大学がチームリーダーを務めるプロジェクトが「高齢社会を支える医療・介護事業の経営持続性と発展性を担う人材の育成」。産官学の幅広い講師陣をそろえ、医療・介護保険事業者を対象にプログラムを実施する。同大学は保健・医療福祉分野で活躍する人材を多数輩出してきた実績を持つ。その視点から、中村恵学長は「他大学からも教員を出していただくことで、よりよいものにできる。『産』のニーズをとらえながら大学の知見を結集し、社会人が学び直すリカレント的な教育プログラムを作っていきたい」と意気込みを語る。
同プラットフォームでは神戸・三宮のセンタープラザに拠点を構え、参加大学が事務局に職員を派遣。学生は自習やサークル活動、大学研究者や企業関係者らとの交流の場としても活用できる。
キャリア教育サポーター、卒業生の体験談…
進路意識し学べる環境を
就職活動は余裕を持った準備と対策が不可欠という考えの下、低年次から卒業後の進路を意識して主体的に学べる環境を用意している。その一環で2024年度、学生団体「キャリア教育サポーター」を設立した。学生が主体となり、後輩の講義支援やキャリア意識向上を促す活動を通じて学びを深め合う。
23年度の1年次後期で共通教育・キャリア教育分野科目「プロジェクト学習基礎」を履修した学生の中から、この取り組みに賛同した22人が1期生として加入。吉澤飛鳥特任講師、上田浩樹特任講師によるサポートの下、活動をスタートさせている。サポーターらは当事者意識を持つ(相手のことや組織全体を自分ごととして捉える)ことなどを大切にしながら、共通教育・キャリア教育分野科目で後輩学生の支援を行っていく。
また、働くことの意義・意味を地元企業で働く方や卒業生らからじかに学ぶ機会もある。前期の共通教育科目「産業界等連携講義」、後期の専門科目「OB・OGキャリアデザイン塾」がそれに当たる。「OB・OG―」は、卒業生がリレー形式で登壇する。先輩たちのリアルな経験談を聞けるとあって、学生たちの関心が高い科目となっている。
就職活動が本格化する時期には、業界セミナー、就職ガイダンス、面接対策、グループディスカッション対策などさまざまな支援プログラムを用意して手厚くサポート。進路相談員による個別相談も実施し、一人一人に寄り添い、柔軟かつ丁寧に対応している。就職活動のトレンドに機敏に対応する取り組みも。オンライン選考の増加に伴って選考用個室ブースを学内に設置したり、全学生がスマホなどを使って無料で利用できるオンライン筆記試験対策ツール「神院SPI」を導入したりしている。
国家試験や公務員試験の突破を目指す学生も数多く、そのための課外講座や資格取得へのサポートも充実。経験豊富な専任スタッフが常駐しており、学生の相談に乗りながら、資格取得プランを提案し、将来のキャリア実現を後押しする。
学長に聞く
学部の枠超え集い学ぶ
―教育の特色は。
自主的かつ個性豊かな良識ある社会人の育成を教育目標とし、大学が人間形成の場であることを重視しています。学生たちは専門性を極め、大学は長期ビジョンにある「地域と繫(つな)がる」の実践に力を注いでいます。保健・医療福祉分野で密度高く取り組む専門職連携教育は学部の枠を超えて学生たちが集い、学ぶカリキュラムです。10学部を擁する総合大学ならではの強みを生かした内容で、専門家からも高く評価されています。
―まもなく創立60周年。
約10万人の卒業生たちが、幅広い分野で活躍しています。「マザーキャンパス」と位置づける有瀬キャンパスは、創立60周年に当たる2026年春完成を目指しリニューアル工事を実施しており、ポートアイランドキャンパスと合わせ、さらなる教育環境の充実を図ります。新築する1号館は講義室や自習室に加え、学生の要望も取り入れたカフェやコンビニも入ります。
―「大学都市神戸産官学連携プラットフォーム」の意図は。
神戸と大阪は近く、差別化が難しい。若年層の流出を防ぐために、神戸の魅力を若い人たちに伝えたいですね。神戸の良い企業を発掘して学生に周知し、神戸の「職」の魅力を発信していきたいです。
―求める学生像は。
多様なことに関心を持つ人です。一つの専門だけでなく、複数分野の知識を身に付け、社会に出ていくことが、今後ますます求められるようになると思います。本学教員の研究分野は多岐にわたるため、幅広い学びを提供できます。専門性に加えて専門外のことも知っていれば、課題解決につながるルートをより見つけやすくなると思います。
在学生からのメッセージ
将来は法曹界で活躍を
法学部 法律学科4年 吉田崇規さん
社会的弱者を助けたいという思いがあり、法学部を目指しました。本学を志望したのは、オープンキャンパスで好印象を抱いたからです。活気があり、先輩が積極的に話しかけてくれました。また、一人一人に対する指導が手厚いと聞いたことも決め手でした。
同じ法的問題でもさまざまなアプローチの仕方があり、多様な考え方に触れられる点が興味深いです。分からないことがあるときは、先生方の研究室が開放される「オフィスアワー」などを活用し、指導を受けています。
所属する法律研究会Libra(ライブラ)で会長を務めています。他大学との法律討論会では「質問の部」「立論の部」ともに関西大会で優勝するまでに成長できました。ロースクールに進学予定で、大学で身に付けた法的思考を糧に法曹界で活躍したいです。
大学概要
住所 | ポートアイランドキャンパス=神戸市中央区港島1の1の3 有瀬キャンパス=神戸市西区伊川谷町有瀬518 |
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アクセス | ポートアイランド=ポートライナーみなとじま駅徒歩約6分 有瀬=JR明石駅から神姫バス「神戸学院大学方面」行き |
学部 (2025年度定員予定) |
法学部(450人)、経済学部(340人)、経営学部(340人)、人文学部(300人)、心理学部(150人)、現代社会学部(220人)、グローバル・コミュニケーション学部(180人)、総合リハビリテーション学部(170人)、栄養学部(160人)、薬学部(250人) |
教員 | 教授160人、准教授75人、講師62人、助教28人、助手1人 |
在学生 | 11249人(5月1日現在) |
ホームページ | https://www.kobegakuin.ac.jp |