兵庫医科大学
現場で強い医療人育成
兵庫医科大学は今年4月、開学50周年を迎え、兄弟校・兵庫医療大学と統合した。医学部に加え薬学部、看護学部、リハビリテーション学部を新設し、関西で最大規模の医系総合大学として新たなスタートを切った。現場でのIPW(多職種連携協働)がスタンダードとなる中、従来のIPE(多職種連携教育)を深化させて、西日本で初めての複数学部による臨床実習などを実践し、スローガンの「心に響く医」を提供できる医療人の育成を目指す。
関西最大の医系総合大学に

IPW(多職種連携協働)の実践的な場である、4学部の学生が1週間かけてグループ討議や模擬カンファレンスなどを行う「チーム医療(論)演習」
新生・兵庫医科大学の最大の特長は、全4学部が一体となって実践する、学部・職種の垣根を越えたIPE=InterProfessional Education(多職種連携教育)だ。IPEは臨床教育統括センターが全学部のIPW=InterProfessional Work(多職種連携協働)を統括し、各学年で段階的に行っていく。他学部の学生と合同で学ぶ機会を数多く設けている。
もともとIPEは、統合する前の兵庫医科大学と兵庫医療大学でも取り組んできた。4学部の学生が1週間かけてグループでの討議や模擬カンファレンスなどの「チーム医療(論)演習」を実践してきた。
多職種連携を強化、臨床実習も

2022年度からスタートさせる「多職種連携総合臨床実習(仮称)」(イメージ写真)
これらを発展させ、より実践的な学びの場として用意されるのが「多職種連携総合臨床実習(仮称)」だ。これまで学部ごとだった臨床実習を、複数学部が合同で行う、全国でも数少ない取り組みになる。実習の場としては、地域包括ケアをリアルに学べる兵庫医科大学ささやま医療センターが予定されている。2022年度は選択制としてスタートさせ、将来的には全学部必修カリキュラムに拡大したい意向だ。
今春、兵庫医療大学と統合
兵庫医科大学ささやま医療センターのほか、兵庫医科大学病院(西宮市)といった付属の病院で多様な実習ができるのも、本学ならではの特長だろう。
主な実習先の一つである兵庫医科大学病院は、兵庫県内最大の病床数を誇り、病棟など各現場でIPWが実践されている。救急など急性期の医療を手がける「急性医療総合センター」では、母体・新生児の疾患や、家族のケア、育児支援を含めたサポートを提供する「周産期センター」など、さまざまな医療現場で実習を積むことができる。
さらに同病院には、診療科の垣根を越えて活動する医療チームが数多く存在する。コロナ禍で重要な「感染対策チーム(ICT)」は代表例の一つで、患者に接し、実践の中で質の高い医療を提供する素養や問題解決力を身に付けていく。
高度化する医療現場では、ますますIPWが重要になっている。本学では、臨床現場に近い環境でIPEを学ぶことができ、現場の医療専門職者の講義や指導を通して、より実践的な学びが可能となっている。「現場で活躍できる強い医療人」を育てる、恵まれた環境が整っている。
学生にとっては、兵庫医科大学病院などの実習先で活躍する卒業生の姿を目にし、将来の自分を意識しながら学べるのも大きなメリットだろう。それが高い国家試験合格率につながっている。
21年度の国家試験合格率は看護師、保健師、助産師、理学療法士がいずれも100%、作業療法士97・9%、医師96・3%、薬剤師77・2%。国家試験対策により、高い合格率を維持している。
就職においては、兵庫医科大学病院と強いパイプを持つほか、兵庫・大阪の約130の病院が会員登録する「学校法人兵庫医科大学連携病院の会」の存在も大きな強みとなっている。会員病院が参加し、神戸キャンパスで薬学部・看護学部・リハビリテーション学部生を対象とした合同病院説明会が開催されるなど、スケールメリットを生かし、確かな就職・進路へとつなげている。
学部学科紹介
兵庫医科大学が医系総合大学として、西宮・神戸の両キャンパスに擁する医療系4学部5学科を紹介する。
医学部
医学科・6年制=IPEにより多職種連携教育を、チーム基盤型学修(TBL)により問題解決能力を獲得し、国内外で活躍する良医を育成している。近年、医師国家試験合格率トップレベル校に名を連ねる。
薬学部
医療薬学科・6年制=薬学教育センターで各学生の学修状況を把握し、個別面談や対策講座を実施する。分野横断的な学びで、薬剤師国家試験合格へとつながるようサポートする。
看護学部
看護学科・4年制=高度で先進な医療から地域に根差した医療まで臨床実習が行える環境が整っている。看護師に加え、保健師、助産師の国家試験受験資格を在学中に取得可能(保健師、助産師は選択制)。いずれも高い合格率を誇る。
リハビリテーション学部
理学療法学科・作業療法学科、いずれも4年制=兵庫医科大学病院や兵庫医科大学ささやま医療センターなどで患者と接しながら実践力を磨く。それぞれ、スポーツ分野や退院後の職業・生活支援で貢献できる専門性も培う。
次の50年、100年目指し
26年、西宮に新病院棟開設へ

西宮キャンパスに2026年開設予定の新病院棟(イメージ図)
学校法人兵庫医科大学は1972年4月、兵庫医科大学を西宮に開学し、同年、同じ敷地内に兵庫医科大学病院を開院。97年10月には現在の丹波篠山市に兵庫医科大学篠山病院(現・兵庫医科大学ささやま医療センター)を開院した。2007年4月には、兵庫医療大学を神戸・ポートアイランドに開学。22年4月、開学50周年事業として、兵庫医科大学は兵庫医療大学と統合し、医・薬・看護・リハビリテーションの4学部を擁する医系総合大学に生まれ変わった。26年には西宮キャンパスに新病院棟を開設する予定。新しいスローガン「EMPOWER THE PEOPLE」の下、次の50年に向けて歩みを進める。
学長に聞く
心に響く医、地域住民に
―この春、新生・兵庫医科大学が誕生した。

野口光一学長
4学部を擁し総合医療教育を行う、関西で最大規模の医系総合大学に生まれ変わりました。2大学の統合による最大の効果は、学部を超えたIPW(多職種連携協働)がよりスムーズになることです。今年8月には、複数学部による臨床実習を始める予定で、真の多職種連携―単なる役割の分担ではなく、複数の職種が高い専門性を生かしながら好影響を及ぼし合い、患者さんのQOL(生活の質)を向上させる医療―を担える人材を育てたいと考えています。
―将来ビジョンや今後の予定は。
西宮・神戸の両キャンパスで共同研究を重ねることで、薬学部などを擁する神戸キャンパスの評価を高め、「選ばれる大学」に育てたいと考えています。また、開学50周年事業として、2026年に西宮キャンパスに新病院棟を開設する予定です。さらに今年10月には、大阪梅田ツインタワーズ・サウス内に医療・健診機能を併せ持ち、兵庫医科大学病院で施術した患者さんをフォローするなど、本院と連携するクリニックの開院も予定しています。
―どんな学生を求めているのか。
医療系国家試験に合格するのに一夜漬けは通用しません。コツコツと勉強する意欲のある若者に学んでほしいですね。刷新したスローガン「EMPOWER THE PEOPLE 心に響く医を、私たちがいるかぎり」の下、京阪神間の地域住民の健康を守ることを生きがいとする医療人になってもらいたい。本学は、長期的な視野に立ち、次の50年、次の100年に向けて頑張っていきます。
在学生からのメッセージ
信頼される薬剤師に
薬学部医療薬学科6年 上田紗夢さん
高校2年生のとき、薬剤師になろうと決めました。兵庫医科大学は、IPW(多職種連携協働)を担う医療人育成を目指し、IPE(多職種連携教育)を進めているところが魅力的だと思います。6年間にわたる履修では、先生方の熱心な指導と精神面でのサポートを心強く感じています。私は学内での自主学習に力を注いでいます。神戸キャンパスにはさまざまな勉強スペースがありますが、神戸港を一望できる図書館が私のお気に入りの場所。勉強するのが少しつらいときも、大好きな港の景色は「もう一歩前へ」という気持ちにさせてくれます。患者さんの悩みに寄り添い、信頼される医療人を目指し、豊富な知識を修得するのはもちろん、多職種の役割を理解した上で、自らの役割をしっかりと果たせる薬剤師になりたいです。
掲示板
オープンキャンパス開催
開催日 | 開催学部 |
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8月6日(土) | 薬・看護・リハ |
8月7日(日) | 薬・看護・リハ |
8月9日(火) | 医 |
8月10日(水) | 医 |
8月20日(土) | 薬・看護・リハ |
8月21日(日) | 薬・看護・リハ |
※日程によって開催する学部が異なります。
※医学部は西宮キャンパス、薬・看護・リハビリテーション学部は神戸キャンパスで開催します。
※新型コロナウイルス感染拡大状況により、変更となる場合があります。
※詳細はホームページをご確認ください。
大学概要
住所 | 西宮キャンパス(医学部)=西宮市武庫川町1の1 神戸キャンパス(薬学部、看護学部、リハビリテーション学部)=神戸市中央区港島1の3の6 |
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アクセス | 西宮=阪神電鉄「武庫川」駅西改札口から徒歩約5分 神戸=ポートライナー「みなとじま(キャンパス前)」駅から徒歩約10分、神姫バス「ポーアイキャンパス東」バス停下車すぐ |
学部 (本年度定員) |
医学部(108人)薬学部医療薬学科(150人)、看護学部看護学科(100人)、リハビリテーション学部(理学療法学科40人、作業療法学科40人) |
教員 | 教授118人、准教授62人、講師121人、助教258人 |
在学生 | 2338人(5月1日現在) |
ホームページ | https://www.hyo-med.ac.jp/ |