知と人創る新たな挑戦

神戸大学 2025

神戸大学

 

知と人創る新たな挑戦

神戸大学は「人文・人間科学系」「社会科学系」「自然科学系」「生命・医学系」の4領域で10学部15大学院を擁する国立総合大学だ。「知と人を創る異分野共創研究教育グローバル拠点」として、社会の将来あるべき姿を描き、自ら新たな価値を創造できる卓越した人材の創出を目指している。知と人を創る取り組みを、2025年4月に新設が予定されるシステム情報学部(仮称)、医学部医療創成工学科(仮称)を通して紹介する。

「システム情報学部(仮称)」新設へ

高度情報専門人材を養成

システム情報学部(仮称)では、AIやITに精通したハイレベルなデジタル人材を養成する

システム情報学部は、人工知能(AI)などの専門知を深めながら、それを社会課題の解決に生かす総合知へとつなげていくカリキュラムが特色だ。最短、学部3年、大学院3年の計6年で博士の学位を取得できるようにしたほか、入学定員150人のうち1割を女子枠として設け、多様性の中から生まれる視点も大切にしている。
AIやモノのインターネット(IoT)の進展により、社会をより快適、安全にするために、また産業をより発展させるために情報技術は欠かせないインフラとして定着している。一方でこうしたニーズに専門人材の養成が追い付いていないのが現状で、国はデジタル人材の育成を急いでいる。システム情報学部は、国が全国の大学にハイレベルな高度情報専門人材を養成する拠点を選んで整備する事業に採択され新設される予定となった。

大学院システム情報学研究科長 臼井英之教授

「専門的な知識や技術を究めたうえで、それらをつなぎ合わせて社会課題の解決や新たな価値の創造につなげる人材の育成を目指すためにも、初めに専門知をしっかりと習得してもらう」とシステム情報学研究科長の臼井英之教授。そのため一般的には1、2年次に多く組まれる教養科目の比重を3年次に移し、1年次から専門科目をより多く履修できるようにする。同教授は「システム情報学を学びたいという気持ちが熱いうちに、しっかり吸収してほしい」とその意図を説明する。

最短6年で博士学位 3年次で研究開発参加も

また、標準カリキュラムでは博士の学位の取得までに学部4年、大学院博士課程5年(前期2年、後期3年)の計9年を要するところを、それぞれ3年の最短6年で取得できるようにする。「特に企業からは博士学位取得者がより求められるようになっています。また、取得後は若手研究者としてイノベーション(技術革新)をリードする存在になることも期待されている」と同教授。学部3年間のほとんどの単位は頑張れば2年で修得することもでき、1年を海外留学に充てることもできる。
大学院生向けに設けられた、社会ニーズに応じて設定される各研究プロジェクトに3年次で参加できることも特徴だ。学部を超えた教員、企業の担当者などを交え、社会から求められる課題にシステム情報からアプローチし解決を目指す。例えば、車の空気抵抗を計算する技術を、せきをした時の飛沫(ひまつ)がどう拡散するかの分析に生かし、感染症の予防につなげる研究などがその一例だ。同教授は「AIやITに精通した人材は今やあらゆる業種で求められています。専門知を総合知につなげる力を生かして活躍の場を自ら切り開いてほしい」と話している。

医学部に医療創成工学科(仮称)

未来志向の医療機器開発

大学院医学研究科 大谷亨教授

医療創成工学科は医学部ならではの特性を生かし、医療現場のニーズを踏まえた医療機器の開発を行うだけでなく、メーカーとも連携し医療機器を市場に送り出すまでの実践的なノウハウを一貫して学ぶ。「医療機器で人の命を救いたいと考える人にぜひ学んでほしい」と呼びかけている。
医療現場における検査・診断や治療のための医療機器分野は成長産業として注目されているが、大半の医療機器は欧米のメーカーが市場を独占しているのが現状だ。「情報技術とも組み合わせ進化する医療機器は今後ますます現場で求められるようになる。輸入に頼りすぎるとそれが入手できないリスクがあるだけでなく医療費の高騰にもつながる」と、医学研究科医療創成工学専攻の大谷亨教授。23年、大学院に「医学研究科医療創成工学専攻」を設けたところだが、「学部の段階から未来志向の医療機器を開発できる人材を育成することが重要だ」と開設に向けた思いを語る。
医学部付属病院ではこれまで手術支援ロボット「hinotori サージカルロボットシステム」の開発を医療面で支えたほか、IoTを利用した手術システムや「放射線治療用吸収性組織スペーサ」など、教員による研究開発も進められており、医療機器の開発を国際的にも先導している。

市場・収益性見据えた実践的学び

神戸大が設立する新たな医療機器開発拠点「メドテックイノベーションセンター」(イメージ図)

カリキュラムでは、医学と工学の基礎知識を併せ持ちながら、医療現場で自らニーズを見つけ、その解決に向けものづくりができる「創造性教育」を重視。例えば「問題解決演習」では、定められたテーマで医療機器のアイデアを出し、試作と改善を繰り返しながら現場の医師が使いやすい機能、デザインに磨き上げていく。同教授は「創造性教育の中において、アイデアの正しさを検証するほか、市場調査を行う。開発した機器が保険適用になるのか、なるとしたら点数がどの程度なのか、市場性や収益性までも見据えた実践的な学びを重視し、開発を統括できる人材の育成を目指す」と話す。
最大の特色は医学部付属病院を持ち、医療の現場に接することができることだ。「現場のニーズを探り、医療現場に適した機器に仕上げていくためには、医師との信頼関係を結ぶことが大切」という考えで、医療現場での実習をカリキュラムに組み込んでいる。また、神戸ポートアイランドにある神戸大学国際がん医療・研究センター(ICCRC)に直結する新たな医療機器開発拠点「メドテックイノベーションセンター」を開設。そこに入居する医療機器メーカーと連携し機器開発の実習も行う。同教授は「世界的に見ても医学部内で医療機器開発を目指す学科はない。チャレンジ精神が旺盛で、自分にブレーキをかけない人にぜひ来てほしい」と呼びかけている。

学長に聞く

創造する力を養う場に

―目指す大学像は。

藤澤正人学長

10学部15研究科を擁する総合大学で、「学理と実際の調和」という理念の下、「知と人を創る異分野共創研究教育グローバル拠点」をビジョンに掲げています。世界に貢献できる地域中核研究大学としての使命を果たすべく、組織体制の強化、外部機関との連携を進めています。

―大学の現況は。

本学が世界を先導する「バイオものづくり」「先端膜工学」「医工学」「健康長寿」「社会システムイノベーション」を中心としたデジタルバイオ・ライフサイエンスリサーチパーク推進機構を2023年10月に設置し、社会的課題の解決に取り組んでいます。また、25年4月には「システム情報学部(仮称)」「医学部医療創成工学科(同)」を開設予定です。前者はあらゆる領域で欠かせないAI(人工知能)やITの専門知を深めながら、それを社会課題の解決に生かす総合知へとつなげる高度情報専門人材を育成します。後者は医学と工学の基礎知識を併せ持ち、現場で求められる医療機器を開発し、社会に実装するまでを可能にする創造的人材を育成します。

―受験生へメッセージを。

地球規模の課題を解決するため、何を学べばよいかという視点を持ち大学選びをしてください。本学には専門分野の学びを深めるとともに、異分野に触れることで幅広い視野を身に付け、卓越した研究、新たな社会価値を創造する力が養える学びの場を用意しています。教職員に対しては「一人一人の考えを聞こう、潜在的な力を知ろう」と伝えています。愛情と優しさを持って大きな夢に挑戦する学生に寄り添い応援します。神戸大学で輝く未来を一緒に創りましょう。

在学生からのメッセージ

世界で活躍、航海士に

海洋政策科学部 海洋政策科学科4年 佐伯美喜子さん

商船という分野を学べる大学は希少で、西日本の四年制大学では神戸大学だけだったことから選びました。専門性の高さと同時に、文理融合のカリキュラムで幅広い視野を持って学ぶことができるほか、他学部と合同での国際交流プログラムなど、総合大学ならではの機会もふんだんに用意されています。課外活動団体を三つ掛け持ちし、特に学生広報チームでは取材からラジオの運営まで、大学広報課と一緒になって活動するという貴重な経験もできています。卒業後は海技士の国家資格を取得し、世界で活躍する航海士になることが目標です。世界中で必要なものを行き来させることによって一人でも多くの人の生活を豊かにし、いつか私の働く姿や動かしている船を見た子どもたちがその世界に憧れるようになってくれるとうれしいです。

大学概要

住所 六甲台=神戸市灘区六甲台町1の1
楠=神戸市中央区楠町7の5の1
名谷=神戸市須磨区友が丘7の10の2
深江=神戸市東灘区深江南町5の1の1
アクセス 六甲台=阪急電鉄六甲駅、JR六甲道駅、阪神電鉄御影駅から市バス36系統「鶴甲団地」行き
学部
(2025年度定員予定)
文学部(100人)、国際人間科学部(370人)、法学部(180人)、経済学部(270人)、経営学部(260人)、理学部(153人)、医学部(287人=医学科112人、医療創成工学科25人、保健学科150人)、工学部(443人)、システム情報学部(150人)、農学部(160人)、海洋政策科学部(200人)
教員 教授566人、准教授405人、講師131人、助教418人、助手40人
在学生 11460人(学部生のみ、5月1日現在)
ホームページ https://www.kobe-u.ac.jp

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